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今週の一枚(2018/03/05)



Essay 867:最近のニュース・チェック

〜安邦保険集団の摘発〜世界バブルの終焉か
〜三浦市農協のIoTの展開と理詰めの追求への懸念
〜ネット工作員大量逮捕と中国覇権 など

 写真は、Huntleys Pointって地味なサバーブだけど、Drummoyne過ぎてGladesvilleの手前くらい。Gladesville Bridge(大きな太鼓橋でてっぺんからのViewは最高)のふともです。意外と近い。この真中の椅子に座るのが気持いいんですよねー。
 最初は、一本づつBOLGで紹介しようと思ってました。しかし他のネタも沢山あるし書く機会がない。一本が長いから、こんなの連日3−4本づつアップされても迷惑でしょうし。といって死蔵してても賞味期限が切れるだけ。ここでエッセイでまとめて書きます。

中国、安邦保険集団を管理下に−積極的買収続けた呉会長訴追

2018年2月23日 Broomberg

 キャプチャーしたのは英語版の記事。こっちの方がビデオがあって詳しい。

 これは世界バブルの終焉の予兆か?という観点で語られたりもする事件です。

 僕は知らなかったのですが、この安邦(Anbang)保険というのは中国の中で成長株の保険会社で、創業者の呉小暉(Wu Xiaohui)会長が辣腕で、ニューヨークのシンボル的ホテルであるウォルドーフ・アストリア買収で合意するなど、世界的に注目される存在となっていたそうです。

 それが中国当局によって潰された。ま、潰したのではなく、今後も通常業務は続けるようですが、1年間経営権を奪い、立志伝中の人、呉小暉会長は既に拘束されているという。

 この会長、ケ小平氏の孫娘と結婚してケ一族と関係を築き、政界に太いパイプを持ち、それをまた利用して貪欲に事業を拡大し、世界中の物件を買い漁っていたらしいのですが、ここで当局にやられてしまった。容疑は経営上の詐欺とかそんなのですが、それはどうでもいい。なぜならこのレベルになったら、叩けばホコリが出るだろうし、名目なんかなんとでもなります。要は叩かせるか、叩かせないかのギリギリの権力闘争があったのでしょうね。

 思うことは2点あって、一つは中国の権力闘争の熾烈さです。なんせ、あれだけのデカい国ですからねー、人口で言っても日本12個分、アメリカ4個分はありますから。そこで「実力」をつけ覇王になろうというのだから、そりゃ熾烈でしょう。彼らプレーヤーにとってみたら、この世界のライバルはアメリカでもロシアでもなく、自国内の連中だと思います。

 国際政治で中国がどうのというよりも、僕の興味は中国内部でどうなるか?です。三国志の世界のように、誰が曹操になって、誰が玄徳になるかみたいな。北京 VS 上海の魏と呉みたいな国内国家のような存在があるらしいけど、今の習近平がほぼ権力を掌握し、今まで以上の「皇帝」的な存在を目指しているのでは?という説もあります。そういう文脈でみると、今回もまた勢いのあるライバルを制したということでしょうか。「反腐敗キャンペーン」という名目ですが、まあ、実際には権力闘争でしょう。

 第二点は、これで少しは不動産が安くなって、ひいては僕らのレント(家賃)も下がらないかなーという権力ゼロ庶民のささやかなお祈りです(笑)。この会社、ハンパなく買い漁っていたみたいですからね。総資産32兆円以上とか言われているし。まるでバブルの頃の日本で、アメリカの有名建物や会社を買っては、アメリカ人の感情を逆撫でしていたわけで、それを今は中国がやっている。その切込隊長みたいな安邦が政府管理になって、その波及効果もあって多少は収まるかという期待もあります。

 ま、経営権を簒奪した政府当局が、今まで以上に買い漁ってたら同じことなんだけど、それはしないような気もします。というのは、今は世界的に膨れ上がったバブルをどうおさめるかという出口戦略でどこの国も必死だと思うし、中国もそうでしょう。このまま空高く飛んでるさなかに空中分解とかされたら、目も当てられない。中国だってそうでしょう。何よりそういう失政をしてしまうと、習近平といえども無事ではすまないでしょう。なにしろ周囲にはピラニアみたいなのがゴロゴロしててスキあらばって狙ってるでしょうから。そんな情勢で、イケイケで買い漁ってはバブルの火に油を注いでいるような安邦は、早いところ潰したかったってのもあるでしょう。アメリカのFRBも今年は利上げを3回やるんだとかいって正常化への意欲満々。日本は黒ちゃん続投で、相変わらず物価2%とか言って逆行してるんですけど。まあ止めたらメッキが剥げるからやめるわけにもいかないのだろうけど。

 この傾向は、中国万達・安邦など、サッカークラブ株や高級ホテル続々と売却(大紀元日本 2018年02月16日)という関連記事にも見受けられて、これまで猛烈な勢いで買収してきたものを逆回転で売却しているそうです。

 ちなみにこの「大紀元日本」(The Epoch Times)というメディアですが、やたら中国政府に批判的だし、名称からして日本会議のフロント企業かと思ったらそうじゃないみたい。ニューヨーク本社のメディアであり、多分、やってるのは中国人で、海外にいる中国人が世界中の中国人に対してフリーなスタンスで報道しようという感じです。中国キライな人(笑)、いいですよ。てか、日本語での中国記事って、なんか踏み込みが足りないし、ようわからんしもどかしいのですよね。やっぱ、その国のことはその国の人に聞かないと。

「出荷作業8時間を1秒に」三浦市農協で起きた驚異の進化

WEDGE REPORT 2018年2月27日

 これは最近のIoTやAIの流れが、どのエリアのどのレベルまで実用化が進んでいるのかという点で興味深いです。

 この農協では(どこでもそうだと思うけど)、毎日農家からあがってくる生産物を全国50の市場に、どれだけ振り分けるか、どの運送会社を使うかという作業をしてて、特に配車予定を組む部分が難関。手作業だと中堅でも8時間、ベテランすら5-6時間かかるそうです。確かに複数の生産物、複数の出荷先、複数の配送手段のなかで最適化を図るというのは、もう超難度のパズルのようなものでしょう。

 サイボウズというソフト会社が組み上げたソフトを使えば、これが1秒で出来てしまう。セミナーでデモをやるんだけど、1秒で終わってしまうから「デモ映えしない」と苦笑していたらしいです。たしかに、ありがたみないかも(笑)。

 面白いのはアルゴリズムを3種類用意して、1は今までのパターン、2はソフト会社が作成した独自の計算方式、3がこれから蓄積されていくビッグ(になっていく)データーをもとに、最適化しつづけるもの。デモでは、アルゴリズム1を選ぶとトラックの台数は106台となったが、2だと85台まで台数が減った。さっそく4月から運用をスタート。メリットは労働時間の短縮であり、職員の負担軽減。空いた時間を営業などに効率的に使えるし、高齢化や人手不足をITでどこまで埋めていけるかと。

私見

 いや確かにめでたい話ではあるんだけど、そっから想像は膨らむのでした。いい職場だったら、「やれやれ」でゆとりのある労働スタイルになってくれるだろうけど、「利潤の極大化」を常に推し進める職場だったらアルゴリズムで労働者の作業時間内のエネルギーを最大限使おうとするだろう。別にそれ自体は「搾取」してるわけではないのだろうが、同じボリュームの仕事を1時間でやれと言われるのと50分でやれと言われるのはやっぱ現場感覚としては違う。「理論上できるはずだ」的にキリキリやられたら息も抜けないなーと。

 法律プロパーとして思うに、おそらく将来の労働問題は「アルゴリズムの組み方が労働法の理念に照らして適法か」という、プログラミングレベルでの争いや規制になっていくかもしれない。わかりにくそうだなー。過労死認定なんかでも、残業時間が月○時間とか数値化しないと勝ちにくいんだけど、実際そんなの数えてないし難しいんですよね。それに時間の問題ではないプレッシャーとかが本当はきついんだけど、それを数値化するのも難しい。それがさらにアルゴリズム=「この作業だったら28秒でできるはずだ」みたいな初期設定の争いって難儀しそうです。昔のニュースだけど、アマゾンの配送センターの従業員が、商品ピックアップするために毎日20キロくらい走ってるという話を読んだことがありますが、「そのくらいできるだろ」的に機械に言われてしまうのも辛いものがあるなと。

理詰めの追求

 刑事裁判で、被告人の検(員)面調書の信用性を弾劾する場合って専門用語で言ってもわかりにくいですね、警察官や検事の取り調べで喋ったことを紙に書いて(入力して)調書にするのですが、あとで「あれは無理やり言わされたもので本当ではない」と争う場合があります。その場合、拷問とか暴力によって無理やりってのはまだ分かりやすいのですよ(立証は難しいが)。わかりにくいのが「理詰めの追求」というやつで、これもダメだとされています。

 人間の行動って意外と明確な意味がないものが多いです。「なんとなく」「気まぐれで」とかいうやつです。例えば、毎日の帰り道、ふと気まぐれでいつもと違った公園の道を歩いていって、なんかの事件に巻き込まれて冤罪として逮捕されてしまう。そして「なんであんなところを歩いていたんだ?」と追求されるわけです。真実は「気まぐれ」なんだけど、説明としてはいかにも弱い。気まぐれ?いい加減なことを言うな!お前、警察舐めてんのか?あの公園は駅とお前の自宅と結ぶ線分上にないし、明らかに意図あってそこに向かったとした思えんだろうが?何しに行ったんだ?とか、理屈でギリギリ詰めていく取り調べです。それがなんでダメかというと、本当の事を言っても反論にも反証にもならない点です。で、理屈で押し切られて無理やり承諾させられてしまうという。

 裁判はギリギリの人間性が出て来る場面ですので、そーゆーのは信用しちゃダメだよねということでコンセンサスが取れてます。特に刑事裁判はディベート大会ではなく真実発見のための場なんだから、論破した方が負けるなんてことはザラです。理屈だけで人間の行動なんか説明できないよ、したらおかしなことになると。この「理詰めの追求」は、誰でも親や教師から押し付けられたりすることあったと思います。仕事やめてオーストラリア行くんだとか行っても、「何のために行くんだ?わざわざ仕事やめてまで行くんだから、相当明確な目標や意欲があってこそなんだろうな?ほら言ってみろ?自分を試したいとか曖昧なことでは納得せんぞ」とか理詰めでやられてしまう。

 これは僕もそうで(それほど直に覚えているわけではないけど)、十代の頃、その理不尽さが悔しくて悔しくて、なんとか言語で表現してやろう、理論武装もうまくなろうと頑張ってたわけです。それが後日弁護士になる素養(理路整然となにかを主張するスキル)や、ネットで言葉にしにくい感覚を言語化していのに役に立ってたりします。でもそれに対する反発感情は未だに根強く、過去にもエッセイでいろいろ書いてます。曖昧で要領を得ないものの中に真実は宿るんだ、明確に説明できるのは大体嘘だ、「巧言令色鮮し仁」だって。

 それがなんの関係あるのかというと、この種のITでのアルゴリズムも、「理詰めの追求」が入ってきたらイヤだなあってことです。10分に一個できるなら1時間で6個できる、8時間だったら48個できるからそれがノルマみたいな決め方は、人間を非常に疲れさせると思う。そんな機械みたいにできないって!本当の意味での生産性というのは、もっとルーズでリラックスして、見た目だらだらしてるような環境でないと生じないよ。特に知的生産性が高いものほどそうです。

 ITを賢く使いこなせるかどうかは、そのあたりでの鍔迫り合いみたいなものがあるんじゃないかと思います。なかなか一般には広まらない発想だろうけど、理屈どおりやったらダメだと。AIは、その点まで含めて、あまり理屈通りやったら却ってダメになるという自己学習をするならGOODです。でも、そこで「こいつは怠け者だ、使えない」という判断をしてしまうかもしれない。そこが恐いですね。IT開発者の皆さんの深い人間洞察力を望みます。

How heavy metal and head banging can help your mental health

ABC  19 Feb 2018
 いかん、書きすぎている。あと飛ばします。



 これはヘビメタを聴いてた方が、むしろ精神健康にはよろしいという科学レポートの記事です。

 もと(今も)メタルキッズの僕としては、それこそ「なにを今更」の議論ですけど、面白いこと研究する人もいるもんだなあ、学者さん(Queensland UniのLeah Sharman先生)もテーマ探しが大変だなあって思ったので。

 ここで出て来るメタルは、スラッシュメタル系ですねー。焼肉屋さんと格闘技通信みたいなムキムキな世界。僕がメインに好きなジャンルとはちょい違うんだけど、でも、それが本題ではない。

 あんな暴力的な音楽を聴いてたら、ますます粗暴で野卑な人間になるだけ、、なんてこたあ無いよ、全然、真逆ですよ。(僕の理解によると)メタルに限らずロック一般は、この世間に対して「こんちくしょう!」って思うところが原点になってる。

 生きてれば、その種の不快感は常に生じる。僕は「感情廃棄物」と勝手に呼んでますが、そこに廃棄物がある以上、なんらかの処理をしなければならない。なんせすごい感情エネルギーなんで、うまく使えばメタンガス発電みたいにも有効利用できる。「こんちくしょう」と思って、見返してやると必死に努力したりもできる。また、発散という形で処理することもできる。暴れたり、喧嘩したり、スポーツやったりです。その中で音楽によって発散する方法もあって、これがなかなか有効。自分で演奏すると尚更。ガンガンゴキゴキやってるとどんどん解毒するね。

 どんな形であれ感情廃棄物を処理しそこなうと厄介な話になります。例えば無理やり押し殺すとか、無かったことにするとか、セルフエスティームを下げることでやり過ごすとか(どうせゴミみたいな自分なんだから何されてもしょうがないよ的な)。

 そういえば、最近、熟年女性の認知症の話を頻繁に聞きます。それまでは良妻賢母だったのかもしれないけど、タガがゆるんできたら、周囲に憎悪を投げつけるようになるという。感情廃棄物が溜まってて処理されてないんでしょうねー。数十年分あるから、そりゃあ大変でしょう。

 それを考えたら、こんちくしょう!って思ったら反射的に殴ってるくらいの方がいいですよ。まあ暴力はあかんかしらんけど、その場で処理がベスト。暴力団とかあんまり鬱の人とかいなさそうだもんね。でも、ま、いちいち殴ってたら面倒なので、ぐっとこらえて、お家でデトックスです。ヘッドフォンで大音量で聴いて、ゴンゴンゴンゴン!うおおおお〜!ってやってるのが一番罪が無いです。

 優しい音楽で「癒やす」という方法もあるんだけど、それはどっちかというとエネルギーが枯渇してるときで、怒ってるときはエネルギー満載です。不快感情が、怒りという形で出て来やすいタイプの人間がいると思うのですが、大抵においては生命力が強いというか、納得できないものは納得出来ないとハッキリ言うタイプ。元気がいいから、怒りがすごいパワーになって出て来る。そういうタイプの人は、優しい静謐な音楽聴いてても、腹の虫が収まらないからダメです。

 それもあってか、ハード系のバンド仲間って、いつも発散してるせいか礼儀正しい奴とか、深く物事考えてる奴が多いですよ。狭い体験範囲の話だけど。感情収支がそんなに赤にならないので、サバサバしてますけどねー。これがプロになって金が絡んでくると、またいろいろあるんだろうけど。

'No-frills' electricity should be made available to NSW households, inquiry told

 ABC 21 Feb 2018,

 「ノー・フリルズ」というのはオーストラリアのスーパーの自社製品のこと、ノーブランド商品ですね。派手な飾り(フリル)は無いけど、安価で実用的な。それを電気料金にも作れという話。

 こちらも電力自由化でいろんな売電会社が商品を売り込んでます。が、商業広告の常で「今だったら○%お得!」みたいな釣り文句で引っ張って、でもトータルでは全然高いという、そんな商品が氾濫してて、それでいいんか?と。少なくとも、低所得者層に対して、わかりやすくて、安価なサービスを提供するように、公的に義務付けるべきじゃないのかと。

 実際、電力料金アホみたいに上がってて、皆さんブチ切れてますからね。資源国なのになんでこんなに高いんだよって(理由は複数あって誰が犯人とか言えない)。でも売る戦略もねー、深夜電力の時間の設定とか率とか、そこらへんちょこちょこいじくっては実質値上げみたいな。銀行の手数料とかいっしょ。些細な部分に小細工かまして塵も積もればで儲けると。最近の資本主義はこんなんばっか。

 声を上げたのはVinnes古道具屋で有名なSt Vincent de Paul であり、NCOSS (The NSW Council of Social Services )が同意し、NSW州の上院で議論されることになるそうです。ほお、最近はNCOSSっていうんだ。社会保障の部局ですけど、こっちの役所は年がら年中名前が変わるのですよ。覚えたと思ったらもう変わってるという。それこそなんとかしろというか、儲かるのはWEB業者と印刷業者じゃないかという。

 あと、この記事にのってたけど電気代のリベートがあります。リベートというと賄賂みたいだけど、全く合法の補助金・支援金です。今、NSW州では Low Income Household rebate (285ドル)、 Family Energy rebate(180ドル)だそうです。NSW州で90万人の人が受けています。詳しくは、NSW州資源環境局のリベートのページを。

 これは、それほどトピック的な記事ではないのですが、こういう地味なの読んでないと、社会の基礎的な知識が得られないので。


「ネット工作員」200人余り逮捕 台湾中央通信が報じる

 最近話題の「ネット工作員」ですが、中国国内で摘発を受けたというニュース。

 いまどき知らない人はいないと思いますが、「ネット工作員」というのは、ある特定の意図のもと、ネット上の世論形成をはかるために、その種の書き込みをするバイトを大量に雇うことです。どこの世界にもある話で、いわゆる「サクラ」ですね。ただネットの場合は、なんかしらんけど質が悪くて、偏執的で中傷罵倒するような不愉快なパターンが多い。

 原発や放射能をちょっとでも口にすると異常者扱いしたり、福祉の問題を示すような事例があったら「自己責任」を連呼するとか、その種のやつです。ネトウヨと呼ばれている人達(人だけじゃなくてロボットにやらせてるという説もあるが)と実質的にはかなりの部分がかぶるとも言われてます(てかお金も貰わずによく書けるな、そんなことって気もするが)。

 ただ質が悪いすぎるので逆効果だという説もあり、そこらへんはこの動画が面白かった。

 まあ、言ってしまえば、今の日本は大メディアが工作員であり、日本政府そのものが工作員であったりもするわけですが、これはその中国版。違うのは、政府が工作員を摘発している点です。

 この種の話題に敏感なネット世界とくに(2ちゃん改メ)5ちゃん界隈では話題になってるようですが、普通のニュースとしてはこの記事くらいかな。話題自体が表ではタブーなのかしら。

 この記事ですが、典型的な伝聞記事で「『中国国内で政府が工作員を摘発した』ということを台湾が報道した」ということを報道しているという。内容も「台湾中央通信によると、中国の公安機関が2017年5月以降、金銭を受け取ってある話題を繰り返し宣伝したり書き込みを削除したりする「ネット工作員」に対して行っている取り締まりで、容疑者計200人余りが逮捕され、5000余りのアカウント、1万サイトに上る規律に違反しているウェブサイトや故意に宣伝された情報数千万件が閉鎖・削除された」と全文コピペできちゃうくらいの。

 これではよく分からんので、英語で検索して調べてみるとChina launches salvo against “network navy” of trolls who spread fake news>や、Police arrest 200 for illegally deleting posts, hyping eventsなどがありました。さらに中国語が読める人だったらここがもっと詳しく書いてます。

 記事によると、網絡水軍(wangluo shuijun)=Network Navy(ネット海軍)と呼ばれる会社があって、ここ10年くらいネットでのその種の事業を広げてきた。なかなか電通も真っ青というくらいの営業ぶりで、クライアントから依頼を受けては、フェイクニュースを広めるとか、議論を捻じ曲げて誘導するとか、都合の悪い意見(自社商品への苦情など)があったらせっせと削除するとか。あっちいっては火をつけて、こっちでは火消しをして、マッチポンプですね。実際にやってる労働者は、「自宅で高収入」と求人をだしていくらでも補充すると。日本でも一本80円とかやってるそうですけど。この水軍の凄いのは、企業内部の人間まで買収して都合の悪いものを削除改変させたり、さらにハッキングまでやっているというすごい「企業努力」をしています。

 これもそんなこと言えば情報統制は中国政府のお手の物で、ネットすら遮断してるくらいなんだから、「お前が言うな」という気もするのですが、それだけにこういう支配外にあるインフルエンサー(影響を与える人)があるのは目の上のたんこぶなのかもしれません。

 日本語記事では200人逮捕くらいしか書かれてないけど、実際には2017年7月から撲滅活動(英語ではキャンペーンという)をはじめ、21の警察管区から大々的な摘発をし、以来この種のキャンペーン(大摘発)を40回やってるそうです。一発ポッキリではなく、繰り返し繰り返し。押収額も1億元を超えるし、閉鎖させたWEBサイトだけでも1万サイトを超える。かなり本気でやってる感じです。それでもこの「水軍」の規模はでかく、まだまだ国内に2300のネットワーク”ショップ”が健在だとか。なんかスケールが違うな。

私見

 

情報の量から質へ〜知的格差拡大と社会の変容

 この記事で思うのは、この種の「情報検証」が次世代の世界の争点の一つになるだろうなーというのが一点。思えば20世紀までの情報戦争は、大量に情報を流してるヤツが勝つという単純な量の問題だったと思う。戦前の大本営のように一党独裁やら、ドイツのゲッペルスやら、戦後日本の電通が強かった時代ですね。というかね、よく考えれば中世戦国の頃からやってたわね。「信長の野望」的な世界でも、軍議をやってるところで、「六兵衛」「は!」「そちは、配下の乱波どもに命じて、街道沿いの街々に噂をばら撒け、武田軍が大軍をもって押し寄せてくるとな」「承知つかまつった!」なんて感じの。でもって、配下の乱波(らっぱ、要するに忍者)が旅の行商人や僧侶を装って流れて、「おい、例の話、聞いたかよ?」とかフェイクニュースを流すという。でもって、高札立って「流言蜚語を禁ず」とか書かれたり(今の中国政府ね)。昔っから人間の考えることは変わらんね。

 でも、だんだん「質」が問われるようになってきた。日本のメディアの信用性は激減といっていいくらい落ちてきてるし、それは西欧の大メディアでもそうです。どいつもこいつも嘘ばっかってのが前提になってしまったから、今度はその「質」吟味の時代になってきている。

 その質の判断の一助として利害関係があります。大メディアになるほど時の権力と馴れ合いになりやすいし、自らが権力の一角になるとか。逆に、あまり利権利害のなさそうな、中東のメディアの方が公平っぽく見えるとか(アルジャジーラとか)。あるいは昔から or 最近になって出てきた硬派を名乗る、あるいは政治的スタンスを明確にして報道しているものも出てくるし、注目される。先に述べた大紀元もそうですし、先日日本では「長周新聞」というのを見つけました。こんな新聞あったのねという(失礼)ですが、長州ではなく長門と周防の長周です。1955年からずっと地元でやってるらしく、これも失礼ながらあんまり儲かってる風ではないだけに「忖度」もなにもしてない感じ。

 個々人でも匿名で書き散らしてるやつでも、内容が吟味されて、「工作員乙(”おつ”かれさまという侮蔑的な意味)」と言われてしまったり、この種の吟味が焦点になっていくのでしょう。フェイクニュースについての世界的な規制合意も始まってますし。

 ただ次の段階になると、相変わらずのテレビ(特にNHK)を鵜呑みにしている情弱系が数では圧倒的に多いだろうし、そのあたりの情報・知的格差がどんどん広がっていくだろうと予想されます。この知的格差は、所得格差よりも遥かに深刻ともいえます。金の問題は、よほどの超特権階級でもないかぎり(メディチ家やハプスブルグ家とか)、意外と簡単に埋まります。ドカンと一発ガラがきたら、持ってる資産なんかすぐ溶けますからね。だからといって貧乏人が金持ちになるわけではないのだけど、差は縮まる。F1レースで絶望的な周回差がついても、事故があってフラッグが振られて全車徐行運転したら一気に差が縮まるのと似てる。でも、知的能力の差というのは、そういう外部的な要因では埋まらない。

 ネットも悪いばかりではなく、ちゃんと調べていけば集合知の集積としてかなりの部分までわかります。賢いやつはどんどん賢くなるだろうし、それと現実の第一次情報を広く探して、突き合わせて全体像を構築していくくらい、そこそこの人だったら(中高のクラスで上位3分の1くらいだったら)できちゃいます。そうなるとですねー、これは推測だけど、社会のありかたが変わるような気もします。なぜって、学びつつある人達からすれば、いつまで経っても学ぼうとしない同胞にうんざりしてくるでしょうし、なんでこんな連中と同じ国をやって、そのツケを払わないとならんのだ?という気分です。これだんだん溜まっていくと、どこに行き着くのかなーという気がします。

中国覇権の現実的な意味

 もう一点、将来的な日本の実権は、アメリカから中国に移譲されていくんじゃないか。アメリカ自身、戦争屋さん以外の本音としては、ひきこもりたいだろうし。米ソ対立が終わって、アメリカ独裁になってからアメリカ人的にはあんまりいいことなかったもん。あちこち派兵するけど、だから生活が豊かになったということもないし、親子ブッシュは石油屋潤わせただけだし。そもそも今はそういう世界覇権という時代じゃないだろうし。また、今年あたりからあらゆるエリアで世界1の座を中国がアメリカから奪うという事象が出て始めてきてます。IT系なんかもう抜かされつつあるんじゃないかなー。アメリカがヘンコ(偏狭の関西弁)になって、移民とかよそ者に辛く当たる分だけ、優秀な中国・インド研究者が本国に帰ってバリバリやるから、ほぼ逆転になりつつあるとか。なんせ、全体主義の国だから、その気になったら顔認証でもなんでもプライバシーへの配慮も薄くていいから、いくらも開発実施できるから強い。

 だもんで、いつの日か「今日からお前はこの人の子になるのよ」とアメリカから中国に里子に出されるようになるかしらん。アメリカにとってみたら極東なんかどうでもいいしね。商業利権さえ得られたらそれでいいし。ま、そんな明確かどうかはしらんけど、最近の北朝鮮の対応でも、アメリカからのハシゴの外されっぷりを見てると、ま、そんな大事には思ってないの丸わかりだよね。おめーは金さえ払ってればそれでいいんだよって感じだし。ま、アメリカが覇権国でなくなっていくにつれ、特にそんなやりとりがなくても、自然と影響は受けるでしょう。

 スポンサー旦那がアメリカから中国に移ったとして、今考えるとこの世の終わりっぽくイメージするかしらんけど、その頃になってみたら、意外とイヤな感じはしないと思うよ。だって鬼畜米英が支配したらいきなりアメリカ万歳になってたんだから。例えば、このまま日本経済が行き詰まって、いよいよ失業者が増大したりする頃に、中国企業ががんがん買収して、それも鴻海がシャープを買収したような巧妙なやりかた(上から目線ではなく、あこがれの皆さんと一緒に仕事ができてうれしいですって低姿勢で臨み、士気を盛り上げ、業績を回復させた)でやるとします。中国企業だって、世界レベルで戦える連中はもう西欧流の合理性持ってるし、優秀な人材にはどんどん給料だすし、日本人にとってみたら、ひたすらふんだくっていくアメリカよりも、どんどん金出して優遇してくれる中国の方がいいじゃんって気分になるかしらん。少なくとも自分の給料が上がったら、悪い気はせんだろう。

 ただ、そんな融和的支配がうっすら覆っていくなかで、今回のようなネット徹底捜査をするノウハウもバリバリに持ってる連中がやったらどうなるか?です。その意味ではアメリカこそが相当エグいし、多分、僕らのネットの検索履歴(どんなエッチなサイトを見たかとか)は全部ビッグデーターの中に入ってると思います。わかんけど、そう思っておいたほうが無難ですね。多分その情報も含めて中国にいくでしょう。これまでのネット工作員の支払い履歴なんかも全部いくでしょう。それをどう使うか。

 もっとも中国覇権とかいっても、ロシアもインドもいるから牽制しあうことになるから、アメリカ一本よりは良いとは思います。19-20世紀はアメリカ文化が人類に貢献したけど(電気(エジソン)、飛行機(ライト兄弟)、自動車、コンピューター、ジャズからヒップヒップなど音楽、ハリウッド映画、スーパーマーケットやマーケティングなどのビジネスノウハウなど全部アメリカ)、これからはもっと多様な地域から多様なものが上がってくるでしょう。長いスパンでみれば、人類の文明というのは中東(メソポタミア)、インド(インダス)、中国(黄河)発であり、日本だってインド発中国経由の仏教を受け入れ、漢字を受け入れ、陶芸、書、文学、茶道、食など多大な恩恵を受けてきてます。だから別に珍しい話でもなんでもないです。これがノーマルといってもいい。

 ここでもまた同じことで、いろいろな影響を他者から受ける場合、その吟味と選別ということが焦点になるだろうし、その巧拙による格差というのもできてくる。そのあたりの具体的な展開がどういう形になっていくか、そこに興味があります。


 あー、まだ沢山あるのに、もう時間切れです。これ以上は長すぎます。また次の機会に。



文責:田村


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