今週の一枚(2015/04/27)
Essay 720:近頃の日本ウィスキーとオーストラリア
場所はBalmain。
こっちは至るところに花があってイイですよ。カウンシル(役所)が公費使ってやる場合も多く、シティだったらQVBの前とか、あとシドニー大学前のビクトリア・パークなんかも年中花が置かれていて綺麗ですよね。
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日本のウィスキー記事の紹介
今週はちょっと趣きを替えて、地元の新聞記事の紹介です。パラパラと読んでいたら、「ほう?」と思ったので。内容は、日本のウィスキーが今、オーストラリアで売れ始めているというものです。売れているのではなく、売れ”始め”ており、これからもっと売れていくだろうって話です。リンクたどっていって行き着いた記事なので、よく見たらちょっと古くて去年の6月の記事ですが、まあいいかと。原文はここです。地元の新聞紙が出しているExecutive Styleという、まあ気持ち富裕層向けって感じのものです。
Sipping Japanese whisky is now a thing
Simon McGoram
Jun 6 2014 at 11:06 AM
It's a case of 'land of the rising dram', but is there substance behind the hype?
巷では「酒出る国」という話でもちきりだが、その評判にふさわしい内実はあるのだろうか?
日本の「日出処の国」(rising sun)をもじっての表現だと思う。"dram"はスラングで少量の酒(ちょっと一杯的な)。
The concept of drinking Japanese whisky might sound as implausible as was, until recently, sipping on single malt from Tasmania. But both ideas are far from new to lovers of the malt spirit.
日本のウィスキーを飲むという発想は、タスマニア産のシングルモルトを飲むのと同じくらいありえないことだった。つい最近までは。しかし、多くのシングルモルト愛飲家たちは、どちらも昔から賞味しているのである。
Numerous varieties of Japanese whisky - once the hard-to-find preserve of aficionados and top-end bars - are joining newly trendy Tasmanian drops in the mainstream, as bottle shops and bars bolster their offerings to meet growing demand.
数々の日本製ウィスキーは、かつて熱狂的なマニアの蔵品か最高級のバーでもないと見つけられないものだったのだが、タスマニアウィスキーがメインストリームになりつつある流れに合流しつつあり、ボトルショップもバーも、増大する需要に応えるべく品揃えを充実させつつある。
Hamish Fyfe, the business manager for whisky at liquor retailer Dan Murphy's, says he has had to find more Japanese whisky to put onto shelves.
“We've had Yamazaki in our range for a long time, and towards the end of last year we put in two Nikka products,” Fyfe tells Executive Style. “We've been getting pretty good sales increases on the Yamazaki, so we tried to get a bigger range. Adding the Nikka products has meant that not only were we able to meet the growing demand, but also talk a little bit more about the category of Japanese whisky.”
ダン・マーフィー(地元の大きな酒屋チェーン)のHamish Fyfe氏はこう語る。「もっと多くの日本製ウィスキーを入荷する予定です。「山崎」はすでにウチの商品として長いこと扱ってますが、昨年末にかけてこれにニッカの商品も入れています。「山崎」の売上はかなり上り調子ですし、うちとしても商品レンジを広げようとしています。ニッカを扱うのようになったのは、単に増大する需要に応えるだけではなく、日本製ウィスキーについてもっと本腰を入れて見ていきたくなったからですよ」
The story of Japanese whisky goes back about 90 years and owes its existence largely to two people - Shinjiro Torii and Masataka Taketsuru, who founded the distilleries behind the two largest producers -- Suntory and Nikka.
日本のウィスキーの歴史は90年前に遡り、二人の先駆者によって形作られた。鳥井信治郎と竹鶴政孝、のちの二大酒造メーカーになるサントリーとニッカの創始者である。
Scottish influence
Taketsuru travelled to Scotland to study organic chemistry at the University of Glasgow before working at the Hazelburn distillery in Campbelltown. It comes as no surprise, then, that the whiskies produced at the Yamazaki and Yoichi distilleries established by Taketsuru are modelled strongly on the Scotch style, with other Japanese whisky following suit over the years.
竹鶴は、キャンベルタウンにあるヘーゼルバーン蒸留酒製造所で働く前に、スコットランドに赴き、グラスゴー大学で自然化学を学んでいる。これは特に驚くことではなく、竹鶴によって設立された山崎、余市蒸溜所はスコティッシュスタイルに強い影響を受けているし、その他の日本のウィスキーの流れも同じである。
Japanese whisky, now globally recognised for its quality by awards and honours earned in international spirit competitions, only comes from nine distilleries - coincidentally the same number as Tasmania.
国際的なスピリットコンテストで数々の受賞をなしとげ、今や世界的に認知されている日本のウィスキーは、たった9つの蒸溜所からのみ作られている。偶然ではあるが、これはタスマニアの蒸溜所の数と同じである。
Fyfe says the continued rise in popularity of Scotch whisky has had a flow-on effect -- no pun intended.“As people have experienced scotch now they're going outside of that -- we've got whiskies from India, and obviously Australia, which has taken off since Sullivan's Cove picked up that award. And we're looking at bringing in a couple of other whiskies, too -- there's a Swedish one, and Penderyn from Wales. As it comes in, people start exploring and seeing how these brands compare with the scotch whisky they've got at home.”
Fyfi氏は、スコッチウィスキーの人気が上がっている国々では、波及効果があるという。「スコッチウィスキーを楽しんできた人々は、今はスコットランド以外の製品にも目を転じるようになります。私どもの店では、インド産のウィスキーも、もちろんオーストラリア産も、スウェーデン産なんてのもありますし、ウェールズの「ペンデリン」もあります。皆さん、いろいろなウィスキーを試しに買っては、ご自宅で本場のスコッチとどう違うのか楽しんでおられます。」
"no pun intended"の意味がわかりにくいが、「これはダジャレではなく」という意味で、flow-on-effect(波及効果)のFlow(流れる)が、スコッチ愛飲家がスコッチという囲いから流れ出るように他国産にも向かっているという、"flow"がシャレにみたいに見えてしまうけど、シャレを言ってるわけではないよって意味かしらね。あんまり自信ないけど。
Brooke Hayman is co-owner of Melbourne bar Whisky + Alement, which stocks more than 500 single malts and blends, including around 30 varieties from Japanese makers.
“We also have a cheeky collection of about 100 that are in our private collection, too,” Hayman adds. “We flew to Japan last year to do a tour of the distilleries and were frantically collecting whilst we were over there. We hold them to the side and as one runs out we put another one on the list.”
世界から500種類(うち日本産も30種類ある)のシングルモルトをストックしている、メルボルンのWhisky + Alementというバーの共同オーナーであるBrooke Hayman氏は、こう述べる。「(500種だけではなく)なんと他にもプライベートに百種くらい持っているんですよ。我々は去年日本に飛びましてね、蒸溜所めぐりですよ、あっちにいるときは狂ったように集めまくりましたね〜。それらはサイドメニューに入れておいて、切れたらまた新しいのをリストに載せるんです」
最後の一文が微妙に意味不明。”hold them to the side”「そっち側に保持」の意味と、「リストに新しいのを加える」との意味関係なんだけど、「サイド」というのは正規メニューの横の欄外に「臨時特選品」みたいに載せる場所(サイドメニュー)の意味で言っているのか、ホールド(しっかり保持)という意味を重視するなら「客には出さないで自分らだけが飲んで楽しむ」って意味で言ってるのかもしれない。でも、後者の意味だと「リストに載せる」という意味がわからなくなるから(自分らで楽しむだけならリストなんか作るか?という)、多分前者かな?また、後者の意味なら"side"ではなく"aside"にしてるかもね。このあたりは、英文読解力の問題というよりは、「もっとちゃんと書けよ」って気もする("side"のあとに" menu"を入れればいいだけなんだし)。
'Something exotic'
Hayman reckons it is consumers' increasing desire to find unique experiences in an era of globalisation that's leading to an upswing in Japanese whisky drinkers. “We see people's eyes wander -- they look for something unique, something exotic, I suppose you could say,” Hayman says.
“Things aren't exotic these days with globalisation, but with Japanese whisky people don't even realise it's there -- which is quite a surprise as Yamazaki was founded in 1923, not far off a hundred years now. But people still don't realise that there is Japanese whisky out there.”
グロバーリゼーションの今日、ユニークな体験をしてみたいという人々の欲求は日増しに高まり、それが日本製ウィスキーのファンの増加につながっているのではないか、とHayman氏は考えている。「お店にきたお客さんの目が泳ぐんですよね、なんかユニークで、エキゾチックなお酒はないかってね、見てたらわかりますよ。」
「グローバリゼーションの進んだ今、そうそうエキゾチックなものなんか無いのですけど、しかし日本製ウィスキーの場合、その存在自体知られてなかったですからね。山崎蒸溜所が出来たのが1923年で、およそ100年も昔であることを考えたら、これは驚くべきことだと思います。今でも、日本ウィスキーを知らない人が沢山いますからね」
Barry Chalmers, the marketing and training manager for renowned Sydney whisky den The Baxter Inn, suggests bartenders are having a major influence on sales of Japanese whisky to bar customers.
“I reckon that about 75 per cent of it is what the bartender wants to push. At Baxter there's a little intimidation going on for customers when they're faced with a wall of whisky -- they trust what our bartenders suggest,” he says.
シドニーで最近脚光を浴びているウィスキーハウスのBaxter Innの営業部長・人材開発部長でもあるBarry Chalmers氏によると、日本ウィスキーの売上増大にはバーテンダー達の役割が多分に寄与していると言う。察するに、75%くらいはバーテンダーのおすすめではないでしょうか。ウチでは、お客さんがウィスキーボトルの壁を見ているときに、そんな押し付けがましいことは一切しませんよ、お客様はバーテンダーを信頼していますからね」
As for an increase in demand in Japanese whisky over the past 18 months, Chalmers says it has been incremental. “We've always had a large selection of Japanese whiskies - 20 to 30 odd -- due to our self-importation. For other venues that now have access to a bigger range of Japanese whisky, that may be a different story.”
過去18ヶ月の日本ウィスキーへの需要の上昇傾向についてChalmer氏に聞いたところ、「ええ、着実に増えてますね。私どもは日本ウィスキーについて20種類から30種余りの品揃えをしております、自社輸入してますから。日本ウィスキーの品揃えを増やしている他のお店については、どうなさっているのかわかりませんが」
From Japan with love
And there is plenty more Japanese whisky on the way. Apart from Nikka Whisky's range that includes the blended Nikka From The Barrel and single malts Yoichi and Miyagikyo, Japan's biggest player in the whisky game, Suntory, is also bolstering its Australian offering. Five new releases -- that will be stocked by Dan Murphy's before the month is out -- have complemented the already popular Yamazaki 12-year-old single malt and include the Hibiki blends and the gently smoky single malt, Hakushu.
そしてまた、多くの新しい日本ウィスキーがオーストラリアにやってくる。ニッカの「フロム・ザ・バレル」「余市」「宮城峡」のほか、日本最大のメーカーであるサントリーもオーストラリアへの販売を強化している。5品ものニューリリースがあるのだ−これらについては今月末にもダン・マーフィーに置かれる予定であり、すでに人気のある「山崎12年」「響」、そして柔らかな燻蒸香が特徴の「白州」などを補完するそうだ。
But how will the price compare to scotch already on the market? Dan Murphy's spokesman Fyfe explains that single malt Scotch starts around $50 a bottle and goes up from there, whereas a Japanese whisky of similar age starts around the $90 mark.
“I feel that the prices of Japanese whisky will always remain a little bit higher than Scotch,” adds Fyfe, “simply because of the limited amount of product that we have access to. It all comes down to supply and demand. I think you can get exceptional buys in Scotch whisky that would beat it, but it's certainly comparable in terms of its quality.”
しかし、すでに市場にでているスコッチに比べて価格的にはどうであろうか。ダン・マーフィーのスポークスマンFyfe氏によると、「シングルモルトは大体50ドルくらいから上がっていくのですが、日本のウィスキーで似たような年代だったら90ドルくらい始まりますね。日本製のウィスキーは、スコッチよりも常にちょっと高めである印象がありますね。それは単に我々が入荷できる量に限界があるということに基づくのです。つまりは需要と供給ですよ。ですのでスコッチをお探しになっていると、時々上質な掘り出し物があるかもしれませんね」
雑感
高い
「へー、そうなんだ」と思ったわけですが、日本のウィスキーが品質的に良いというのは日本に居る頃から聞き知ってはいました。バブルの前くらいでしょうか、リキの入った高級品を本格的に売りだされてきたようにも記憶してます(記憶違いかもしれないけど)。しかしながら、味覚的にそう実感したという記憶はないです。飲んでないから。なんせ僕のパーソナルな体験記憶では、ビンボー学生時代に酔うために飲むって感じで、サントリーといえば1本1000円くらいの「白」でした。次にダルマやらリザーブやらで。で、高級品となると、帰省してた友達が実家からくすねてきたお中元・輸入品のジョニ赤とかそこらへんで、国産<舶来って図式がカッチリありました。
一方、円高と関税引き下げ、さらに酒税改正などで、かつて高嶺の花だった洋酒が劇的に安くなりました。その昔はジョニ黒なんかフェラーリみたいな存在で、サラリーマンの月給が10万円かそこらって時代に一本1万円はしましたから、おいそれと買えるわけがないという。それが気づいてみたら、「え?」というくらい安くなって、並行輸入とか量販店とかでむちゃくちゃ安い値段で売ってました。ほどなくして日本を離れてしまったので、その後どうなったのかは知らんのですが、「2-3000円出せば大体買える」というのが最終的なナマの消費者感覚です。
で、今回の記事をきっかけにちょっと見てみたのですが、びっくりするくらい高いの売ってますね。右は記事にでていたダン・マーフィー酒店のオンラインショッピングのサイトで日本のウィスキーのところをキャプチャーしたものですが、ほんと100ドルくらいしますね。響の17年なんか160ドルもする。こら高いわ〜、日本ではもっと安いだろうと思って価格COMを見てみたら、またびっくりで、響17年が最安値で11209円ですから、普通に買ったら1.3万くらいかな?じゃあ、オーストラリアよりも8掛けくらいでしかない。山崎12年にいたっては、9180円が105ドルだから、あまり大差ないですね。
しかし、「山崎 ミズナラ 48度」が10万8000円ってなんなのだ?こんなん買うやついるんか?って居るから売ってるんでしょうね。他にも2-3万円台が結構あるという。へ〜って思った。お金もってる人は持ってるのね。確かにかつては最高税率75%だった累進課税も、今では45%だっけ?そんなもんになってるから、昔よりもお金持ちは貯まりやすくなってるのかも。そういえば、社長の年収が1億なんか滅多におらず、企業内の給与格差(ヒラと社長の給料差)がせいぜい6-7倍にとどまっているのが日本株式会社の強さの秘訣とか言われてたもんですけど、今では2−3億取る社長が結構いるし。
ビンボー=不幸じゃないって
とまあ、「オーストラリア市場における日本ウィスキー」というお題からどんどん離れていくわけですけど、もうちょい思いついたので書きます。大体50歳以上の日本人には「国産は常に舶来に劣るという法則」が刷り込みのようにしてあります。サントリーは貧乏人が飲むもので、金持ちはジョニ黒(てか銘柄自体知らなかった)というアホみたいに画一的な認識。
でもそれはサントリーのせいというよりは、もっぱらこっちの所得水準のせいで、あの頃(70→80年台)までの日本人は今よりもずっとビンボーでしたから、国産=大衆酒なのですね。そうしなくては売れないもん。量より質になってきたのは、80年台中期以降でしょう?金ピカの80年台とか軽薄短小の時代とか言われ始めてからです。これはお酒に限らずどんな商品でもそうだと思うのですが、ちょっと前までの日本人というのは、ほんとにビンボーだったんですよ〜。若い方はご存知なくて当然だし、僕だって戦前戦後は知らないけどさ。僕がリアルタイムに覚えているのはせいぜい東京オリンピックの頃(1964年)くらいが最古層の記憶で、「もう戦後ではない」とかいう合言葉で日本人はしゃいでましたけど、それでも僕の家は親子四人で四畳半一間でしたもん。小学校上がる頃までそれ。物心つかない頃は一家で「居候」とかいう時期もあったそうで、もう家族でカウチサーフィン状態。あの頃は「3畳一間」なんて、今の感覚ではありえない部屋が普通にあって、そこに一家7人とか住んでいたという。押入れに3人、テーブルの上と下で一人づつ寝るという。
それでもこっちは「そんなもんだ」って思ってるから不幸感ゼロです。二子玉川だったけど、家の前の道が舗装してなくて(舗装道路の方が珍しかった)、通りを渡ると数百メートル(てか幼児だから広く感じるだけだろうけど)先の富士銀行まで、一面田んぼで、映像記憶としては常にレンゲの紫色の花が咲き乱れる風景しかなかった。もう記憶では、アルプスの少女か、サウンド・オブ・ミュージックの世界ね。スイスに住んでましたって感じ。
親子兄弟年がら年中一緒にいるから、あえてスキンシップなんて言うまでもなかったです。なんつか、もう動物的に親和してしまうというか。キッチンなんか半畳ですよ、半畳。これで何を作れというんじゃあって感じだけど、当時はそれが普通。てか水道があって、井戸まで水汲みにいかなくていいだけラッキーという。なんとなく記憶あるけど、2−3歳の頃?おふくろが水汲みに行くのついていったような。ゴッコン!って快い音とともに、冷たくてきれいな水が、夏の空間に飛び散ったという一瞬スプラッシュ感覚しか記憶にないけど、そんな悪いもんじゃなかった。てか子供的には楽しい冒険レジャーだった。子供の頃は、なにやっても楽しかったですからね。あの頃の記憶が自分の人生哲学みたいなものに原型になってます。人間、本来何をやっても楽しい筈、何をどうしてもハッピーになるはず、ほっといたら自然にそうなるって、これは強烈な確信としてあります。だって事実そうだったんだもん。
日本の鬱状態やら、「お金がないと死んじゃう病」やら、やたらゼニカネ資産にしがみつく感覚やらを見聞するにつけ、「なんで?」って不思議だし、50代以上の日本人は何をやっているのか?ってイライラしますね。お前ら、忘れちゃったのかよ?あの頃の楽しさや充実感を。なんでそれを下の世代に言ってやらないんだよって。根っこの部分では、多分僕は、今のベトナムやカンボジア辺りの人達の感覚の方が近く感じるし、今の日本人の感覚の方が外人みたいです。
「豊かになる=ハッピー」が何の留保もなくそう感じられたのはせいぜい1970年の万博くらいまで、「20世紀少年」の頃までで、そっから先は全部「道を踏み外した」くらいに思いますよ。だって、どんどん豊かになるけど、どんどん虚ろになっていく感じは、これは中学生の頃であったけどしっかり感じたもん。妙な世の中になっていったもんね。金属バットで親を殺すとかさ、家庭内暴力、校内暴力、落ちこぼれ、受験戦争、全部そのころから出てきた。思い起こせば、あの頃だったかもしれないです。ああ、俺の住むべき社会じゃないな〜って漠たる違和感は。それが後のオーストラリアに移住につながってるのかもしれません。
それまでは日本全部が普通に寅さんかサザエさんの世界だったもん。傷ついた云々言う前にとりあえず殴ってたし、一回殴り合ったらマブダチだぜってノリだし、みなが飯場の作業員みたいな。荒っぽいけど陰湿ではないよって。星一徹的なちゃぶ台DVなんか普通にあって、今では星一徹だけが突出した象徴的なバイオレンス・キャラになってるけど、あれが普通。でも殴りはするけど、それ以上に抱きしめてはいたし、そもそも人間精神がそこまで複雑に屈折してなかったし(屈折する前に喧嘩してたし)。問題は有形力の行使=暴行という外形行為ではなく、その背景にある人間の闇というか、黒い邪悪成分がどれだけあるかでしょう。
ちょっと前に書いた「下降局面」もそうですけど、このまま日本が経済破綻して、全員失業&全資産パーになったとしても、50歳以上がうろたえるのは許さん!って言いたいすね。あの頃に戻るだけであり、別に死にはしないし、それどころからまた楽しくなるからウキウキしながら待っりゃいいんだよって。年長者がドンと構えてないから、若い衆がうろたえるんだろうが。何も複雑なことがないスコーンとした開放感とか、持たざるがゆえにものの本質価値が鮮明にみえる気持ちよさとか、覚えてないの?って言いたいス。握った手のお母さんの温かさとかさー、お兄ちゃんの頼もしさとかさー、それがあったら別に良かったじゃん。てかそれなくして幾ら金稼いでも虚しかったじゃんよ。こんな大事なことなんで忘れるんだよって胸ぐらつかんで頭ブンブンしてやりてーよ。
嘘や虚栄で始めた物事は、結局は骨折り損のくたびれ儲けになるだけだって、何回やったらわかるんだ。万博や沖縄返還で騒いだあと、第一次オイルショックで、日本人全員がびしゃ!とビンタくらったみたいに一瞬目が覚めたはずだけどな〜。「消費は美徳だ」(本当にそんなこと言っていた)なんて鉦や太鼓を叩いていたマスコミの胡散臭さもわかったでしょうに。しかしそこで二度寝して。第二次オイルショックではもう起きもせず、バブルが弾けてようやく起きたと思ったらまた三度寝して、細川政権後に四度寝して、神戸地震で五度寝して、リーマンショックで、東北地震と原発で、、って。もうどんだけ寝るんだよって。墜落していく飛行機の中で熟睡してるというか、お前ら、ギャグで人生やってんのかよって。
品質とメーカー
話がめっちゃ逸れているけど、ビンボーだった日本人向けに作って売るのが国産メーカーの使命ですから、サントリーも質より量の大衆酒を出すし、トヨタもレクサスよりもカローラを作ると。それはもうメーカーの実力というよりも、社会的な状況がそうだからそうなっていたってことでしょう。でも、1923年という第一次大戦直後にすでに余市の蒸留所が出来、本格的にストッコランドで学んできたバリバリの技術者が熱意と野望をもってやっていたって話だから、もうあの頃から最高品質が出来る態勢は整っていたのでしょう。しかし、それが本格的に売れるようになったのは、環境が整ってくる何十年もあとの話だという。比較的最近になってから最高品質の酒を市場に出すようになるし、海外でも認知されるようになってくる。
ということは、今考えたらありえないくらいの国から、また未来のブランドが出てくるってことですよね。今回、「インドのスコッチ・ウィスキー」なんて存在があるのを初めて知ったけど、でも、不思議ではないですよね。英国植民地だったインドで英国系産品が出来ないわけもないんだし、セイロン紅茶とかあるくらいなんだし。ダン・マーフィーのサイトでも、インドスコッチを二品売ってました。
あとこっちにきて再認識したというか、国産=低品質って認識は、国全体がビンボーだったからそうなってるだけの話で、それって自国民が一番分かってないという。また、それは他の国の製品についても同じことで、勝手にイメージだけで決めつけていると大間違い!ってこともよくあるんでしょう。恐いですよね。
そしてまた、今の日本の産物で、こんなん売れるわけがないと思っているものの中から、明日の世界ブランドがボコボコ出てきても不思議ではないわけでしょ。エルメスだって、もともとは馬具屋さんでしょ。ロゴが馬車だし。自動車の普及で普通に倒産するところを、皮革技術をつかって財布や鞄を作って生き延びるどころか世界ブランドになってるわけですよ。馬具屋さんが。なにがどうなるか分からんのよね。
でもニッチ
オーストラリアは、これは酒税の関係なのか、スピリッツ系が高いですね。最初来た時、日本の感覚で探してたらびっくりした。こんなもん買えるかって。その代わりビールが安く、ワインも安い。ビールなんて、その昔は24本カートンで買えば1本100円切ってて、今でも諸物価2−3倍になってるとはいえ、それでも1本200円くらいです。平均年収ほぼ2倍のオーストラリアでそれだから、購買力平価で日本に換算すれば100円ちょいくらいじゃないかな。発泡酒とかじゃなくて、ちゃんとアルコール度数5.7%とかそんなやつで。ワインに至っては、カスクワイン(紙箱ワイン)のお徳用増量5リットル12ドルとかで買えば、リッター200円前後というガソリンみたいな安さ。こういう状況で、一本100ドルのウィスキーというのは、かなりのものですよね。だもんで、日本のウィスキーが赤丸付き人気上昇中!といったところで、すごーく限られたニッチな世界なんだろうな〜というのは推測できます。レストラン行っても、殆どがワインかビールですもんね。もっともレストランのメニューにこの種のお酒が登場するのも、そう珍しくなくなってきたし、そこに「山崎」の名前を見つけることも、ないわけではないから、超マニアックってほどでもないのでしょう。そのあたりのボリュームの見極めが難しいところですけど、まあ、そこそこは浸透しているのかなってくらいですか。
ジャパレスの立ち位置〜ビジネス講座
よく書いてますけど、日本でホワイトカラーやってるよりも、寿司やラーメン作ったり、自動車の整備工やってる方が、オーストラリアの永住権も取りやすいです。オーストラリアの永住権は、リアルに市場価値のある能力に付与されるから、つまりはそれだけ需要があり、お金が稼ぎやすいと。で、ジャパレスの現状ですけど、もうどんどん進んでますよ〜。単純に店舗数が週に1軒増えているってことだけではなく、バリエーションも広がっていくし、内容も深化していく感じですね。日本人的には、ともすれば「あの懐かしい日本料理を〜」ってノスタルジックなノリで向かい合うんだけど、率直に見ると、これはもうマーケティングのケーススタディという感じで、ビジネス学校の教材になるような世界です。日本料理という素材を使って、どういう新しい売り方をするか、どう演出して、どう展開するかです。
もう一つ、直近のジャパレスの記事があって、こっちも紹介しようと思ったけど長いのでやめます。てか、英文がくそチャラくて訳す気にもなれんかったんだが。Sydney's new-wave Japanese restaurants って記事です。記事の日付が「Apr 17 2015」だから、ごく最近のものです。
ここでは、最近のシドニーのジャパレスの、「トレンディ」という死語化したバブル用語を使いたくなるような状況が書かれていて、それはそれで面白いです。大体が、シドニーの「トレンディ・スポット(ぷ笑)」であるサリーヒルズのクラウンストリートとか、ダーリングハーストあたり、シティではアッパーシティが洗練されたっぽいノリで、ロウアー(タウンホール以南)がアジア風味ファミレス風味になるという。タッチスクリーンでメニューをオーダー、カラオケあり〜ってノリね。
ここで紹介されているTokyobirdですけど、オージーと日本人の方の共同経営で、メディア戦略もバッチリで死ぬほどメディアに紹介されているみたいです。HPに誇らしげに書かれている「press」を転記すると「24 Mar 2015 - Sydney Life、12 Mar 2015 -- Time Out Sydney、10 Mar 2015 -- The Daily Telegraph、24 Feb 2015 -- Good Food、22 Feb 2015 -- Bar Zine 、18 Feb 2015 -- Alt Media / City News、12 Feb 2015 -- The More The Munchier、6 Feb 2015 -- Broadsheet -- Drinking Japanese、26 Jan 2015 -- Food. Travel. Superlatives. 21 Jan 2015 -- The Urban List、 21 Jan 2015 -- Not Quite Nigella、16 Jan 2015 -- The Urban List、15 Jan 2015 -- Broadsheet、15 Jan 2015 -- Concrete Playground、13 Jan 2015 -- Good Food (SMH)、6 Jan 2015 -- The Unbearable Lightness of Being Hungry、26 Dec 2014 -- Gourmantic、17 Nov 2014 -- Australian Bartender」という、もうものすごい集中豪雨のようなメディア戦略。
コンセプトは「Tokyo’s yakitori-ya and classic cocktail bars in an intimate Surry Hills laneway venue.」、東京の焼き鳥屋と、クラシカルなカクテルバーを掛けあわせ、それをサリーヒルズのローカルに馴染みのある”横丁”な路地裏に演出する」ってことです。「ちょっと一杯」でショットをあおれるという、親しみやすいし、カジュアルだけど、妙にカッコいい感じで、しかも内容的にはぐっと高級で絞り込んでいる。そして、ツマミ(食べ物)はびっくりするくらいシンプルで、本当に焼き鳥メイン。ねぎま、つくね、手羽先、レバー、ハツのみ。その他もろもろだけど、数は多くないです。「飲み」に徹し、焼き鳥を出す。スキューワード・グリルド・チキンという英訳を使わず、もう「YAKITORI」で出す。客に「ついてこい」っていうやり方ですよね。
でもって、酒の種類がさすがに良くて、日本のウィスキーが16品目もある。山崎も4種類、響だったら12年、17年、21年があるという充実ぶり。あと酒類で充実してるのは、バーだからあたりまえだけどカクテル。でも日本ウィスキーほどではない。ビールも日本酒もワインもそんなにない。もう完全に日本ウィスキーを焼き鳥食べながら、お洒落にカジュアルに楽しむ処というコンセプトが鮮明なんですよね。それをメディアがピラニアのように食いつくという。だもんで、ビジネス教材になるな〜と。でも値段書いてないんですけど。それに後の方のメニューになるとWebデザインが未了なんですけど(Empty section. Edit page to add content here=ここに内容を記入して下さい、のまま) 。
ビジネス戦略でいうなら、日本人が海外に売るなら、家電でも車でもなく、クールジャパンもいいけど、それ以上に手っ取り早いのが日本料理でしょ。それなりに熾烈な競争があるけど、市場規模は刻一刻って感じで拡大しているし、世界の連中の集まるシドニーでこれだけ当たっているなら、アジア諸国に持っていっても受けるでしょうし、現に受けている。
でもって、今僕がワーホリ・留学生できてて、長期戦略で考えるならば、オーストラリアは生活水準や福祉レベル、食料自給率やカントリーリスクから考えて人生の拠点になりうるから、なにがなんでも永住権取る。10年かけても取る価値はある。でもって、ビジネスを展開したり、職探しをするなら、地元オージー社会に溶け込んで〜というのは大事だけど、むしろ市場になる国の人たちのことをよく知る。オージーってしょせん2400万人しかいないんですよ。でもアジアは中国とインド合わせたら30億人もいる。桁が二つ違う。だもんでシェアでも中国人とかマレーシア人とかインド人とかと交流して、彼らの感性やニーズや現地の状況を学ぶね。オーストラリアは歴史も浅いし、かなり透明な社会なので、ちょっと歴史と社会構造を見たら大体わかるからそう難しくないけど、インドネシアなんか2億人もいるわ、島が万単位であるわ、言語も文化もむちゃくちゃバラエティに富んでるし、殆どがムスリムだし。インドにいたっては言語だけでも860言語あるという複雑さ。難易度が桁違い。だから学ぶと。
で、ジャパレスでバイトして、生活費を稼ぎ、賄いで栄養補給をしつつ、ビジネス戦略を学ぶね。なるほどこういう客層になるのかとか、どういう民族がどういうメニューを好むのか、どうやると怒るのかとか(笑)、仕入れルートはどうなってるのかとか、いろんなタイプのジャパレスを渡りあるいて、終わる頃には、どっかの◯◯総研のビジネスレポートとして提出できるくらいにまとめあげる。それをひっさげて、帰国したり、クアラルンプールやシンガポールあたりにいってとか、次の展開を考える。
このくらいの絵図面は最低限描いておいて、さて実戦なんだけど、ま、そんなうまくいくわけないよね(^^)。シェア探しじゃ〜、ビジネス調査じゃあってやっても、アポとった家に行きつけなくて、日暮れて道遠し。夜道を涙こらえて帰ってくるね。いやあ、でも、千里の道も一歩からですわ。それでいいのだ。
文責:田村