というわけで先週書いて秘密保護法は、ご承知のように衆院を通りました。それに関しては賛否両論あるのでしょうが、あれから何だかんだ色々考えさせられた点を、また備忘録的に書き綴っておきます。
みんな打たれ弱かった
なんでこんな拙速に事を進めるのだろう、後でも述べるように、推進派にとってもプラスよりもマイナスの方が大きくなりかねない、下手をすれば「誰も得をしない」という変な法律を、なぜにこんなに?ってそこがずーっと不思議でした。そりゃあ憶測をたくましくすれば、様々な人が様々なことを言っているように、さまざまな背景事情が描けるのですけど、リアルに根っこにあるのは何なんだろう?と。
それが一番得心がいったのは、アメリカ在住の冷泉彰彦氏のコラム
「政府はどうして「秘密」を持ちたがるのか?」でありました。一読して、「あ、なるほどね」とストンと腑に落ちた気がする。
所論は、なぜ政府は(あるいは"人"は)秘密にしたがるか?につき、
「無能だから」「説得する自信がないから」という極めて人間的な理由をあげています。何も、暴利を貪りたいなどの邪悪な企みがあるからとか、弱者を踏みにじって統治の快感に酔いたいからとか、そこまで強力に悪人であるわけではなく、つっこまれたくないから、自分らのミスをあれこれ批判されたくないからという。また、ミスではないし、必要悪であるという確信はあるのだけど、それを説得的に有権者に説明し切る自信がない。だから秘密にしたがると。
冷泉氏はアメリカのオバマ政権ですら秘密主義に走っていることを挙げてますが(保険制度運用の不備とか、無人殺戮兵器の無差別殺人とか)、確かにアメリカも秘密が多い。情報公開法は進んでいるし、市民側の健康でアグレッシブな批判精神も旺盛ですが、でもケネディの暗殺の首謀者は誰か?からはじまって、イラクの大量破壊兵器がないのに「ある」とした判断過程や責任の所在についても曖昧ですし、911テロについても(以前紹介したビデオを見ると)、確かに不可思議なところが多い。
なお911については何から何までヤラセだったかどうかはわからないですけど、少なくとも双子の貿易センタービルの2棟に飛行機が激突した後、1時間くらいしてから突如として隣の小さなWTC7ビル(といっても47階あるが)が崩壊しているのは不可解です。それも自由落下のように6.5秒で全壊していて、こんなの発破仕掛けて爆破しない限り物理的に不可能(だと各専門家は口を揃える)なんだけど、でも生じている。説明としては、テロ側が密かに爆薬を仕掛けておいたのだということでしょうが、でもそれは公式見解ではなく、二つのメインビルの火災と瓦礫による損傷だというが、もっと近くにあったビル(複数)は何の影響もないし、そもそもそんなもので47階のビルがわずか6.5秒に完全崩落するのもおかしい。もっとおかしいのは、後で検証しようにも当局がとっとと瓦礫を片付けて廃棄処分にしてしまい、検証できなくしている。なんか隠そうとしているんじゃないかって。でもって、アメリカは愛国者法とか日本の秘密保護法の元ネタのような無茶苦茶な法律があるから、専門家達も積極的に調べようとすると逮捕の危険を感じたりするから、ガンガン突っ込めないという。
ケネディ暗殺にせよ911にせよ、あるいは日本軍の真珠湾奇襲を知っていながら知らんぷりしたこととか、このあたりは結構陰謀チックですが、保険制度運用の不手際などというのは別にそこまで陰謀をめぐらせるほどの巨大な利得もないし、時間的余裕もないでしょう。でも、実体を詳細に公表したら、「なにやってるんだ!」とボロカス非難されるに決まっているから、それは避けたい。だから秘密にする。
これは、日本でもそうでしょう。本当は、原発事故が起きてから今日までの全記録を完全に公開して欲しいくらいだけど、でも天地がひっくり返っても出さないでしょう。それどころか「ない」と言っていた議事録や資料が、逆にアメリカ経由で出てきたりして、それがまた批判されています。それで学んだのかしらないけど、「そもそも議事録を作らない」という妙な風習まで出てくる本末転倒。
陰謀説をさておいても、「自信のないことは隠しておきたい」というのは、これは本当だと思うのです。誰だって、僕もあなたもそういう傾向はあると思う。そりゃ上手く成功した仕事については、「秘密」どころか周囲がうんざりするほど細かく語れるでしょう。要するに「苦労話」「自慢話」ですな。でも、自分でも本当にこれでいいのか不安だったり、「あちゃ〜、ミスったかも」と思ってるようなことは、なるべくオモテに出したくない。上司に聞かれても誤魔化したい。微妙にやましいところがあって恋人に問いただされても「いや、別に、なんでもない」と秘密主義に走る。人間というのは、自信があったら自慢するけど、自信がないときは突っ込まれたくない。ましてや、本当に失敗していたようなときは、全力で隠したくなる。なかったことにしたいし、そういった失敗が存在することに気づいてほしくない。話題になってほしくない。
そして、何事かを決断するにあたり100%自信満々なんてことは、実際少ない。ましてや状況それ自体が複雜で、利害関係が錯綜しまくっている現代の政治においては尚更でしょう。ビジネスにおける経営判断にせよ、個々人の人生においてどこに就職すべきかとか、いつ退社すべきかとか、誰と結婚すべきかについてだって100%自信満々ってことは少なかろうし、仮に確信を持てたとしても、「なんでそう決めたの?」と聞かれたら、客観データーを出して万人を納得させられるような合理的な説明なんかできっこないです。実際には、「解決不能」「正解なし」状況において、脳味噌が飽和状態になりながら、「ま、こんなもんでしょ」みたいな決め方をしているだろうし、あるいは「えいや!」と直感一発でしょう。てかいつも書いているように直感一発の方があたってる場合も多い。だが説明は出来ない。
一方では、現在はネットによる情報流通が激しいです。その中には愚にもつかない罵倒合戦も多いけど、鋭い意見や貴重なデーターもある。いくら当局が頭脳明晰・経験豊富な選良集団だったとしても、世間は広い。もっと頭脳明晰で経験豊富な人達は幾らでもいる。あなたが仕事で行った判断の是非について、日本全国の同業者や先輩たちから詳細にチェックされたら、たまらんでしょう?ネットが無いか、あまり活用されてなかった時代には、そういう悪夢のような事態は起きず、一部の関係者や、在野においては特にそれに興味を持っている極く小数のマニアックの人達だけの内輪の話ですんだから、状況コントロールも出来た。「専門家や識者の意見を聞く」という諮問委員会でもなんでも、人選から議事リード、議事録、結論の発表に至るまで”管理”が出来たし、「やったこと」に出来た。でも、今のようなネット社会では、それが中々やりにくくなった。そうするとどうするかといえば、検証・批判のベースになる原データーを隠匿するでしょう。出したら最後、「なんでそうなるの?」と答えに窮する厳しい批判を受ける。だから出したくない。もう最期の絶対防衛線みたいなものでしょう。
以上の次第で、なにも巨大な陰謀があるかどうかは別にして、あそこまで必死に、稚拙なまでに性急に事を進めるのはなぜかといえば、もっとも大きな理由は、「つっこまれたくないから」という本能的とさえいえる自己防衛欲求であろうし、それは
「怒られたくない」「打たれ弱い」という、大きなスポンジケーキのようにフワフワ柔らかく肥大したエゴをもつ現代人特有のメンタル特性じゃなかろか。最近、みんな打たれ弱いんだよな。それは、ちょっと叱責されただけで泣き出したり、すぐ会社辞めたりする若い世代だけの話ではなく、みんなそうだと。特に優秀がゆえに出世してきたエリートさんの場合、コケにされるとすごーく傷つくのでしょう。だから「シャラップ」とか逆ギレするという。しかし、よく言えるよな。僕も英語圏に20年住んでるけど、シャラップなんて喧嘩言葉、仲間内の冗談は別として一度もリアルに使ったこと無いよ。てか怖ろしくて使う勇気ない。つまりは、それだけ傷ついたんだろう(or 根本的に英語を知らないんだろう)。
なぜこれが一番ストンと腑に落ちたかというと、ことの進め方が理性的というよりも感情的だからです。陰謀説も何らかの形であるとは思うんだけど、それだけだったらもっと理性的に(てか悪賢く)やったと思う。幾らでも上手に事を運べたと思うのだが、あそこまでヘタクソなのは何故かといえば、もう悪だくみというよりは、もっと切羽詰まった精神的な逼迫感があるんじゃないかと。昔に比べて外野(国民側)の攻撃能力は十数倍(数字は適当だけど)に増強した反面、非難罵倒の矢面に立って「ガハハ!なんとでも言え!」という太いメンタルではなくなっている。もう責められたらひとたまりもないって危機感があるのではなかろうか。
誰も得をしない件
3つの問題点
誰もが指摘する問題点は、概ね3つに集約されると思います。@事実上ほぼ無制限の逮捕権を認めることによる全体主義や軍国主義化の懸念、A行政への適切なチェックの妨害、B個々人のプライバシーの侵害、の3点です。
@は、それは確かにそうなんだけど、因果関係がややロングレンジで複雜です。まあ、実際には社会の雰囲気の変わり方なんか意外と早いのだけど、現在の風景と戦前の風景との落差が激しいので、すごく先の話のようにも見える。一方、"終着駅"の風景は、確かにヤバいので感情的な恐怖心に訴えかけやすいし、センセーショナルに唱えやすい。しかし諸刃の剣でそのセンセーショナルさが反批判を浴びやすくもある。今日明日ただちにどうなる話でもないというロングレンジに見えるだけに、取り越し苦労だとか、妄想だとか、大袈裟だ、ヒステリックだという言われ方もする。
ことは、その危険性や因果関係をどれだけビビッドに理解できるかにかかっているのだけど、それだけに論者の知性・知識・経験が試されます。高齢者層が特に反応したというのは、彼等はその怖さを身に沁みて知っているからでしょう。僕らは、強権的な怖さを実体験として知ってるわけではない。せいぜいが強圧的な学校とか部活とかブラック企業くらいでしかない。だからピンときにくいってのはあるかもしれません。
Aは、リアルタイムの問題です。行政のアカウンタビリティ(説明責任)の問題であり、それは今この瞬間にもキッチリ説明してもらいたいことは山ほどあります。放射能の安全基準でも、どのようなデーターにもとづいて、なんでそう決めたのかの決定過程を教えて欲しいし、データー採取の場所選定や頻度その他についても細々と聞きたい人はいるでしょう。いつどこで、具体的に誰と誰が何をどう話しあって、誰が最終決断をしたのか知りたい。あの義援金だって、具体的にどこにどれだけ使われたのか示して欲しいし、除染作業の下請へ降りていく過程を逐一知りたい。昔の話になっているけど(してはいけないんだけど)、膨大な年金データーがパーになっていた不祥事でも、「最後の一人になるまで徹底的に!」と大見得切っていたのに(当時の安倍ちゃんじゃなかったっけ?)、いつのまにかウヤムヤになっている。
今ですら情報公開が不十分過ぎるのに、これ以上「それはヒミツです」でブラックボックスや密室を増やしたら、もう住民や市民としてもやってらんないという思いもあるでしょう。他方、お役所側としては、これだけ隠しているにも関わらず、これだけボロカス叩かれている。隠していても、市民有志が自分らで測定したり、議論したり、知識を深め合ったり、それがゆえにオカルティックになっちゃう人もいるかもしれないけど、そうじゃない地に足の着いた人もたくさんいる。今ですらこの状態なんだから、これ以上公開情報を増やしたら持ちこたえられないって気分もあるのかも。とりわけ、過去の公害問題のときもそうだったけど、時間が経って健康被害がちらほら出てくるにしたがって国民側の圧力は加速度的に高まるから、来るべき嵐に備えて防衛陣地を強固にしたいって思いはあるでしょう。
時間的先後関係〜誰から先に"被害"にあうか
時間的先後でいえば、逆にB→A→@の順番になると僕は思います。
真っ先に被害を被るのは、国民側というよりも、むしろお役所や官僚さんでしょう。
第一にプライバシーです。これからは公務員になるのも考えものですよね。だって「秘密」に携わる部局に配属されたら、適性評価であれこれプライバシーを調べられるんでしょ。今だって、身上調査はやりますし、警察官として採用されるには家族関係もかなり調べられている。僕の甥っ子が警察官やってますが、当然僕も調べられているでしょう。でも、これからはもっと調べられるかもしれない。でもって、自分の家族、自分の恋人、自分の友だちが公務員になったら、そして「秘密」を扱うようになったら(何が秘密なのかわからないんだが)、自分もまた調べられる可能性があるということでしょう?薄気味悪いです。
ここで確認しておくと、法令それ自体にはキチンと歯止めがかかっているように見えます。すなわち第五章(12条〜17条)が該当条文なんだけど、要旨をいうと、@特定秘密を扱った者が秘密を漏らす人物であるかどうかの評価(適正評価)をするのだが、対象者は公務員だけではなく適合事業者やその従業者、さらには派遣労働者という民間人も対象になる、A評価は各秘密を指定する行政機関の長が行うが他の職員に代行させても良い(17条)、B対象は機密漏洩やテロに関する事項だが、この「関する事項」というのがクセモノで広がりやすい、C対象事項は列挙されているが、薬物乱用、精神疾患、飲酒についての節度に関する事項、信用状態その他の経済的な状況に関する事項などにまたがり、特に飲酒や経済関係になると漠然と広がってくること、D一応本人の同意を得ることになっているが、実際問題役所内で拒否はありえないだろう、E調査は本人への質問や資料提出にかぎらず「公私の団体に照会して必要な事項の報告を求め」ることもある。つまりは行きつけの飲み屋さんに聞くこともできる、E結果は本人に通知され、民間業者の従業員の場合はその雇い主にも通知される、F評価については苦情を申し立てられる、G評価によって得られた個人情報を私的利用してはならない。
一見ちゃんとしているんだけど、これだけだったら毒にも薬にもなりません。つまり本当に情報漏洩するか、スパイや外部機関との接触があるかどうかという微妙な事項を、本人の承諾のもとに通り一遍に調べたって分かるわけがないです。そりゃ競馬で多額の借金をしているとか、実はアル中でしたとか分かりやすい人は別だけど、そういう人にはスパイの側もわかりすすぎて接触せんでしょう。もし本当にプロのスパイが接触してて漏洩するとしたら、形式的な調査では絶対にバレないような方法を取るでしょう。たまたま深夜映画の近い席でとか、そこのトイレの中とか、混雑する電車の乗り降りの際とか、プロが尾行してないと気づかないような形を取る。だから、本気で適性を調べるんだったら、こんな儀式的調査をやっても意味が無いし、やるんだったらもっと同時並行的に徹底的にやるでしょう。調査対象も制限列挙のようでいて、テロに関する事項とか飲酒や経済関係など、どうにでも広げられる事項もある。
実際、それらをどこまでやるかは、各行政機関の長に委ねられています。ただ、自分の部局から漏洩したともなると、「長」の首が飛ぶでしょうからね、ちゃんとやるんじゃないかな。そして、ここから先は法文には書いてないグレー領域になり、実務においてはココが肝になるように思うのですが、この法律は適性評価はこうやれと書いてあるだけで、それ以外の一切の調査はしてはならないとは書いてない。任意で、かつ密行型の「補充調査」をして良いとも悪いとも書いてない。例えば、飲酒癖が良くないようだという話を聞き(てか同じ部局内だったらわかるけど)、実際どんなもんかと密かに退庁後につけていく行為は許されるのか、そして尾行していたらどっかの人妻と不倫してたという現場を目撃してしまったらどうするのか。これは関係ない事項なのか?しかし、スパイが色仕掛けで接触してくるのは常套手段でもあるから、一概に「テロに関する事項」ではないとは言えないかもしれない。そうなるとこの女の正体は誰か?ということまで調べたくなるのが人情じゃないかしらん。てかそこまで調べないと調べたことにならないんじゃないか。かくして、どんどん広がったりする可能性が無いとは言えない。
第二に組織内部の不整合があると思います。
まず秘密保護法の有無にかかわりなく、昔っから本格的に調べている機関があります。日本版CIAみたいなものですが、映画や小説でお馴染みの公安警察、内閣情報調査室、陸幕二部の3つがあるともっぱら言われています。日本の忍者部隊みたいなもので、伊賀と甲賀と風魔がいるみたいな。これとの関係はどうなるか、です。これは全然触れられていない。どうするんだろうな、本当に。これまで通りそれぞれ平常業務をやるのか、なんらかの連携をとるのか、これを契機により強大な捜査権をゲットするのか。もしそうならこの3つで主導権争いやるかも。でも、警察内部でも、公安(は俗称で本当は警備局)と刑事局があり、とっても仲が悪いと言われています。公安が今以上に巨大な力を持つことに、まず刑事局が面白くないのではなかろうか。てか、公安だってこれまで専売特許だったエリアをどっかに持っていかれるかもしれないのだからピリピリするでしょう。
また、秘密管理庁みたいに一元的に管理するならやりやすいのだけど、そういうのは無いようです。各行政機関がてんでバラバラに秘密指定をするわ、職員や民間人のプライバシーを調査するんだけど、それらの情報をさらに上級官庁に報告する義務というのがどうも見当たらない。
つまり、国家として全ての特定秘密とそれにまつわる個人情報を一元管理する体制にはなっていない。これが一つの批判のもとで、省庁間で政策のすり合わせをしようにも、それぞれに特定秘密を抱えていたら、それぞれに許可を求める手続をやったりして、まどろっこしくて仕方がない。第三章(6条)に特定秘密の提供規定があるのだけど、いちいち関連する全ての長と協議したり同意をとったりしなきゃいけない。でも、実際に官僚さんたちが真面目に政策を立案する場合、同窓とか同期の飲み会とかで、「そっちはどうなの?」とかいってフランクな意見交換をやって、そこで真面目な情報交換をして政策を深めたりするのでしょう。結構そういうインフォーマルな交流って大事だと思いますよ。でも、それがやりにくくなる。もともと縦割り行政でギクシャクしているのに、もっとタコツボ化する。
で、誰かが指摘してたけど、日本国としては一元管理できない特定秘密や情報も、同盟国のアメリカに全部筒抜けだとするならば、一元管理して統合的な日本政策を立案できるのは、結局アメリカじゃないかって妙な話も出てきます。日本の内閣で情報を集約してそれをやればいいんだけど、あんなにコロコロ首相や官房のメンツが入れ替わって、そんなこと出来るのかって気もしますね。そもそもそんな能力があるのか?と。一方、日本版NSC法はすんなり通っているし、それがやればいいんだろうけど、あれって安全保障(外交・軍事)に特化してて、今回の秘密保護法の秘密の範囲がやたら広範なので咬み合わないような気もします。秘密保護法の行政機関って、政府の答弁によると53機関でしたっけ?それに秘密指定が41万件?外交軍事に直接関係ないものも沢山あるし。つまりNSCと秘密保護法がサイズ的にも内容的にも全然マッチしてない。だからNSCには皆も理解があってさしたる反対はないけど、秘密保護法は無駄に広すぎるという反対になるわけで、それで円滑な行政が出来るのかという疑問もあります。
第三に、役所内部や政争のツールとしての個人情報が使われるおそれが考えられます。
お役所内部、特にキャリアと呼ばれるエリート内部においては、それはそれは熾烈な暗闘があると言います。本当かどうか知らないけど、佐藤優氏などの本や、官庁人事に関する諸解説などを読んでいると、まぁあるんだろうなと思わされます。その中ではこの適性評価の名のもとに行われた個人情報の争奪戦が行われるのではなかろうか。なんせ秘密を握っている方が絶対有利ですから。
上に見たように、適性評価も、通り一遍にやれば大した内容はないのだけど、これを口実に補充調査の名目で、あるいは名目なんかつけずに、あれこれせっせと調べるかもしれない。部下を把握しておきたいって心理もあるだろうし、やればやるほど誰がどれだけしているかが手に取るようにわかって単純に面白いってのもある。馬鹿みたいな話なんだけど、でも現場の人間心理って、そういう下らないことがモチベーションになったりするし、過去の漏洩でもくだらない動機だったりするもんね。かくして、最初は形式的な調査だったのが、だんだん熱が入ってきて、しまいにはストーカーみたいになっていく。そしてストーカー心理というのは、コレクター心理だから、この際何でも知っておきたいってなるかもしれない。
かくして、各職員について、やれどの業者にどういう接待を受けたとか、政治家の誰とつながってるとか、誰と不倫関係にあるとか、握りつぶしたセクハラ苦情の詳細であるとか、児童ポルノサイトにアクセスした記録であるとか、それが漏れたらキャリア崩壊・人生オワタって秘密だって出てくるかもしれない。調べられる方としてはたまったもんじゃないです。まあ、これまでもやってるだろうけど、もっと熾烈になる。
そんなことは99%のノンキャリ公務員の皆さんには関係ない話なんだけど、でも職務の距離的にたまたま近いところに立っていたら調べられることに変わりはない。民間企業だって、防衛や原発関連のメーカーや企業、その担当者、さらに派遣社員でデーター入力をしているだけの人であっても、もしかしたらストーカーまがいの調査が行われるかもしれない。法律上の評価は告知も承諾もいるからいいけど、それで済むという保障はなく、密かに並行調査をやってるかもしれない。民間企業の就職だって、お見合いだって、探偵雇ってあれこれ身上調査をするくらいなんだから、やらないという保障はないでしょう。そのうえ「なにが秘密か秘密」だから「これは大丈夫」って線引がなく、どこまでやられるのかわからない。
人間、誰でも叩けば埃の出る身体です。誰にどこまで知られているか分からんというのは不気味です。そして他人の秘密というのは、絶対的な強制力を持ちうる。単純に恐喝のネタになりますし、他人をロボットに出来る。その気になったら、どこまでも悪用できる。部下の秘密を把握すること、これが組織の長たる者の権力を固めることにもなるし、対立する派閥を牽制する有用なツールになりうる。そうなったら、対立派閥が秘密を知る前に、こっちの方でも調べろって話になって、疑心暗鬼の巣窟になる。
ということで、何が言いたいかというと、この法律作って得する人って日本にいるの?ということです。なんか見てたら「法案を通す!」というのが自己目的化してて、本当にわかってやってるのかな?って、再三疑問に思うのでした。
ちなみに今は「適性評価」についてだけの話ですが、罰則の中で秘密漏洩教唆罪があります。第23条で「特定秘密保持者にその秘密を漏洩するにように共謀し、教唆し、又は扇動した者」というのがあり、極論すれば「どんなお仕事してるの?」「最近なにしてるの?」と聞くだけでも、「漏洩の教唆」にあたると言えなくもない。そうなったら、適性評価による調査ではなく、一般刑事事件の「捜査」としてあれこれ調べられる可能性もあります(まあ最初は内偵調査程度だろうが)。皆が心配しているのは(公務員とか出入りの業者だけではなく一般民間人も思いっきり対象になるという意味で)むしろこっちでしょうけど。
その他
国防は捨て玉、最初から副作用狙い
本気で機密防止をしたかったら、こんな投網をかけるような粗い法律ではダメでしょう。というかもともと「法律」には、そんな現実変革能力はないです。そんなの幻想です。むしろ副作用の方が強い。例えば、殺人罪を設けたからといって殺人が消えてなくなるわけではない。ある特定の個人が犯罪を犯すには、犯すだけの現実的状況というのがあるのであり(怨恨だったり、精神錯乱であったり、貧困であったり)、それが原因であって、事後の罰則なんか大した効力はない場合が多い。生活保護の受給規定を厳しくしても、不正受給を狙う連中は半分プロみたいなものだから、いくらでもすり抜けるし、コワモテで通す。結果として、本当に求められている人に届かないという副作用の方が強い。
ちょっと考えたら分かるように、世界各国の選りすぐりのプロのスパイ達が、「やっちゃいけませんよ」と言われたからって「はーい」って大人しく言うことを聞くわけはない。また、組織内部の機密保持者が、組織を裏切って情報を流出するとしたら、その人個人の現実的状況というのがある筈です。例えば子供が難病になって途方もないお金がいるとか、自分の所属している組織のやり方にどうしても納得出来ないとか。そこまでギリギリ切羽詰まったところで行われるのだから、いくら罰則を強化しようが大した抑止力もない。実際、本家本元に軍事国家である北朝鮮やら、かつてのソ連や東独から、ひっきりなしに亡命者が続き、情報がダダ漏れになっていることから分かるように、国の雰囲気が重苦しくなればなるほど、祖国がそうなることに反発するとか、雰囲気それ自体にメンタルがおかしくなったりするのが動機でしょう。
結局、効果があるのは、構成員のロイヤリティをどう高めるかとか、綱紀の維持をどうするかとかいう普通の組織論でしかないです。迂遠なようで、結局それしかないと思う。あと、個別のチェックは、セキュリティコードや暗号化を複雜にするとか、関与できる人数を厳しく限定するとか、法律とか大雑把な方法ではなく、個別状況に応じたきめ細かな現場の対策しかない。
大体、ハイリスクを背負ってまで盗み出すに値するような防衛機密がそんなに沢山あるわけないです。CIAの仕事だって99%は公開情報の整理と編集だというし、一般公開情報である程度のところまでは普通にわかってしまう。ネット時代の昨今だから尚更でしょう。大体どれだけの戦力を持っているかなんか防衛白書に載ってるし、軍事オタクだったら誰でも細かいところまで知ってるし。あるとしたら新型戦闘機を将来的にどれだけ配備するかだけど、機能的な秘密(最新鋭の技術など)は結局アメリカ製だったりするから日本にはないし、配備機数くらいだったら大体の予算を見てれば誰でも見当はつく。
一方、法律によって副作用的に抑止力が生じるのは、本当の意味での防衛機密ではなく、有権者が知っていてしかるべき役所の不都合な情報などでしょう。役所や企業の公式見解は○○なんだけど実は大嘘でした、みたいな情報です。例えば子供が好きで保育士さんになりました。幼稚園では○○というおやつを出したりしているけど、実はコストカッティングのために安売り業者から仕入れてて、怪しいくらいに安いので安全性にとっても疑問がある。大好きな子供たちが、それを毎日パクパク食べている。そんな風景を見ても何も言えない。これを言いたいけど、言ったら処罰されるかもみたいな。こんなの国家機密でもなんでもないんだけど、ミソもクソも一緒くたになってるから、言える雰囲気ではないという、これが副作用ですね。
当局の皆さんは現役の立法のプロですから、わかってるはずですよ。ある法律を作るときは、最初っから副作用狙いだという場合があるということを。そして、これは露骨にそうであるということを。メインの国防なんか捨て駒というか、それこそ大義名分ですよね。
あ、立法のプロで思い出した、複数の方々が指摘しているけど、条文の書き方が変だよ。「テロリズム」の定義で、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動をいう」となっているけど、これを読むとテロの内容は3つ並列していて、@主義主張にもとづいて国家・他人に強要すること、A不安恐怖を与える目的で殺傷すること、B施設その他の物を破壊することで、ABがテロになるのはわかるけど、@がヘンです。なんかの主義主張(政治上”その他”だから何でもいいことになる)にもとづいて、他人に「強要」っていうけど、これはテロじゃないでしょう?「署名をお願いします」とか「募金お願いします」って言うのも、それが「お願い」なのか「強要」なのかなんて主観で決まるという曖昧さもさることながら、仮にしつこくつきまとって募金を強要したとしても、それは「テロ」ではないよね。いいとこ軽犯罪法、重くて刑法強要罪でしょう。
本当なら、政治主義+(強要目的 or社会不安目的)+(殺傷 or 破壊)になるはずです。犯罪構成要件のうち、実行行為は「殺傷」「破壊活動」であり、「強要」は「強要する目的」という主観的要素でしょう。そうでないと募金もテロになってしまう。法律のテクニカル用語としての「又は(大選択接続)」「若(も)しくは(小選択接続)」の使い方がおかしいという初歩的なことなんですけど。本当は全部「若しくは」で繋がないとならないんだろうけど、そうすると「若しくは」だらけになって読みにくいってことなんかな。だったら、文章そのものを工夫したほうがいいんじゃないか。例えば、「強要し」ではなく「強要する目的」にするとか、「目的」が重なって多少不細工になるけど、だからといってこのままでは、「又は」で三分割されているように読むのが自然であり、そうなると募金のような事例でも「テロ」になるというとんでもない法律になってしまう。てか、そんなトンデモない法律を作りたいのなら話は別だけど。
政治がヘタクソである点
これは自民党のために惜しむのですけど、こんなに政治がヘタクソな政党だったのだろうか?
僕は自民党は好きではないけど、認めてはいます。歴代優秀な政治家もいるし、政治が上手だし。自民というのは、もともと特殊な主義主張があるわけでもなく、政権与党、責任与党というのがアイデンティティだったと思います。空理空論に走らず、常に現実的な落とし所を探し、その持って行き方が絶妙に上手であるという。主義主張がないから、党内にあらゆる国民の意見が集まる。右も左も、田舎も都会も、さらには業界別の族議員までいる。そのなかで、適当に派閥抗争をやって、組閣にあたって、あるいは個々の政策決定にあたって、どこを通して、どこを退けるか、自ずと日本全国の調和点みたいなバランスが出来てきた。
それが余りにも上手だったがゆえに安定しすぎて、水が濁って、利権構造がガチガチにはびこって、機能不全を起こしたので、小沢一郎が飛び出して細川連立政権を作った。そうなったら自民も柔軟に対応し、不倶戴天の敵である社会党(当時)をとりこみ、さきがけをとりこみ、自社さ政権をつくり、さらに何だかんだで賞味期限切れになると、「自民党をぶち壊す」という小泉首相という人材まで持ち出す。自分の党をぶち壊すという公約を掲げられるような議員がいるということは、それだけの人材の幅をもっているわけで、そこが自民の強さだったのでしょう。前回の選挙で自民で投票された方、特に中高年層は、かつての自民、プロ集団としての腕の確かさみたいなものを覚えておられたのかもしれません。
ところが今の安倍さんの内閣は、自民が本来もってるはずの「したたかさ」がないです。側近を仲良しグループで固めるあたりも、都合が悪くなるとお腹が痛くなるあたりも、なんとなく子供っぽいんですよね。かつての自民の「怖い大人の政党」という感じがしない。だからやることなすこと子供っぽい。
数回前のエッセイでも書いたけど、民衆というのは普段は眠れる獅子で、多少つついたり、殴ったりしても起きないです。だからマイナンバー法くらいでは起きないし、消費税増税でも半睡状態でしょう。それは民衆が馬鹿だからというよりも、良く言えば「大人」だから、清濁合わせて呑んでいて、ま、政治家や官僚が多少悪いことするのも、しょうがねえやってくらいの感じだったのでしょう。でも、やり過ぎたらアカンです。やり過ぎたら虎の尾を踏むことになり、むくりと起きてしまう。起きてしまったら面倒くさいです。
だから、起こさないように、正確な距離感の見切りを行うのが優秀な政治家(あらゆるリーダー)の技量だと思うし、かつての自民はそれが上手だったように思います。国民が怒りそうになったら、すかさず消火活動に走り、ガス抜きに走る。で、うやむやにする。
今回は最初から見切りが甘いし、僕も本当にやるの?と半信半疑でした。でもやっちゃったから、へえ?と思ったんだけど、しかし、この法律の内容で、このやり方は無いでしょう。もともと国家強権的なるものが危惧されるのはわかっていたことですし、それを通そうと思ったらソフトにマイルドにやればいい。それをあんなにカタクナに、強権的に通そうとしたら、「危惧されているファシズムではこんな感じになりますよ」という逆宣伝を自分らでやってるようなものでしょう。
それに実際の「副作用」が目当てだったら、廃案以外の修正妥協はバンバンやればよかったのです。そうすれば野党にも花をもたせられるし、国民のガス抜きにもなる。ああ、話の分かる政権じゃないかって支持率も維持できる。特定秘密の範囲だって、もっとビシバシ明確にしたって構わないし、削減してもいい、第三者機関だってガンガン作ればいいんですよ。第三者機関っつっても、どうせ人事権から予算権から握ってるんだから、それをお飾りの存在にすることは幾らでも可能なんだから、譲っておいて、あとで実質的に骨抜きにすればいい。
このようにやり方なんか幾らでもあるのに、なんでわざわざ最悪とも言えるような強行をするのだろうか?ここだけは未だミステリーで、成り立ちうる推論としては、@安倍ちゃんがありえないくらい人間的に無邪気な人であり、且つA官僚さん達はとにかくあれこれ批判されたくないという思いが半ば精神失調を起こすくらいの強さで感じていること、なんだけど、そうなんだろうか。
もしそうだとしたら、これってマザコン症候群みたいなもんじゃん。プライドだけはお高くて、でもちょっと笑われるとメチャクチャ傷ついて、俺様的全能感に浸って、でもそれと同じだけの恐怖体質だから、他人の攻撃は出来るだけさせないようにガチガチに封じ込めたい、、、っていう。それって、まんま「だめんず」じゃん。大体マッチョに憧れる奴って、本質的にマッチョじゃないからなあ。本質的にそうである奴は、そういうことに憧れは持たない。
それかもう何と言われようが作ってしまえばこっちのものだということだろうか。でも、これ、作ったところで、ヤバすぎて実際に適用するのって難しいと思うけどな。@ABの弊害のうち、@の特定秘密法による逮捕なんぞしようものなら、今の雰囲気からいって蜂の巣をつついたような騒ぎになるのではなかろうか。「あまりにも重すぎて使えない伝家の宝刀」というのがあって、今の日本にも破壊活動防止法があります。戦前を彷彿とさせる怖い法律なんだけど、怖すぎて使えない。オウム事件の時にいよいよ使うかってノリになったんだけど、結局使えなかった。そうなると「あのオウムでさえ使えなかった」という妙な先例が残ってしまって、オウム以上(サリン以上)のテロがないと使えない雰囲気になってしまったという。
特定秘密法も、これだけ騒ぎになって、これだけ誰もが知ってるようになると、その轍を踏みそうです。だから、こっそり、にこやかに、マイルドに、雑事といっしょにするっと通せばよかったのに(良くないけど)と、安倍ちゃんのために惜しみます。あとになって、皆が「へえ、そんな法律あるの?」と思うくらいが理想。そして、そのときに知ってもしばらくしたら又忘れるくらいがもっと理想でしょ。
ほんでもって、Aの行政情報の開示も、秘密保護法を理由に不開示にしたら、またぞろ大騒ぎになるから、言いにくいでしょう?本当は、前回書いたように、この法律以外にも守秘義務を設けている法律、あるいは現場での政令・訓令などは山ほどあるんだけど、秘密保護法がこれだけ有名になってしまったら、それ以外の情報だったら全部開示しなければいけないような妙な雰囲気になりそうじゃん。「特定秘密ではないのですが、開示できません」「なんでじゃあ?」と。でも「特定秘密ですから」と言おうものなら、それはそれで「不当じゃあ」って騒ぎになる。
これは法的に闘おうと思ったら結構幾らでも出来ます。まず秘密指定の違法性を争って、行政不服審査法とか行政事件訴訟法とかで裁判起こせるでしょ。裁判がある度に記者会見やってたら、いつまでたっても風化してくれない。それに地裁、高裁で負けても、最高裁までいけるし、又この秘密保護法自体が憲法違反であるとして憲法訴訟になりうる。裁判所は違憲立法審査権を持ってますから。このように、特定秘密を指定して実行する度に、全国各地で裁判が起きたりして、やりにくいでしょうが。
なんか欲張ってあれこれ重装備をした戦闘機が、重すぎて飛びませんみたいな感じで、使えるの?こんな法律?って気もしますね。でも、Bは直接国民と接触して紛争になる機会が少ないから、着々とストーキングは行われ、行政府は疑心暗鬼の巣窟になり、それこそスパイ合戦みたいになってしまうという。意味ないんじゃないのか?って。
ネットでの世論操作の件
今では常識化してますが、ネットで当局の命を受けてせっせと書き込む人達がいると言われています。これは都市伝説ではなく、ネットで調べたら幾らでもでてきますが、例えば
ネット工作員の存在が信じられない方へというサイトでは、公的文書である「資源エネルギー庁のネット工作員仕様書」のたどり着き方が詳細に説明されてます。もちろんこんな言い方ではなく、資源エネルギー庁の入札公告で、
「仕様書」と題する書面であり、そこには、「ツイッター、ブログなどインターネット上に掲載される原子力等に関する不正確な情報又は不適切な情報を常時モニタリングし、それに対して速やかに正確な情報を提供し、又は正確な情報へ導くことで、原子力発電所の事故等に対する風評被害を防止する」と書かれています。
ま、そのこと自体は半分了解可能です。でも半分は「ははあ」って思いますよね。よくこんな文書を公開しておくなあって思いますが、2年前はまだそんな感じだったのでしょう。これはもう氷山の一角で、似たようなことは幾らでもやられているでしょう。昨年の食べログやらせ報道もそうですけど、この種のステルス・マーケティングは案外古く、2006年のアメリカのウォルマート事件、2009年Google日本法人の事件とか表沙汰になっているのもあります(
「食べログ」だけではない ネットでやらせがはびこる理由(日経新聞、2012/1/7)。
で、今回どんなもんかなと思って見てたのですが、やってはりますねえ。なんでそう思うのかというと、Googleで例えば「秘密保護法」で検索した場合、賛否色々出てくるのですが、賛成論の比較的まともなサイトが出てくると(御用学者や評論家に書いてもらったのかどうかは知らんが)、いきなりそれが検索一位になったりするのですよね。
僕もHPで仕事してますから、SEOは大変さは身に沁みてわかってます。なかなか一位は取れないよ〜!本当に良いコンテンツを作って、沢山リンクしてもらって、長い年月積み重ねて勝ち取るか、ロングテールでひっかかってもらうかです。それなのに、発表されたばかりで1日たつか立たないかという時点で一位ないし上位に上がってくるというのは、組織的に短時間に大量によそのサイトでリンクが貼られたことを意味するでしょう。Googleが金もらって検索順位いじってるのではなければ、検索順位のアルゴリズムからいってそうだと思います。
一方反対派は、本当にそれぞれがそれぞれに書いてるから結果的にリンクの集中が少なく検索順位的には不利になる。ものは試しで、検索するときに過去1時間とか過去24時間とかで見ると差が出てきてわかりやすいと思います。2ちゃん系は、大体同じ内容のクローンサイトが山ほどあるから、あるとき突如として似たようなタイトルのサイトが複数出現するから、面白いです。大体、なんであんなクローンサイトが沢山あるのか?ってあたりで不思議ですけど、まあ多くはアフィリエイト狙いの人が一人で複数のサイトを同時に廻していたりするのでしょうけど。
これも逆効果というか、もうちょいうまいやり方もあるんじゃないかという気がするのですが。勿論、なかには真実そう思って書いておられる方も多数いるんだろうけど、意見の被り方が似てるとステマに見えてしまうし、少なくともそういう色眼鏡を通して見られること。第二に、この法案を擁護するロジックはかなり難しく、やろうとしたら読者の考え足らずな部分、はっきり言えばアホな部分に期待するしかない。そうなると、当局の裏の広報部が、国民の知的水準をどの程度に設定しているかが逆に透けて見えるのですね。初級コース、中級コース、上級コースと松竹梅みたいに分かれてて、面白いです。そのあたりが「鑑賞」のツボかと。しかし、読んでてムカついてくるのですけど、こんな稚拙なロジックで騙されると思ってるのかよ?って。文字通り「馬鹿にすんな」って感じですね。賛成論を書こうと思えば、もっと高度なことが書けると思うのですけど。そんなの必要ないってくらい国民の知能程度を低く見積もっているのか、あるいはその程度のロジックしか思いつかないのか。
あと、これって誰が起案したり指示して、日当いくら(一件いくら?)払っているのか、それって税金使ってやってるのか、是非とも情報開示して欲しいのですが、これも特定秘密になるのですかね?あと、僅かばかりのお金を貰って書いた人って、後で”口封じ”されたりするんですかね。だって「実はボクやってました」とか名乗りでてこられたらヤバイでしょう?そのあたりの機密の漏洩防止にはどのような配慮がなされているのか。案外そのへんのバイト雇ってるだけで身上調査もしてなかったりして、いいのかそんな管理体制で。はたまたどっかの企業舎弟に丸投げですかね、その種のスジに”借り”は作らない方が良いとは思うのですが。
まあ、いずれにせよ、これって騒がれれば騒がれるほど当局にとっては不利でしょう。もうここまで来たら法案が通るかどうかなんかどうでもいいっていうか、そういう問題じゃなくなりつつあります。寝た子を起こしちゃったんだから。全国民的に起きたわけではないだろうけど、かなりの数の人が起きたように思います。これによって政府監視の目は以前よりも確実に厳しくなるでしょうし、情報公開ということについて以前よりも意識が高くなったし、ネットであれこれ調べられることを覚えた人も多かろうし。実際にストリートに出た人は、あれはあれで意外と楽しく、知らない人と知り合えるし、一種のレクリエーションになりうるってことに気づいたかもしれない。というかロックフェスとか被災地のNPOとかを通じて、若い人達の方がそういうことに慣れていると思いますし。そういえば伝説のウッドストックも元々はその種の集会だったんだし。
だから、不思議なんですよ。なんでこんなにヘタクソなのだろうかと。案外、そう仕向けるために敢えて安倍ちゃん一座が悪役を買って出たプロレス的な一幕だったりして。だったら千両役者ですけどね。
文責:田村