ネィティブ英語鑑賞会

　以下の文章は、つい昨日（6月29日土）の地元の新聞のコラムにあったものです。

　なんで引用するかというと、「ワールドカップなんかキライだ」という最近のトピックスをユーモラスに書いているので、取っ付き易く、理解し易いからですが、それよりも「これが、いわゆるネィティブ英語」という、ネィティブ独特の一癖もフタクセもある言い回しが面白いです。

　いや、ネィティブ英語、わからんですよ。もう８年もいるにも関わらず、ネィティブ同士で喋られてしまったら未だについていけません。一般的な名詞や言い回しを使ってくれたら分ります。TVでいえばニュース解説みたいな硬い言葉を使ってくれる分には、かなりわかります。これはもう滞在１年目くらいから結構入っていけます。

　何年経ってもダメなのが、TVで言えばバラエティ番組などの、カジュアルな会話。これがもうスラングバリバリだわ、独特のヒネリがはいってるわで、単語そのものはある程度聞き取れるのですが、聞き取ったところで意味をなさない。肝心カナメの部分が、知らないスラングだったり、知らないイディオムだったり、ある種の背景知識を知らないと本当の意味がわからないというヒネリがきかせてあったりという。言語というのは、ネィティブになればなるほど、お互いの共通知識が豊富にあることを前提にして喋るから、イチイチ全部喋る必要がなく、それとなくニュアンスを匂わせるだけで済ませていく傾向があります。だから完璧に聞き取れたとしても意味がわからないという事態が生じるわけですね。

　僕の知人で、こちらの会社に日本人一人ぼっち環境でずっと働いていた人がいましたが、どうしても職場の情報に疎くなり、無駄なことをしてしまうとボヤいてました。とっくにボツになった企画を一生懸命やってていて、上司にもっていったら、「お前、何をそんな無駄なことをやってるんだ」と怒られるという。彼一人だけがボツになったことを知らなかったわけですね。でも、これは別に意地悪で教えてもらえなかったわけではなく、ちゃんと職場内では会話が交わされていたのですね。でも、僕らからみたら、異様に省略されたニュアンス会話でやられてるから意味がわからないという。

　実際、日本語でも、職場でこんな具合に喋ってませんか？「あ、例の企画ね、やっぱり宮田君の予想どおりになったわ」「本社の横槍ですか」「あーあ、やってらんねえよな」「ま、宮仕えの悲しさだわ」「じゃ、そういうことで」「うぃっす」みたいな感じ。「先日提出された工場の第三ラインに関する企画は中止になりました」なんてイチイチ言わないでしょ。だいたい「ボツ」って言葉すらスラングなのに、それすら言わない。おそらくオーストラリアの彼の職場でも同じようなニュアンスで喋られているのでしょう。でもって、彼以外全員、ボツであることを了解し、彼だけ聞いてるけどなんのことだか分からず一人で黙々と仕事を進め、上司に怒られるという悲しい事態になるわけです。ツライですよね。

　英語って（というか言語コミュニケーション一般ですが）、状況によっては、100のうち５％出来たらそれでOKという場合もあるけど（感謝の気持ち通じればそれでOKとか）、98％出来たところで100％でなかったらゼロと同じという場合（上記のような場合）もあります。だから、僕は、日々一喜一憂せざるを得ないのですね。ある日、「おお、俺、もう完璧じゃん」と思える喜ばしい日があったかと思うと、次の日は「俺、全っ然、英語のびてないじゃん」と奈落の底に突き落とされるという。




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　以下のコラムは、一応文章ですし、プロが誰が読んでもわかるように書いてますから、ニュアンス云々の難しさはないので難易度は低いです。おそらくある程度英語やってたら一読して「ふははは」と笑えると思います。それでも、ボキャブラリが多彩ですし、完璧に理解するのはそれなりに難しいでしょう。僕も今調べたりしましたけど、100％は難しいです。

　本当はこの内容を、オーストラリア訛りでべらべらっと喋られたのを的確に理解できないとダメなんでしょうけど、まずは文章からということで、トライしてみてください。自分の英語力がどこまで現地バリバリネィティブ英語に通用するか。Have a go!




OK, someone' s got to say : I'm sick of soccer 　　　　MIKE CARLTON 29/06/02 Sydney Mornig Herald, P26 　Is anyone else out there bored to sobs by the ridiculous carryon over the soccer World Cup? If so, please stand and join me. 　What a footling game it is, with its aimless to-ing and fro- ing and its nil-all draws and its narcissistic superstars collapsing in Hollywood histrionics at the merest whack on the shins. Who cares if Senegal beat Uruguay? Who gives a hoot if Becks does his hair in blond pigtails? As a listener told me the other day, soccer was devised to keep the drongos away from proper sports. 　Even hinting at any of the above is politically incorrecet, of course. There will be fury in the Latte Triangle bounced by Balmain, Glebe and Leichardt, and I am ready for the barbs of those fellow columnists who have embraced soccer as evidence of their effortlessly multicultural Weltanschauung. I am braced for the torrent of outraged letters honking about rugger-buggers and　North Shore snobs and Harris tweed jackets with leather patches. 　And I don't care, for the rugby Test season is upon us once more. Tonight at Stadium Australia the world champion Wallabies meet France, the champin of the Six Nations. God will be watching. 適当な訳 もうそろそろ口に出して言おう：サッカーなんかキライだ！ 　読者のなかで、最近のサーカーのワールドカップの馬鹿騒ぎに泣きたい位ウンザリしてる人はいないだろうか？キミは僕の仲間だ。 　大体、なんという詰まらないスポーツなんだ、あれは　-　意味なくコートを右往左往したかと思えば、いっつも０対０で点なんか滅多に入りゃしないし、それにナルシスティックなスーパースター達が、スネをコツンとぶつけただけでハリウッドばりの名演技で転げまわってたりするんだぜ。セネガルがウルグアイに勝ったからといって、それがどうしたというのだ。ベックス（ベッカム）がブロンドをおさげ髪にしたからって誰がそんなこと気にするものか。以前あるリスナー（注：この著者はラジオのパーソナリティである）が語ったところによれば、サッカーというのは、他のまっとーなスポーツから、アホどもを引き離すために開発されたスポーツだそうだ。 　ああ、今言ったことのどれか一つでも、それもちらっと匂わす程度であっても、それは「絶対に言ってはイケナイ」ことなんだろうな。わかってるよ。特にバルメイン、グリーブ、ライカードで区切られた「カフェラッテ三角地帯」では、もう激怒の嵐だろうな。サッカーをして、彼らのお手軽なマルチカルチャルな「世界観」の証として抱きしめてるような、仲間のコラムニストからも痛烈な非難を食らうことも覚悟してるさ。ああ、ラグビー馬鹿とか、ノースに住んでるスノッブな俗物とか、皮パッチを当てたイヤミな奴とか書かれた怒りに満ちた読者の投書が殺到するのも覚悟してる。 　だけど、再びラグビーの国際試合のシーズンが巡ってきたからには、そんなこと気にしてなんかいられない。今夜は、スタジアム・オーストラリアで、ワラビーズ（全オーストラリア軍）が今年のSix Nationの覇者フランスと対戦するんだもんね。神様だって、こっちの方が気になるはずさ。



　いかがでした？話題が話題だけに、笑えたのではないでしょうか。特に個人的には、「スネをちょこっとぶつけただけで〜」というあたりで笑ってしまいました(^^*)。

　以下、blow by blow（少しづつ）、このネィティブ英語を「鑑賞」してみましょう。

　Is anyone else out there bored to sobs by the ridiculous carryon over the soccer World Cup? If so, please stand and join me.

　out there　：　これはスラングでもなんでもなく、普通によく使われます。「外に」「向こうに」という具合に、「ここでない向こう側」という具体的に場所的な意味で使われるのがモトモトなのでしょうが（Is anyone out there? 誰か家の外にいるの？お客さん？）、そこから転じて「ひろく世間一般では」「そっちの方では」「チマタでは」というやや抽象的な意味でも使われていると思います。

　あんまり日本の英語学習では出てこないけど、現場の日常英語ではとてもよく使う言葉シリーズの一つかもしれません。場所的指示をする頻出英単語としては、over there, over here, up there, up here, down there, down here など、日本語にしてしまえば「あっち」と「こっち」になっちゃうんだけど、over, up, downなどをくっつけて、よりニュアンス豊かに言うのが普通です。ちなみに、upstairs,downstairs (二階、上の階、下の階｝は、もしアナタが二階建て以上の家にホームステイすることになったら到着後5分以内にすぐに使われだす日常超必須単語になるでしょう。　


　be bored to sobs : イディオム的には、bored　to death （死ぬほど退屈）というのがありますが、deathをsobに著者が意図的に変えているのかも（確信なし）。sobは　｢すすり泣く」「むせび泣く」という意味です。「詰まんないようといって、しくしく泣き出す」ということですが、いくら退屈でもそれですすり泣く人はいないでしょう？と思われるところ、それが逆に馬鹿馬鹿しくもユーモラスな表現になってるじゃないかな？と思います（確信なし）。

　the ridiculous carryon　：　carry　onは　続行、持続、営み、大騒ぎなどの意味。ridiculous　（馬鹿な）とあわせて「馬鹿騒ぎ、乱痴気騒ぎ」と訳すべきか。それだけのことなのですが、自分で英文書いてみろといわれたら、ここで　carryon　を思いつくかどうかは疑問です。おそらく、event とか当たり前で詰まらない単語を使ったり、phenomenonとかちょっとハズれた硬い用語にしてみたりするんじゃないかな。event に比べて　carryonは、全体的な包括感や「そこのけそこのけ｣的な現在進行的な躍動感があるように思います。そのニュアンスまで表現しようとするかどうかで、単語選びのセンスが問われるのでしょう。「馬鹿騒ぎが連綿と続く」という躍動的なニュアンスを出しつつ、その反射としてそれだけに苦々しさも一層募るというあたりを出したいのでしょう。

　そしてまた、ここで　the　を付けるかどうか悩むんですよね。ここらあたりのtheの使い方はいつまで経ってもわからんです。さらに、そのあとの前置詞が　over　なのも渋い。これ、「of 大好き日本人」としては of　にしがちですし、ちょっと慣れても　withあたりにするのでは？そこを　over　をもってくるのが英作文のワザだと思います。学ぶべし。




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　What a footling game it is, with its aimless to-ing and fro- ing and its nil-all draws and its narcissistic superstars collapsing in Hollywood histrionics at the merest whack on the shins.

　footling　：　口語で、つまらない、馬鹿馬鹿しい、くだらないの意味。この単語、僕のボキャにはなかったです。最初、サッカーという話題だし、footという語幹だから、footlingというのは「足技主体の」という意味ではないかという誤った推測をしてしまいました。この種のいい加減な推測→誤った語義の思い込みは結構気づかずやってるところで、やはりコマメに辞書をひくのは大事なことですな。ただ、著書は、フットボールと、footleをナニゲにひっかけてるのではなかろうかという気もしますが、確信なし。

　to-ing and fro- ing：　これは実はイディオムであります。大体見た感じで意味がわかるし、それであたってるのですが、辞書をひくと載ってます。行ったり来たり、右往左往という意味で、to and fro とも言うそうです。

　nil-all　：　こちらでスポーツ番組を見ている人はおなじみでしょう。ゼロのことを　nil　といいます。「1対ゼロで日本の勝ち」というときは、one - nil, Japan とか言います。

　ちなみに辞書をひいてたら気がつきましたが、nill　とＬを重ねると「好まない」という古語になるそうです。そこから、"will he nill he"という古い言い回しがあり、さらに発展して、willy nilly (これはよく使う＝否応なしの、出たとこ勝負の）になるそうです。




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　narcissistic superstars collapsing in Hollywood histrionics at the merest whack on the shins

　個人的にウケたくだりです。histrionicは、「芝居じみた、わざとらしい」という意味です。ヒストリアニックと読む。一瞬、ヒストリー？歴史？と思ってしまうのですが、histrion = actor という意味です。歴史はhistoryで、tの後にoが入ります。in Hollywood histrionics　の　in　も、なかなか習得しにくい前置詞ですね。

　whack は強く打つこと。 なお、スラングでは「殺す」という意味もあり、よく刑事犯罪モノの洋画で出てきます。ちなみに、wackyは「風変わりな」という意味で、ときどきこちらのTVのお手軽番組で、"World wackiest video"（「おもしろビデオ大賞」みたいな）があります。

　the merest　は、mere （ほんの〜、単なる）の最上級 merestのように思えますが、文法的に言うと、もともとmereは限定用法にしか用いない限定・強意の形容詞ですので比較変化しません。したがって、the merest　も比較級のように見えますが、単なる「強調」の意味とすべき、、だそうです。僕も今調べながらこれを書いていて、今更ながら「なるほど」とか思ってます。勉強になるなあ(^^*)。でも、まあ、こんな難しい文法知識を使わなくても、「より単なる〜、最も単なる〜」なんてのは意味的に変ですから感覚的に分かると思います。

　shin　：　スネ。別にどうということのない平素な単語ですが、意外と知られてない単語。人体各所の単語は、head, leg, shoulder, hand...なんかは知ってるのですが、「ふくらはぎ」「足の裏」「こめかみ」「まつげ」とかになると怪しくなったりします。

　総じて言えば、この著者のようにラグビー大好きで、ラグビーのようにフルコンタクトの激しいスポーツを見慣れている人には、サッカーの（敵の反則アピールという戦略もあるのでしょうが）すぐにグランドに転げまわってる姿が白々しくも、大袈裟に見えるのでしょうな。





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Who cares if Senegal beat Uruguay? Who gives a hoot if Becks does his hair in blond pigtails?

　Who cares　：　これは定型句。直訳すれば「誰が気にするか？」ですが、「誰も気にしない、知るもんか、構わない」という意味でよく使われます。

　gives a hoot　：　アメリカ的には、"give a shit"とかいうのでしょうね。洋画なんか見てると年中言ってる。「気にしない、構わない」という意味。

Becks does his hair in blond pigtails　：　Bekcsですが、これはベッカムの愛称でしょう。ベッカムはブロンドモヒカンなんだけど、敢えて「ブロンドのおさげ／三つ編み」と間違えているあたりのニュアンスで、「そんなもん知りたくもないね」というアンチ感情を出してるじゃないかと僕は思います。


As a listener told me the other day, soccer was devised to keep the drongos away from proper sports.

　drongo は、オーストラリアのスラングで、うすのろとか間抜けとかいう意味。しかし、物凄いものの見方ですな。他のまっとーなスポーツをアホどもから守るために、サッカーを開発してアホを吸引させているという。確かに、言われてみれば、フーリガンとかが暴れるのはサッカーがメインですよね。




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　Even hinting at any of the above is politically incorrecet, of course.

　politically incorrecet　：　politically correct, PCについては、その微妙なニュアンスが分からないとわからないと思います。以前、 たしかどっかで解説しておいたような、、、ああ、ここをクリックして見てみてください。簡単にいえば、言っちゃイケナイという「お約束」になってる事柄です。

　the above　：　「上記の、上述の、前述の」。どってことないようだけど、文章書くときなんか知っておくと便利なフレーズだと思います。｢以下」は、the following, belowなど。


There will be fury in the Latte Triangle bounced by Balmain, Glebe and Leichardt,

　これも笑ったのですが、地元民でないと分からんでしょう。ライカードは有名なイタリア人エリアです。ラッテというのは、ミルクの多いイタリアコーヒー、カフェラッテでしょう。「ライカード、バルメイン、グリーブで仕切られた、イタリア系移民の多い、通称カフェラッテ三角地帯では」という意味だと思います。ただ、バルメインやグリーブにはイタリア系は特に多くもないとは思います。とくにバルメインは、バルメインタイガースというラグビーチームがあったりして、ラグビー人気が高いと思うので、著者の真意がいまひとつ良くわかりません。別にイタリア系に限らず、このエリアはシティに近いのでヤッピー層も多く、またお洒落なカプチーノとかラッテとか好んで飲みそうでもあるし、さらに、下に出てくる「安直なマルチカルチャリズムを唱えるコラムニスト」という流れからして、単にイタリア系だけの意味で言っているのではないのかもしれません。まあ、でも、もともとがギャグだから、そこまで正確に考えなくてもいいのかもしれませんが。




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I am ready for the barbs of those fellow columnists who have embraced soccer as evidence of their effortlessly multicultural Weltanschauung.

　barbs　：　辛辣、痛烈な言葉という意味でしょう、barbはトゲの意味。鉄条網のことを barbed wireとかいいます。

　Weltanschauung　：　これ難しいです。「世界観、人生観」という意味ですが、スペルや発音からしてドイツ語系かも。わざわざ難しい言葉を用い、しかもWを大文字にしていながら、effortless（お手軽な）という相反するような形容をしているあたりから、著者の言いたいニュアンスを推測するに、「言ってることは薄っぺらなくせに、やたらエラそうに難しい言葉を使いたがる評論家センセイ」という揶揄がこめられているような気がします。確信はないけど、ほぼ間違いないと思います。





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I am braced for the torrent of outraged letters honking about rugger-buggers and North Shore snobs and Harris tweed jackets with leather patches.

　be braced for　：　決意を固める、覚悟している、という意味。

　honking about　：　honkは車の警笛とか、鼻をかむ音とかいう意味らしいですが、まあ、ここではクラクションのようにギャンギャン非難するというあたりの意味でしょう。

　rugger-buggers ：　ラグビー狂、ラグビー馬鹿、あたりの意味でしょう。

　North Shore snobs　：　シドニーのノース（比較的裕福なエリア）に住む、スノッブ、つまり俗物達

　Harris tweed jackets with leather patches　：　これが一番「？」でした。Harris tweed　というのは、モノの辞書によると、スコットランドのイチ地方の特産品らしく、手織りツィードのことで、商標にもなってるようです。まあ、「西陣織」「大島紬」みたいな感じでしょうか。

Lonly PlanetのScotland版、Harris地方の紹介のなかで以下の文章がありました。
　Harris is also famous for Harris Tweed, high-quality woollen cloth, some still hand-woven in islanders' homes. The weaving of the tweed originated on the Amhuinnsuidhe Castle estate. The castle was built in 1867 by the Scottish architect David Bryce for the Earl of Dunmore, and it was the Dowager Countess who encouraged the production of the local tweed.
　なるほど、名産品のようです。しかし、それだけだったら何のこっちゃか分かりません。そこでもう少し調べると、リズミングスラング（韻を踏んだスラング言い回し）で「いやな奴（weed）」というのがあるそうです。

　「なるほど、これか！」と思いきや、しかし、それだけだったら「レザーのパッチを当てたジャケット」なんてわざわざ書いてある部分が無駄になるわけですな。

　むむむ、ここから先は、ワイルドゲスなんですが、もしかしたらラグビー好きなオッサンというのは、本当に、皮のパッチを当てた（肘とか肩とか）ジャケットを好んで着ている（or 着ているように思われている　＝日本で「競馬のオッサン＝耳に赤鉛筆」みたいな図式）のではないか。それと、ハリスツィードとをひっかけているのではないか？このあたりが、非ネィテイブの限界なんですね。「競馬のオッサン＝耳に赤鉛筆」なんてのが、どんな優秀な和英辞典にも載ってないのと同じように、その土地で生まれ育たないと分からないセンスなんだと思います。

　しかし、こんなところではメゲずに、さらに調べます。今度は、インターネットでHarris　Tweedのshopに行ってみました。なるほど、ここのスポーツジャケットのコーナーの写真なんぞを見てますと、いかにもスポーツ大好きなおっさんが着そうな感じですな。分かる気がします。

　ところがここでハタと迷ってしまいます。もう一度さっきの文章を読み直すと、”I am braced for the torrent of outraged letters honking about rugger-buggers and North Shore snobs and Harris tweed jackets with leather patches.”となっていて、ハリスツィードというのが、�@著者に対する罵り言葉の一例として「ラグビー狂」とともに「ハリスツィードを着たラグビー狂いのオヤジ」という文脈で出てくるのか。つまり、Harris　Tweedはhonking about にかかるのか。それとも、�A著者が覚悟しているのは幾つかあって、抗議の投書の 他に「ハリスツィードを着た連中」であるということ。つまり、I am braced for the letters and people who wear Harris Tweed. という意味で、braced for にかかるのか？です。

　さらに、North Shore snobs　というのが途中に並列的に入ってくるので、益々わからないわけです。「ノースの俗物」というのが著者自身なのか、それとも前述の軽薄な文化人コラムニストのことを指しているのか？

　これは論理的にはどっちか良くわかりません。一応手がかりとしては、純粋並列だったら、カンマ、and になる筈で、and, and でつなぐというのは、最後のandは構造的に違う文脈に属していそうな気もします。つまり「ラグビー狂、ノースの俗物などと罵る手紙」と「ツィードを着た連中」という具合に（A + B + Cではなく、(A+B) and Cではないか）解釈すべきか？とか。しかしね、このあたりの意図的に「ムチャクチャ書いてる」というラフな文体のニュアンスからすると、そうそうしれっと技術的に割り切っていいものかどうか、疑問も残ります。

　あと、この人、何処に住んでるんだろう。もしノースに住んでいるのでなかったら、そして、それが公知の事実だとしたら、また手がかりもあるのですが。

　結局、キーを握ってるのがHarris　Tweedで、これがサッカーファンの属性なのか、ラグビーファンの属性なのかだと思います。

　ここで再びLonly　Planetを見てみると、

　The Scots love their games, watching them with fierce, competitive dedication and identifying closely with teams and individuals competing both locally and internationally. The most popular games are football (soccer), rugby union,

　とか書いてあるわけで、Harris　Tweedを生みだしたスコットランド人は、サッカーもラグビーも大好きなのですな。これでは決め手になりません。その他いろいろ調べてみましたけど、ハリスツィードを着てラグビー観戦にいく様子を書いている小説の一節なんかがあったりして、やっぱりラグビー系かなあ？と傾きつつも全然確信持てません。ギブアップです。誰か分かる人、教えてください。


　しかし、こういうところで難儀すると、プロの翻訳家の人々のご苦労がよくわかります。翻訳って、95％くらいは結構スラスラでてくるように思うのですが、最後の５％が超難物だったりすると思います。翻訳家を志す方は、このあたりを気軽に聞ける、優秀なネィティブブレーンを沢山作っておかれるといいと思います。

　これ、ネィティブだったら誰でもいいわけではないです。どうも僕が感じるところ、英語世界というのは、日本語世界よりもネィティブ間の英語や習俗知識のバラツキが激しいように思います。ネィティブでも知らん奴は結構いますし、英語表現などでも、あるネィティブは「みんなそう言ってるよ」といい、別のネィティブは「そんな言い方誰も使ってない」と言ったりします。どっちなんだよ？と悩みますが、どちらも同じ年頃のシドニー生まれのシドニー育ちだったりするからワケが分からんです。

　ですので、同じネィティブに聞くにしても、非常に知識が広範で、柔軟にモノを考えられるバランス感覚の良いネィティブに聞かないととんでもないミスリードをされる場合もあると思います。そこらへんがちょっと恐いです。逆に言えば、日本人がなんとなく考えるほど、ネィティブだったら皆同じように知っていて、同じように考えているわけでもないのでしょうね。





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　And I don't care, for the rugby Test season is upon us once more. Tonight at Stadium Australia the world champion Wallabies meet France, the champin of the Six Nations.

　これは文章的には全然難しくないのですが、「知ってないとどうしようもない」固有名詞のオンパレードです。

　Test ：　クリケットやラグビーの国際試合のこと

　Stadium Australia　：　オリピックのメインスタジアムのこと。シドニーオリンピックで開会式とかやったところですね。

　Wallabies　：　ラグビーユニオンのオーストラリア代表チームの名前。ちなみに、ラグビーリーグの方のオーストラリア代表はカンガルーズ。

　Six Nations：　ヨーロッパのラグビーのリーグ。最初スコットランドとイングランドだったのが段々増えてきて、フランスについでイタリアも参加して、Siｘ　Nationsになったとか。




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　とまあ、こんな感じです。

　でも、この文章、もともとが娯楽用のユーモア雑文で、しかも本体のコラムのなかのさらに付けたし的な「ひとくちコラム」に過ぎません。たったそれだけの、あってもなくてもどっちでも言い程度の軽いコラムであっても、真剣に理解しようとするとかなり骨が折れます。 全然娯楽になってないって(＾＾*)。

　ちなみに、この著者であるマイク・カールトン氏は、毎日ABCラジオ（AM７０２）でパーソナリティをやってます。午後の番組だったかしら、、、と書いてから間違いに気が付きました。ABCで午後３時からやってるのは、Richard Glover氏でした。マイク氏は２UE・９５４でした。

　もうひとつ、このコラム本体の内容は「いまこそ、オーストラリアはイラクに進軍しよう」という文章です。こっちの方がヒネリ方がキツいギャグで出来てますから、難易度はもっと高いと思われます。http://www.smh.com.au/handheld/articles/2002/06/28/1023864655882.htmにあります（と思ったら、しばらくしたらなくなってしまいました）。


　写真・文／田村
　写真: QVB