オペラハウス
96 12/6更新
シドニーには面白いところ、美しい風景は沢山ありますけど、「世界中ここしかないか?」と言われたら別にそんなこともないです。ダーリングハーバーの水族館もサメが泳いでいていいですけど、大阪天保山の海遊館いけばジンベエザメ見られます。ハーバーブリッジも壮観だけど、「でかい橋」なら本州四国連絡架橋でもいい。チャイナタウンも面白いけど、中国行った方がもっと面白いでしょう。コアラも日本の動物園にいます。
まあ、そんなこと言えば、この世の「観光地」の99.9%は「他に代替のきく」ところなのでしょう。「それを言っちゃおしめえよ」なのかもしれませんが、当事者や地元経済の思惑はともかく、事実は事実。
そんななかで、見損なったら、絶対に他の場所ではリカバーできないのが、オペラハウス。
ただし、早合点して欲しくないことは、だからといってオペラハウスが、他のシドニーのアトラクションを圧して素晴らしいというわけではありません。なぜなら、「ここにしかない」珍しさやユニークさが、唯一の価値というものでもないですから。
それでも、このケッタイな建物は、シドニーに来られたならば一見の価値はあります(わざわざこれを見るためだけに、十数万の飛行機代払って来るまでのことはないですけど)。シドニー湾に突き出た先端地に作られており、左手に巨大なハーバーブリッジを目近に臨みます。風景の美しさや海風の爽やかさは、仮にここにオペラハウスがなかったとしても、行く価値はあるでしょう。立地には目茶苦茶恵まれているということです。
★→場所を確認したい人は、ここをクリックすると地図が出ます。
当初「建築不可能」とさえ言われたらしい、貝殻をモチーフにした奇抜なデザイン力がこの建物の全てと言ってもいいでしょう。鋭角と曲線がうまいこと配置され、遠目でも、この「白いギザギザ」は一発でわかります。「楕円球体を縦半分に切った」ような形の屋根が、大小合わせて12組み合わさっているので、見る位置によって丸みや鋭い角度が異なって強調され、印象も随分違います。
近づいてみると、思った以上に巨大。仰ぎ見ると、紺碧の空に、白い貝殻が突き刺さっています。「真白」と言いたいところですが、いかんせん風雨に晒されてでしょうか若干黄ばんでる部分もあります。ものの本によると「屋根には白とベージュのタイル....」と書かれているので(実際そうなのですが)、もともとそういう色なのかもしれませんが。
以前、地元の新聞で読んだだけのうろ覚えの記憶ですが、この建物をデザインしたデンマークの建築家の当初の構想は100%実現していないとのこと。なんでもゴタゴタがあったらしく(政権が変わったことによる予算問題らしい)、建築途中で本人は国に帰っちゃって、他の人間が引き継いだのだけど、オリジナルの構想の深さは表現しきれてないそうです。読んでみると、「ほお、そんなことまで考えて設計したんか」という。
例えば、オペラハウスにはサーキュラーキーという波止場から歩いていくのですが、近づくにつれゆったりした階段を昇って行く仕掛けになってます。坂がゆるやかだからそんなに感じないけど、結構な高さまで昇ります。するとどうなるかというと、どんどん視界が開けて、波止場やその向こうの町を遠くに見下ろすようになる。そして視界前方は、空とオペラハウスだけを見上げるようにようになる。これをオペラが開催される夕刻に行くと、「下界」から離れ、「天上への階段」を昇りつつ、ライトアップされた非日常的な劇場に向かうというスチュエーションになり、オペラへの期待や雰囲気はいやがうえにも盛り上がるというカラクリだそうです。言われてみれば、「なるほど、それであそこに行くと不思議な解放感を感じるのか」と思います。まあ、これは「広々とした所に大きな建物が建って」いればどこでも同じという気もしますが。
この構想は実現されてますが、実現されてないのは、館内の家具や調度(階段の手すりとか)、あるいは屋根の下の部分をガラス張りにしちゃうのは当初の案にはなかったそうです。実際、オペラハウスも中のロビーは、普通の感じで、全然どってことないです。
現在、「欲に目がくらんだ(と言われている)」政府や業界が、サーキュラーキーとオペラハウスとの間の回廊のような敷地に、巨大なホテルや観光施設を建築しようとしてます。あんな最高立地を遊ばせておくのは勿体無いということなのでしょうが、まあ、そうなるとさきほどの「天上への階段」の雰囲気もかなり減殺されてしまうでしょう。これ書いた後、実際に行って見てきましたが、工事もかなりすすんでいて、もう音はうるさいし、やっぱり雰囲気ブチ壊してるように感じました。特に、昔はサーキューラキーからの回廊がスッキリしていてオペラハウスまで見通せたのですが、いまではうねうね曲がっててかなり近づかないと見えない。だから、ゴチャゴチャした都会→広々とした空間→さらに階段を登って天へ、という心理プロセスが、角をまがったらいきなりポコンとオペラハウスが飛び出すという、ひょうきんな段取りになっちゃってて、階段昇ってても何となくせせこましい感じがして、台無しです。「くだらない工事してるなあ」と思います。皆が怒るのも無理ないわ。
シドニー在住の女性作家が書いていたのを孫引きで読んだ記憶がありますが、オペラハウスの最高の楽しみ方は、夕刻、オペラに行くため、バルメイン/Balmainという町からフェリーに乗りサーキュラーキーまでいくというもの(15分程度で着く)。道中イルミネーションの美しい摩天楼を眺めるナイトクルーズになるのですが、船が近づくにつれ、ハーバーブリッジの下ごしにライトアップされたオペラハウスが見えてきて、段々近づき、その横を通って行くというものです。僕はやったことはないですが、「なるほど、そりゃ盛り上がるわ」と思います。
★→オペラハウス(その2)へ進む
★→観光ガイドトップに戻る
★→APLaCのトップに戻る