今週の1枚(02.12.09)
ESSAY/ 日本再生計画
師走の日々、いかがお過ごしでしょうか。
日本とは趣を異にするこちらの師走も、それはそれで大分と日常風景となってきました。こちらの師走は、どことなく日本の7月あたりに似ているような気がします。日本の7月は、上旬くらいに梅雨が明け、京都では祇園祭のある頃、初夏から盛夏に脱皮した太陽が踊り出てきて、ド快晴の日々が続きます。いわゆる「梅雨明け十日」ですね。そして学校は徐々に夏休みに入り、会社でも早めに夏休みを取る人が出てきたりして、町はゆっくりと静かに眠り始めます。太陽が最盛期の透明な凶暴さを取り戻す一方、町の物音が徐々に途絶えていく、静かになっていく感じが似てるような気がします。この”光に満ち溢れた静けさ”みたいな感じが、ちょっとばかり似てるような気がします。
今年のこちらの師走は、乾いています。そして相変わらず好景気でバブっています。
太陽が中天にある頃、上から頭を押さえつけられるような陽射しをうけて郵便受け目指して前庭を歩くとき、足元ではパキパキ音がします。枯木、枯葉が乾燥しきっているからです。そして郵便受けを見るとクリスマス商戦のチラシがこれでもかと入っています。去年よりも今年の方がチラシの量は多いかもしれません。肝心な郵便物は、その殆どがクリスマスカードだったりします。ああ、今年もクリスマスカード、書かなきゃ、、、。せっかく日本を離れて面倒くさい年賀状の風習から逃れられたと思ったら、今度はクリスマスカードだもんね。どこでもやるこた一緒なのね、、、
今年は去年よりも、景気はより爛熟していると同時に、大気の乾燥の度合も激しいように思います。とにかく雨が降らない。まあ全然ってことはないけど、たまに降るけど、でも続かない。いつもだったら2週に一度は芝刈りをしなきゃどうしようもなかったのに、今回はまだ一度もしなくてもいいです。そろそろ咲き始めたアジサイが可哀想なくらい。だから、山火事、多いです。去年はクリスマスに勃発して94年以来の災害と言われていたのが、今年は既に11月段階から燃えています。こちらの山火事の状況は、去年もご報告しました(essay35:山火事・Bushfire 2001-02)。
さて、筆慣らしの天気の話はこのくらいにして、他の話題を。先日、馬鹿話をしておりまして、そのなかで色々とアホアホな「日本改造計画」が出てきました。面白かったので、それをもとに加筆してお届けします。
日本というのは東京・大阪などの大都市に人口が集中していて、大都市では土地不足+通勤地獄+自然環境劣悪=ストレス高し、という構造になっている反面、地方では過疎化が進行し、死に絶えている村が毎年沢山出てきているという、ものすごいアンバランスがあります。平成2年に10年間の時限立法で過疎地域活性化特別措置法というのが制定されたそうですが、そのときの過疎地域市町村は1,199団体、関係都道府県は45団体だといいます。「過疎関係都道府県45団体」ってすごいですよね。要するに殆ど日本全部じゃん?って。いわゆる過疎といわれるエリアだけで日本の国土面積の半分を占めるようです。一方、大都市エリアの人口集中は、これはいつも引用している統計ですが、国土面積のわずか3%に人口の70%が押し合いへし合いしているという。
やっぱり、これ、どう考えても変です。部屋数100部屋の学生寮があり、入寮者が100名いたとします。ひとり一部屋入ればよさそうなものなんだけど、わずか3部屋に70人も住んでいる。まずこれが超異常。入れるわけないっつーの。でも入ってる。もうギューギュー詰めで頑張ってる。日本は過密都市で、不動産環境が悪くて、通勤時間が長くて、、とかいってるのは、この3部屋だけの話です。でも70%の人がそこにいるから、あたかも日本全土がそうなってるかのように勘違いされてます。でもって、あとの97部屋に残りの30人が散らばって住んでいて、50部屋以上は誰も住んでおらず廃屋状態になっている。でもって、3部屋の大都市の環境やインフラ整備に途方もない税金を注ぎ込み、一方では50部屋の過疎対策に10年間に45兆円くらい注ぎ込んでいる。こんなん金がいくらあっても足りないです。どんなに金を注ぎ込んでも3部屋に70人という居住環境が快適になるわけないですよ。
ここまでは、まあ、常識的な前提ですが、じゃあどうしたらいいの?論ですね。これも答は見えてますし、誰でも知ってます。大胆な地方分権の推進により、各地域が独自性を発揮して、魅力ある地域作りをして人を集め、経済的に自立し、結果として日本人口のアンバランスを是正すべし、と。そんなことは誰でも知ってることなんだけど、それがとても難しいことも周知のとおり。大体、中央官僚が権限を手放さないから、大胆な地方分権っていってもなかなか進まないです。また手放したところで、自主財源が少ないからやることが限られてしまうし、地方にいけばいくほど、地元のボスとその取り巻きというジジー連中が仕切ってるからドーンと面白くならない。でもって、「うーん」となってるわけですね。で、地道に頑張ってる人は頑張ってるし、それなりに動きもあるし(長野県とか)、無関心な人は全然無関心。
そこで我々がコントリビュート(貢献)できることといったら、百兆円くらいポーンと寄付して「これを使いなさい」なんていえるわけないから、与太なアイディアだけです。「こうすると面白いんちゃうか?」ですね。んな与太話をしていたわけです。
まずですね、一気に地方分権といってもなかなか進まないでしょうから、とりあえず航空行政権を下さい。一市町村の独断で国際空港を作れるようにする。とんでもないド田舎に、いきなり国際空港を作るわけです。ケアンズ式村おこしをやるわけです。
ケアンズというオーストラリアの東海岸北部にある片田舎は、日本人観光客だったら誰でも知ってますが、平均的なオーストラリア人は知りません。その下のタウンズヴィルという町の方がはるかに有名です。「ケアンズ、どこそれ?」てなもんです。もともと人口なんかろくすっぽいない、サトウキビ畑が延々続くだけの超ド田舎に、いきなり国際空港を作ってしまいました。「こんなんで客がくるんか?」と思った人も沢山いたでしょうが、道さえあれば人は来るわけです。「シドニーやブリスベンから離れてる」という国内的に僻地であっても、国際的には「アジアに近い」という抜群の立地になるわけです。日本人をはじめアジア人は、一人で歩く海外旅行に慣れてないから、要するにほとんどパックツアーです。彼らに自主的な場所選定能力なんかないです。道があるか、パックがあるか、それだけです。だから道さえ作っちゃったらある程度人は来る。
そして、ド田舎であることが逆に幸いします。誰だってオーストラリアに都会性を求めません。そんなの欲しかったらニューヨークやパリにいきます。シドニーやメルボルンなんか中途半端に都会だから観光しても面白くないです。もっと分かりやすいインパクトがあるのは、「すっげード田舎」であることです。国内的にド田舎であることは、国際的には「雄大な自然」と読み変えられます。従来、雄大な自然にアクセスするのは大変でした。普通にやってりゃ、ケアンズなんかブリスベンからバスで30時間以上かかります。とてもじゃないけど観光客なんか来ないです。ところが、国際空港一本作れば、一気に解消です。それどころか、アジアからやってくる場合、ブリスベンよりも2時間早く着いちゃう、着いたらそこが大自然のド真中、になるわけです。このように、まるでオセロのように、手持ちのマイナスを一気に全部プラスにしてしまう妙案だったりするわけです。それに国際空港っても、観光客以外に来ないんだから大した設備もいらんです。またそこらへんのサトウキビ畑をぶっ潰せばいいわけですから、土地代なんか無料同然。
観光はいいです。車やパソコンは一人買ったら一つ物がなくなりますが、富士山なんか百万回見ても減りません。それこそ「減るもんじゃなし」というやつです。だからオーストラリアでも観光大臣というのがいるくらいですし、日本のワーホリが殺害されたら大臣がぶっ飛んできてメディア対策に必死になります。そのくらい力を入れてます。これは他の西欧諸国でも同じだと思います。
オーストラリアが出来て日本が出来ないことはありません。
国内的には「東京から離れている」ことをもって僻地扱いされますが、国際的に言えば、諸外国から一番距離的に遠いド田舎は東京ですからね。目の前には海しかないし。長崎県とか沖縄とかの方が、滅茶苦茶立地がいいわけです。アジアに近いし。アジアの人達、日本が好きです。シドニーの日本レストランを見たらわかるように、日本人のお客さんばっかりだなーと思ったら全員中国語喋ってたりします。日本人なんか殆ど来ない日本食レストランも結構あります。チャイニーズ、意外と日本食好きです。宣伝次第では、いくらでも客を呼べるような気がしますよね。だから、あとはアクセスなんですね。
というわけで、たとえば岐阜県の高山あたりに国際空港を作ります。あそこは近所に、白川郷という世界遺産に指定された合掌造りで有名なエリアがあります。あーゆーものが好きな人は、世界に5億人はいると思います。5億人という数値に深い根拠はありません。「結構沢山いるはず」というくらいの意味です。あんな山奥に国際空港が作れるのかどうか分からないですが、そんなこと言えばネパールやスイスはどうなるんだ?ってことになりますから、今の技術だったらやってやれないことはないでしょう。なに、朝に3便、夕方に3便発着するくらいでいいです。アジアのハブであるバンコクから直接就航したら、ディカプリオ主演の映画「ビーチ」のように、あのあたりにタムロっている西欧系の連中もきます。日に3便でも1000人はきます。1000人が1万円づつ使うとしても、毎日1000万円金を落としていってくれます。
さらに白川郷にひっかけて、ニューエイジ系の産業を興します。とりあえず何でもかんでもZEN(禅)とつけておけばいいです。ZEN HOTELとか、ZEN レストランとか、ZENタオルとか、ZENクッキーとか。ワケのわからない漢字Tシャツも沢山揃えておきます。「本場の漢字Tシャツ」ということでプレミアつけます。もっとディープな人のためには、REIKI(霊気)とか、SHIATSU(指圧)とか取り揃えます。岐阜県知事はじめ県のエライさんは、インドにいってサイババ・インダストリーの構造を勉強してきてもらいます。
空港作るには巨額の費用がいるぞという意見もあるでしょう。金は要ります。だから借ります。どこから?国からじゃないです。機をみるに敏な外国の機関から借ります。というか、空港そのものを外国の連中に作らせてしまってもいいですよね。シドニー空港だって、売却されたんだったけな?もしされてるなら香港かどっかの華僑系の会社が所有してるはずです。シドニーの高速道路も第三セクターというか、私企業に作らせてます。じゃあ自治体は何すんの?というと、やらせる代わりにショバ代を取るとか、いくらでも方法はあります。徴税権と立法権があったら結構縛れますからね。口は出すけど手は出さない日本国中央政府なんか、シカトしてたらいいです。
そんな大量に外国人がやってきたら言葉の問題で地元は混乱するぞ、という人もいるでしょうが、大丈夫です。そんなんで混乱するならケアンズだって混乱してるはずです。要するにやりかた一つです。言葉の問題は、オーストラリアのワーホリ帰りが日本ではウジャウジャいます。現場度胸で英語出来る若い人は年々増えてます。ただ、せっかく英語を習っても日本でそれを生かす場所が極端に少ないのがこれまでの問題でしたから、むしろ沢山職場を作ったらいいと思います。
同じように、空港一つ作るだけでがらっと変わるエリアは日本中至るところにあるでしょう。
さらに、航空行政権ではなく、法人税徴税権限だけを移転させるというのもアリだと思います。法人税をまるごと国税ではなく地方税に移して、自治体レベルで法人税の課税基準や方法を勝手に決めることが出来るようにします。そうすると何ができるかというと、企業誘致がしやすくなります。タックス・ヘイブンですね。「あなたの会社が来てくれたら、向こう三年間法人税をタダにします」とかスペシャルオファーをするわけです。国単位で考えれば、こんなことは国際的には常識です。ちなみに、世界の法人税の税率を今インターネットで調べてみたら、以下のとおりでした。「チリ 15.0 香港 16.0 台湾 25.0 シンガポール 25.5 マレーシア 28.0 インドネシア 30.0 タイ 30.0 英国 30.0 韓国 30.8 フィリピン 32.0 ニュージーランド 33.0 オーストラリア 34.0 米国 40.0
日本 42.0 ('01年2月12日ビジネスタイムスより)」。いかに日本が高いかですね。でも、もう国レベルで待っててもラチが明かないから、香川県善通寺市に限り「法人税3%でいいよーん」とかやっちゃうわけですね。
なんでもいいのですが、ある分野に限ってはほぼ無制限の権力委譲を個々の自治体にしてしまうわけです。この無制限というのがコツだと思います。
そこまで大幅な権限委譲が出来ない、現実的ではないというのであれば、もっと身近な村おこしレベルから入っていったらいいでしょう。
その際「活力ある町づくり」とか言いますが、「活力」というのは結果ではなくプロセスだと思います。町づくりのプロセス自体がまず理屈抜きに面白くなければなりません。結果として大失敗に終わって、自治体が破産するくらいになっても、「潰れちゃったんだってさー」「ぎゃはははは」と住民全員で爆笑してるくらいがいいわけです。そうです、改革案とかプランとかいうのは、聞いた瞬間誰でも爆笑するようなモノがいいです。実際、昔むかし、僕が旗振ってやってた異業種交流のサークルでは、企画のアイディア出しの際には、「笑えるかどうか」という基準を不文律として置きました。笑えるプランは、まず大体成功しますよ。すべからく行政には「笑い」の要素をいれるように。
すごく馬鹿馬鹿しいけど、妙に燃えて、ギラギラしてくるような感じがいいですね。例えば小手調べに、住民によるかくし芸大会でも開催します。ただし、それだけだったら燃えないので、優勝者には賞金を出します。それもハンパな額ではなく、少なくとも1億円。1億円本当にもらえちゃうとなると結構張り切るでしょう。審査員は厳正を期すべく全国から有名芸人を招致します。同時にインターネットでも中継して全世界で(たまたま見ていた人に)投票してもらいます。持ち時間は一人3分。もう居合でも、バンドでも、二人羽織でも、手品でもなんでもいいです。
それで味を占めたら、もっと馬鹿馬鹿しくなりましょう。住民による女装男装大会。これも優勝者は1億円。さらに仮装パーティ。ヌイグルミ着てのダンス大会、住民全員参加のジャンケン大会。なんでもいいですが、とにかく優勝者には1億円。予算10億あったら年に10回遊べます。たまたまジャンケンに勝ち抜いたら1億円もらえるとなれば、燃える人も出るでしょう。これらは単なるウォームアップに過ぎません。ただ、「遊ぶ」という意識とカルチャーを育むにはいいキッカケになると思います。
ただですねー、このように大胆に物事進めようとすると、必ず反対する人はいます。というか、なんだかんだいって反対する人の方が多いくらいかもしれません。というわけで、まずは日本人の意識改革から先にやった方が良いのかもしれません。もう少しタフで、陽気で、楽天的な国民に再教育します。
まずですね、人材養成というか、リーダ的立場にある人には、それなりに健康な楽天性を持ってもらわねばなりません。そこで、まず国会議員や市会議員になるための候補資格、国家公務員や地方公務員の1種(上級職)の受験資格として、一人ぼっちで世界一周してきてもらいます。ラウンドワールドチケット(世界中のバッパー連中が使ってる、世界の周遊航空券。7回世界の航空会社を利用できたりする)で、所持金は30万円だけ。これは厳正にチェックされます。30万円だけで世界一周してこようと思ったら、5つ星ホテルで悠々宿泊というわけにはいきませんから、世界中の人々と同じ視線で地べたを歩かねばなりません。また、行く先々で働かなければなりません。
それなりに大変ですが、そのくらい出来なきゃ日本のリーダー的立場にたってはいけないと思います。また得るものは無限にあると思います。世界の人々と身近に接しますから、世界というのは何なのかが肌身でわかるでしょう。いかにこれまでの自分が甘かったのかも思い知らされるでしょう。リスク管理の本当の意味もわかるでしょう。そして何より、「なんとかなるだろ」という健康な楽天性が養われるでしょう。
第一段階でこれで指導者層を入れ替えていったら、今度は国民全員にあてはめます。国民の義務として、強制1年ワーホリ制度をやります。とにかく1年海外で暮らして来い、と。所持金は100万円まで。無論強制は出来ませんし、例外も沢山用意すべきではありますが、出来るだけ行って来ていただく。そのため、国民の義務という観点を徹底させ、海外に出るために会社を一時休暇をとったりした場合、会社が不利益な処分を課すこと(クビにしたり、左遷したり)を法律で禁じます。もう徴兵と一緒くらいに。多くの人は海外で一年暮らすことで物の見方が変わってくるでしょう。タフに、たくましくなって帰ってくるでしょうし、骨太な人生設計が営めるようになるでしょう。そういう国民を一人でも多く作ります。
海外がどうしてもイヤという場合は、国内留学です。まったく現状からかけはなれた事をやってもらいます。くじ引きで「はいキミは、4ヶ月づつ、それぞれ富山県のホタルイカ漁従事と、和歌山県の炭焼き小屋勤務、愛媛県のサナトリウムボランティアね」という感じでやってもらいます。とかく小さくまとまりがちな世界を広げるために、いろいろ経験してきてもらいます。
さらに、国民全員に「一生の間に1回は自分の会社を起業しなければならない」という義務を課します。事業資金は国が無利息で貸与し、一定額までは国が信用保証します。自分で本当にビジネスを起こさねばならないとなれば、誰でもイヤでも真剣に社会や経済のことを考えます。その精神的な気構えのようなものが大事です。
これらは、別に何がなんでも全員参加でなくてもいいと思います。しかし、そういう道があるのだということ、小さな頃から「そうか、俺は一生の間に1年は海外に暮らし、一回は自分の会社を作るのか」と思って生きてくれば、おのずと生き方もメンタリティも変わってくると思います。
このようにして、健康な楽天性を獲得したタフな新日本人たちは、健康で楽天的でタフな日本を作っていってくれるでしょう。
写真・文:田村
写真は、マリックビルの路上にて
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