今週の1枚(02.10.28)
ESSAY/ どうしてここにいるのか?(あなた編)--その3
ちょっと長続きしているこのシリーズです。前回、前々回と人々がオーストラリアに来る理由をいろいろ考えてみましたが、今回はややネガティブな面にもスポットを当ててみたいと思います。オーストラリアの居心地の良さによる落とし穴です。
こう書くと、「ああ、落とし穴ってのは、居心地がいいだけに、オーストラリア人みたいに怠け者になっちゃうよ、ってことでしょ?」と思われる人もいるかと思います。まあ、そういう面も無いことはないけど、それほど話はシンプルではありません。
オーストラリアに来るということで、人生や生活のリストラを行い、自分の周辺がシンプルになることによって、新鮮なリスタートが出来ると前回書きました。それはそれで素晴らしいことなのですけど、いつまでもリスタートの快感に浸ってるわけにはいきません。そこから先が結構難しいのですね。
オーストラリア現地に1年くらいワーホリないし学生ビザなどで滞在するとします。最初はいろいろ大変でしょうけど、じきに生活にも慣れますし、楽しくもなってくるでしょう。
また、渡豪して最初の1年くらい、つまり語学学校へ通学している段階くらいまでは比較的簡単です。現地ではとにかく英語が必要ですし、英語が出来るほど可能性は広がります。英語が出来て損をするということは、、、ちょっと今思いつかないくらい奇妙なシチュエーションにでもハマらない限りまず無いでしょう。ですので、当初の段階は、「とにかく英語じゃい」と言ってればいいわけで、その意味では、複雑な人生の選択肢については一時棚上げにしておくことができます。
しかし、1年なんかあっという間に過ぎてしまいます。さて、それからどうするか?ここで多くの人は迷われます。岐路にさしかかるわけです。
ここで考えうる一般的な選択肢としては、
@日本に帰国する
Aオーストラリアに留まる(→ビザの問題)
(1)ビジネス学校やTAFEに行く
(2)大学に進学する
(3)労働ビザをゲットして就労する
(4)いきなり永住権をゲットする
などです。
帰国組や、労働ないし永住ビザをゲットできる組は、比較的迷いが少ないと思います。行くべき方向もやるべき事柄も比較的見えてますから。問題は、特にこれといった決定的な方向性は見出せないけど、オーストラリアは居心地がいいから出来ればもう少し長くこの地に留まりたいという場合です。
ビジネス学校や大学などの進学組の場合、本当にその勉強をやりたいから進学するというケースは実はマレで、多くの場合は滞在のためのビザ的方便として授業料も安く、出席もそれほど厳しくないビジネス学校に進学するか、あるいは永住権獲得のための1ステップとして大学等へ進学するパターンが多いです。
このあたりのビザの仕組みや戦略は、こちらに住んでいる日本人だったらわりと誰もが知ってる共通認識だったりしますが、知らない人は全然分からないでしょうから、前提知識としてちょっと解説しておきます。
オーストラリアはビザに関しては比較的うるさい国です。観光で入国する場合であってもビザが必要ですし。ですので、オーストラリアが気に入って滞在を伸ばそうとしても、なんらかの大義名分がなければ滞在し続けることは出来ません。観光ビザを延長したり、更新(一回出国してまた入国)したりするのもテではあるのですが、観光ビザのままだと働けませんから、お金が続かないし、根も張れない。そこでなんとか働けるビザを、と考えるのはある種当然のなりゆきでしょう。
ところが、そんなに簡単に働けるわけではない。スポンサーになってくれる人を捜して労働ビザを出して貰ったり、就労時間週20時間という制約がありつつも学生ビザを取るという方法が一般的ですが、もっと抜本的な解決は永住権を取ってしまうことです。ただその永住権の取得が中々難しい。オーストラリア人や永住権保持者と結婚するとか、家族として呼び寄せてもらえるとかいう強力なコネがあれば別ですが、この種の「人の縁」はそうそう狙ってどうなるものではないですから(狙ってる人もいるんだけど)、とりあえず選択肢から除外します。そうなると、いわゆる独立移住と言われる永住権取得になりますが、これが年齢点、スキル点、英語点の総合点で定められたポイントテストというハードルをクリアしなければなりません。これが中々難しい。
詳しいことはビザの代行業者さんなどプロにお聞きになっていただきたいのですが(あちこちにホームページがあります)、大雑把にいうと、まずスキル。直近数年において実際に働いた経験があり、それもプロと呼ばれるハイレベルの仕事をしているというハードルがあります。この関門で、日本にいるときに学生さんだったりフリーターだったりする人はほぼ問答無用で場外退場を強いられます。また、仕事も何でもいいわけではなく、それなりにプロフェッショナルな職業である必要があります。それもオーストラリアにとって「好ましい」職種であるといいです。例えば寿司を握れるというのは日本人の独壇場ですのでポイントが高いのですが、医師になると競争を好まず発言力も強いオーストラリア医師会が拒否しますのでゼロ点です。そのあたりトリッキーな要素も強いです。
同時に英語点というのがあります。これはIELTSという英語試験で6点をゲットする必要があります(他の項目で優秀な得点を出せたら5点でもいいですが、そんな例はマレでしょう)。IELTS6点というのは結構厳しいです。TOEICで720点くらいに相当するのでしょうか。でもスピーキングもリスニングもライティングも等しく試験されますし、その全てにおいて6点であることが要求されます。このレベルは、日本である程度英語の勉強をしてきた人(たとえば、ラジオ講座を1年聴いたとか、NOVAに1年通ったというくらい)が、現地の語学学校に半年通ってガリ勉すれば、まあ取れるかな、どうかな?取れなくても不思議じゃないな、というくらいのレベルだと思います。
そして年齢点。29歳までが一番点数が高く、あとは5歳刻みに5点づつ減点されます。
要するに、プロと呼ばれる熟練したスキルと実務経験がありつつ、ある程度のレベルに英語が出来て、しかも29歳以下という人だったらOKになるわけですが、こういう人って実はあまりいません。僕自身も経験ありますが、熟練したスキルを求められる職業で29歳以下というのは、ある意味仕事が面白くなりかかった時期でもあり、鬼のように働いている時期でもあります。また鬼のように働かないとスキルと呼べるレベルにまでいきません。このように盛り上がってる時期というのは、そもそもあんまりオーストラリアに行こうなんて考えないものです。昔住んでたことがあるとか特別な機縁でもないと、中々海外移住なんてことは考えない。僕も全然考えませんでした。
また、そのくらい朝も晩も必死に働いていると、とてもじゃないけど英語なんか勉強しているヒマがないです。僕も無かったです。そういえば、その昔、大阪は梅田を歩いているときに、英会話の勧誘を受けたことがありますが、最後の授業が8時とか9時とかそんなだったので全然論外だなと思ったことがあります。「夜11時から始まるコースはありませんか?」と聞いたのを覚えてますが、そのくらいでないと身体が空かなったからです。だから、普通、英語力は大学入試をピークにあとは下がる一方です。
このように考えると、29歳までにスキル・英語力・移住したいという意思という三点セット、麻雀でいえば大三元をテンパイしてるような人はマレと言えます。やはり、それまでに英語を喋らざるを得ない環境にあったり、海外になんらかの縁があったりとかないと、つまりは配牌の段階である程度ツイてないと、29歳までにはテンパらないのが普通だと思います。
そこで英語習得と視察を兼ねてこちらに語学留学に来たりするわけですが、これもIELTS規定点獲得のために頑張って学校に通っていると、肝心のスキル点が消滅してしまうリスクもあります。つまり、スキルで高得点を取れる場合、「過去○か月以内に○か月稼動」という条件があったりします。例えば、過去18ヶ月中12ヶ月という条件だとしますと、日本で辞職してこちらで学校に通ってIELTSで点をたたき出す前に、この条件をクリアしなくなってしまうのですね。18ヶ月中12ヶ月というのは、要するにブランクが半年以上あったらパーになるということですから。実際これでパーになった人は多いです。
というわけでリーチ一発で永住権が取れる人はラッキーです。僕も取れましたが、それは僕の取得した95年頃は規定ハードルが100点という楽なレベルだったからです。いまは115点に上がってますから、かなりしんどくなってます。ほかにも事業者移住永住権などカテゴリーはいろいろありますが、いずれにせよ色々な条件が付されており、楽ではないです。
リーチ一発で取れない人はどうするのか?そこで、「戦略」になるわけです。一つは、永住権のポイントテストには、いろいろなボーナス点があり、そのなかにオーストラリアの大学などに1年以上通って資格を取ったらスキル点審査は免除という項目もあり、またコースの中でもオーストラリアにとって人材が欲しい分野である場合はさらにボーナス点が貰え、これらのボーナス点を合算して規定ハードルを越えようという戦略です。よくあるパターンは、日本語・英語の通訳翻訳学科だったりします。そこで、大学進学というコースが出てくるわけですね。
しかし、これも楽ではないです。まず大学というのが、多くの日本人の想像をはるかに越えて大変です。入学のための英語基準がIELTS6点とか7点とかいっても、そんなギリギリの英語力だったらかなり苦労するでしょう。これはビジネス学校でもなんでもそうですが、規定点ギリギリくらいの英語力だとつらいです。女の子とか、マジに涙流してますもんね。語学学校は、あれは幼稚園みたいなもので、とにかく楽しいんですけど、そこから先はどこいっても大変です。英語面もさることながら、勉強面がまた大変。大学だったら毎週卒論一本書かされるくらいの覚悟はしておくといいです。人によりますが、大学入試の比ではないかもしれませんし、「生まれてこんなに勉強したことはない」という話はよく聞きます。医学用語(新生児核黄疸とかその種の)を日本語と英語、それぞれ300単語を明日までに覚えて来いってな感じらしいです。
ましてや語学イノチの翻訳通訳コースの場合、ハンパじゃないです。NATTI合格した人を個人的に何人か知ってますが、いずれも英語的には殆ど不自由ない人でしたが、それでも苦戦しておられましたから。比較できるものではないのを百も承知で言いますと、TOEIC900点とるのとNATTI合格するのだったら、TOEIC900の方がずっと楽だと思います。僕も900程度だったらちゃんと準備すれば取る密かな自信はあります(受けたことないけど)。でもNATTIは、どうかしたら一生無理かもって思ったりもします。まあ、いざとなればやるんでしょうけど、かなり高い壁だとは思ってます。
もう一つの永住権取得の戦略ですが、出世魚コースです。まずは時間に余裕のあるビジネス学校に通い→週20時間以内のバイトを探し→そこを継続し→気に入られ→ビジネスビザを出して貰い→さらに継続して働き→欠くべからざる人材になり→雇用者指名永住権を出して貰う、という遠大な計画です。
しかし、「ビジネスビザを出して貰う」「スポンサードしてもらう」というのが、中々大変です。ある意味、NATTIより大変かもしれません。なにしろ相手さんあっての話ですから、一方的にガリ勉すればいいってモノではないからです。基本的な仕事の能力、それ以上に大事な性格、誠実さ、人との出会いの運、あくなきアタックをしかけていく打たれ強さ、もう総合力で勝負といった感じです。
このようにリーチ一発で独立移住が取れなかった場合にもそれなりに方策はあるのですが、どれをとっても決して楽な道ではありません。
ただ、そうであったとしても、「永住権、取ったる!」と思える人は幸いなるかな、です。
人生の方向性が見えてるわけですし、腹も括ってるわけですし、あとはやればいいだけです、やれば。それは簡単な道ではないですが、まだ簡単/難関レベルの話です。
それに実際にこういった道を進んでいる方々は、既にオーストラリアにもある程度滞在していて、オーストラリア人的楽天性に染まっているでしょうし、方向性が見えてるときのシンドさというのは人はまだしも耐えられます。それに、運とか、出会いとか、計算できない要素が不可避的に入ってくることをもって超難関と思うかもしれませんが、考えてみれば、どこで何をしようとも、そんなことは人生の当然の姿だと思うのですね。意思があり、トライがあり、努力があり、出会いがあり、運不運がある、、、それって別に永住権だけに限りませんもん。大体、計算できないから大変だ、無理だといってたら、恋人や結婚はどうなるんだ?って気もします。そもそも、今現在生きているポジションだって、別に計算づくでそこまで来ているわけではないでしょ?いろんな出会い、運と偶然の産物でしょ。だから、特にそう難しいというわけでもないです。
大学も難関だなんだとはいっても、プロと呼ばれるレベルまで1年やそこらで鍛えてくれるわけなんだから、そういう機会に恵まれること自体がラッキーと言えない事もないです。勤め先で、他人のくだならない尻拭いのために、下げたくもなく、また下げるべきでもない頭を無理矢理下げてる日々に比べたら、自分の実力を鍛えるための試練は、甘美ですらあります。
だからこんなことは考え方一つだと思います。人生というのはこのくらいスリリングで当たり前だと。
ただ、これからオーストラリアに来られる方、もしかしたら永住あるいは、現地で働きたい、、とお考えの人に申し上げておきたい点が二つ。その一、決して楽ではありません。その二、出来るだけ早い時期に永住権が取れそうかどうか、専門のプロのお金を払って相談されることをオススメします。よく僕宛にメールで問われるのですが、僕なんぞに聞いてもダメです。専門のプロに聞いてください。ビザの規定はトリッキーで、沢山のボーナス点やブラックボックスがあり、且つ猫の目のように変ります。先月OKでも今月どうなるかわからないからです。だから年がら年中その仕事をしているプロの意味があるわけです。
お金を払えというのは、永住権取得の可能性はかなり個別に違いますから、出来るだけ正確にあなたのパーソナルなデーターをインプットしないとアウトプットもまた不正確になるからです。無料相談もやってるとは思いますが、やはり無料であるだけに一般論にならざるをえないという限界はあるでしょう。それにこんなところでケチっていい加減な青写真で下手すれば一生を棒に振るリスクを負うくらいだったら、多少なりとも払って正確な設計図をゲットした方がいいです。これから遭難もあるうるという未知の山に登るというときに、アバウトな地図で登りますか?
早く相談しなさいというのは、永住権というのは、ある意味「時間との戦い」だからです。スキル点の過去年限しかり、年齢点しかりです。「とにかくワーホリで」とかのんびりやってるうちに1年も経てば、スキル点はパーになりかねないし、年齢もオーバーしてしまうかもしれない。要するに早く腹を括った人の方が絶対有利だと思います。
なお、いきなり永住権というのは突拍子もないかもしれないし、「私は永住権なんかいらない、ただ数年働けたら」という人も多数おられるでしょう。しかし、その「現地で働く」といっても、永住権を持ってる方が就職にはダントツに有利です。職種によるのでしょうが、永住権をもってないと話にもならないというケースも多いと聞いています。ビザのスポンサーになるのって、お金もかかるし面倒臭いし、同じようなキャリアだったら手間の掛からない人の方を普通採用しますよね。また、就職先が決まったといっても、最低賃金条件(年収34K以上)やら職種自体が限定されてるやら、以前よりもビジネスビザ自体が取りにくくなってます。あと、永住権とっても、別に永住する義理はないですからね。住んでいる必要すらないです。住まなくなったら自然と消えますし、持ってて別に拘束があるものでもないです。ただ難点は、申請料とか手数料が高いことですね。それだけの価値があると思うえるかどうかです。
というわけで、前提の状況を説明するだけで随分掛かってしまいました。
このあたりの話は、別に「落とし穴」でもなんでもないです。「現状はそれなりに大変だよ」と言ってるだけです。
「落とし穴」は、オーストラリアに留まるか/帰国するかの二者択一において、「とりあえず滞在する」というモラトリアムが出来ることです。具体的には、学費も安く、そして勉強も大学ほどキツくないビジネス学校などに進学して学生ビザをとり、そこそこバイトして生活しつづけるというオプションです。そういうことも可能です。しかし、これは貴重な時間を浪費するだけになりかねない恐さもあります。
繰り返しになりますが、オーストラリアにやってくる最初の半年や一年は、とにかく「やってくる」という移動作業それ自体に大きなリストラ&リセット効果があります。それだけでもやる価値があると思える人も多いでしょう。その時点では特に先々のことを細々と煮詰めておく必要もないです(但し、永住権の可能性などは早めに調べておいた方がいいのは前述のとおり)。ただし、そのリストラ効果は一回ポッキリであって、リセットばっかり何度もやってるわけにはいきません。そこから先は、また長期展望にたって、留まるか or 帰国するかで腹を括る必要がありますし、そしてそのどちらの方向にせよ楽な道ではないでしょう。
その選択のハードさに耐え切れず、「とりあえず」とか考え出したらちょっとヤバいと思います。この選択のハードさは、別にオーストラリア滞在云々の専売特許ではなく、人生一般において常に存在するものといえます。日本に居つづけたって、こちらに住みつづけたって、どこで何をしていようが、生きていくことはそうハンパなことではない。東西南北どこに赴くにせよ、どっかで腹を括って、ハードシップに頭から突っ込んでいかないとならない。
例えて言えば、人は小さな島に生まれ育つようなもので、周囲はグルリと海に取り囲まれています。360度どの方向に進むにせよ、かならずどっかで海を泳ぎわたらないとならない。どんなスキルを身につけるにせよ、それでメシが食えるようになるまでには3年くらいの修行は必要でしょうし、自分でビジネス起こすにしても収支が合うまでには同じくらい時間がかかるでしょう。何をするにしたって「海」は必ずあるでしょう。どっかで腹を括る必要はあります。オーストラリアにリセット効果があったとしても、海を埋め立てる力まではないです。リセットして鋭気を養ったら、海をわたる意欲やパワーがアップするかもしれないよという程度の話です。
これは精神的にはタフな作業です。だから、「どっかに地続きのところはないかな?」とか弱気なことを思ったりもします。でも、そんなもん無いです。しかし、日本に生まれ育っていくと、あれこれレールが敷かれている関係で、この「海の真実」に直面しないで済むかのような錯覚を覚えたりします。いい大学→就職(失業の不安なし)→結婚(離婚の懸念なし)→育児(費用や教育に懸念なし)→老後(不安なし)というルートがあったりするわけです。いわば、無人島から別の島まで、四国大橋のような大きな橋が掛かっているかのようです。
それに安心して、また不満もなく橋をわたっていける人はいいです。でも、橋というのはお仕着せルートですから、別にあなたの為に特注した物でもなんでもないです。橋を渡るうちに人格や生活が平均化され、自分らしさが押しつぶされそうになる不満や疑問を感じたりするからこそ、オーストラリアに来たりするのだと思います。一方、この”日本大橋”も万全なものでは無くなりつつあり、アチコチで陥没したり、橋脚が折れたりしているのは周知のとおり。
日本にいてもオーストラリアにいても何処にいても、自分らしさを貫こうと突っ張ろうとすれば、結局は橋ではなく海に飛び込んで泳ぐ必要があります。それはどこでも同じ。オーストラリアにやってくるリセット効果の最たるものは、この海の存在に気づかせてくれることだ思います。「ああ、別に橋をわたる必要もないんだな」「別に好きなところへ泳いでいけばいいんだな」という解放感を与えてくれます。何度も言うけど、そのことを再確認するだけでも来る価値はあるでしょう。ただ、海を渡らないで済ませる力はない。当たり前ですけど。
その当たり前の現実を、しかし、ともすれば忘れがちになります。厳しい現実から目を逸らしたいという欲求もあるでしょう。日本に居たら幻の橋にしがみつづけるのと同様に、オーストラリアにいる場合、いつまでも海辺でビーチバレーでもやりつづけていたいと思ったりもします。それが「落とし穴」です。それじゃなんのためにリセットしたのかわからなくなります。
その落とし穴も巧妙になっていて、「一見前向き、しかし意味なし」というパターンがあるように思います。「とにかく学校にいって」というやつです。前述のように、永住権ゲットのために煮詰めた計画の一コマとして大学にいくとかいうならともかく、将来の展望もないまま、「とにかく進学」というのは、結局はモラトリアムに過ぎないケースが多いです。学校に行けば何となく将来への展望が開けそうな気がするのは、日本人独特の錯覚ともいえます。教育は確かに重要ではあるけど人生のほんの一部でしかないです。また学校行くだけが教育ではないです。オーストラリアでは、別に学校にいったからといって何がどうなるものでもないです。
ああ、また長くなってしまった。ブチブチ切るのは本意ではないですが、次回にもう少し細かいことを書きます。
ここまでを大雑把に整理しておきますと、最初の半年/1年は、リストラ&リセット効果のためにウダウダ考えてないで「全部捨てて、とにかく行く」という行動の飛躍性に意味があるとしたら、次のステージは「海に入ろう」という覚悟を決める点に意味があるのだと思います。その際、そんなに深く煮詰めたり設計する必要はないでしょう。ただ「腹を括る」ことさえ出来たらいいと思います。第一段階「とにかく来る」、第二段階「腹を括る」、そして第三段階「実行あるのみ」と続いていくのだと思います。
写真・文:田村
写真は、Bondi JunctionからRandwick方面を望む
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