ESSAY/ ”The Okinawa Program”
〜長寿王国沖縄について述べた地元新聞日曜版の翻訳
※別に読む必要もない、オオボケの記録。 上述の(注5)のところで、原文は"worth noting"と書いてあるのに、そそっかしい僕は、"worth nothing"と誤読してしまい、そこから「意味がわからん」と延々数時間悩みつづけ、以下の推論をしたためました。一回はそれでUPしたのですが、さっそく読者の方からご指摘をいただきました(一番最初に教えていただいた柳沢さん、ありがとうございます!)。 で、問題はスッキリ解決したわけですが、"worth nothing"と誤読してしまってからの悪戦苦闘の記述が、ボツにするには余りにも笑えるので、以下に載せておきます。いやー、思い込みって恐いものですな(^^*)。でも、これよくやるんですよね〜。 ここの個所の原文は、"The amount of fish and rice is also worth nothing"となってます(なってないっつーの)。この最後 の"worth nothing"がクセモノです(クセモノではないっつーの)。一応このパラグラフ全部を載せておくと、 The amount of fish and rice is also worth nothing. Besause of warmer climate, fresh fish and vegetables are available all year round, unlike in northern Japan where salting and pickling for winter supplies is a time-honoured tradition. Okinawa is the only part of Japan that meets the Ministry of Helth, Labour and Welfare's salt consumption standard of less than 10 grams oer day." 一行目の”worth nothing”以外は平易でわかりやすい英文だと思います。つまづいたのは、worth nothing の意味です(そりゃつまづくでしょうよ)。これ、調べまくったのですが、なっかなか辞書に載ってません。収録46万語を誇るリーダース(&プラス)にも無いです。バビロンをはじめとするインターネット辞書にも無いです。英語サイトにいって、英英辞典で調べてもろくすっぽないです(そりゃ無いでしょうよ)。 そのとおり読めば、「価値がない」ないわけで、特別な表現でもなくそれでいいのかなと思いがちなところです。でも、問題が二つあります。一つは、英辞郎だけが、"worth nothing"載せていて、「注目するに値する」という語義を載せていること。これ、正反対の意味ですよね、「価値がない」のではなく「価値がすごくある」という意味ですから。 そしてもっとも大きな問題は、@価値が無い(注目すべきにあたらない) or Aある(注目すべきである)と、正反対の意味に捉えても、それぞれそれなりに文脈上意味が通じてしまうことなんです。 全体の文章の流れでいうと、沖縄の人はなぜ長寿なのだろうか?→それは遺伝子のせいではない。食生活だろう。特に青物野菜を沢山食べているという理由があげられると語られます。続いて、「沖縄は暖かいから年中新鮮な野菜や魚を食べることが出来る=他のように冬場に塩漬けの保存食糧を食べる必要がない」という第二の理由が書かれるという流れになっているわけです。 ここで、「魚や米の消費量についてworth nothing である」というのを、@魚や米の消費量(amount)それ自体に意味があるのではない(worth nothing)、とするのか、それともA魚や米の消費量にも着目すべきである(worth nothing)とすべきであるのか?です。これ、考えれば考えるほどどちらも一理ありそうなんです。 @は、食べている量その自体が問題なのではなく、そこに含まれている塩分が少ない点こそが重要なのだ、という塩分重視説になると思うのです。その前のパラグラフで「日本人の食生活の欠点としては塩分が多すぎることである」と指摘している部分に照応しているのでしょう。日本人の塩分摂りすぎ欠点を沖縄人はクリアしているということですね。ただし、この説の難点は、「〜もまた問題ではない/also」と書かれていることの説明が難しいことです。並列の意味を持つ”also”を生かそうとすれば、その前のパラグラフでも「問題ではない」ことを書いてなければならないのですが、それらしきものが見当たらない。 Aは、食べてる魚や米の量にもまた注目すべきであるということで、「もまた/also」が生きてきます。つまり直前に「青物野菜を多く食べるから健康なんだよ」に続いて、「魚や米も多く食べてるから健康なんだよ」という具合に続きますので、つながりは非常に素直です。 この説の難点は、このパラグラフの後半が、もっぱら塩分問題ばかり書かれていて、量(amount)のことを書いてないことから、論旨がちぐはぐになってしまうことです。しかし、この程度の論旨のちぐはぐさというか、パラグラフごとに意味が確実にまとまっているわけでもなく、ことのついでに付加情報を書くことは決して珍しいことでもないともいえます。実際、最初のセンテンスで「魚と米 fish and rice」と書きつつ、次の文章ではいきなり「魚と野菜 fish and vegetables」になってて、「米はどうなったの?」という不一貫性がいきなりあったりします。ちぐはぐと言えば冒頭からちぐはぐです。それに、塩漬保存食糧と新鮮な食材とでは取量は違うであろうと。野菜の漬物や魚の塩漬けばかりを食べている日本北部と、毎日取れたての魚や野菜を食べている沖縄とでは摂取量が違って当たり前であり、わざわざしつこく語るまでもない。だからここではもっぱら量問題を述べているのであり、塩分問題は、塩漬けの話が出てきたらことのついでに厚生労働省の基準を書いただけのことであると。 これ、かなり悩んでます。英辞郎の訳にもひっかかるのですね。でも、どうして"worth nothing"が「注目すべき」という意味になるのか?というと、ようわからん。ただ、同じ言葉で正反対の意味を持つことって、言語ではよくあります。日本語の「適当」というのも、「適切」「いい加減」という、肯定否定二つの意味がありますからね。 まあ、ここでは、悩んだ挙句、一回英辞郎説に傾きつつも、結局「意味が無い」説にしました。そう訳した方が文章全体が深くなるように思いましたから。「量ではなく質だよ」と。also問題は、ちょっと前に書かれている「遺伝子は問題にならない」というくだりにリンクするのかな?という気もします。全体の論理のリズムでいいますと、「遺伝子じゃないよ、食生活だよ」「食生活のなかでも野菜だよ」「野菜の中でもゴーヤだよ」と言う具合に、どんどん核心に掘り進んでいくような展開をしているわけで、ここでも「量じゃないよ、塩分だよ」という具合に訳せば、それはそれで全体のリズムも整うようにも思います。 ただ、これだけ悩ませるこの文章は、決していい文章ではないと思います。はっきり言って悪文なのではなかろうか(悪いのはボクの頭です、はい)?どうも英文で書かれると、わからなくても自分の英語力が低いのかな?と思ってしまいがちですが、新聞や雑誌の英文でもけっこう悪文が多いように思います。それも気取ってスカした文章を書こうとして、コケているのとか(ただ、この一般論はなおキープできます)。 ”worth nothing”ですが、@にせよAにせよ、なにもこんなフレーズを使う必要なんか全然ないんですよね。Aの「量はそれ自体意味を持たない」説にしても、別にnothingというほど叩きつけるような調子でいう必要なんかないですもん。それに、量だってそれなりに意味は持つでしょうから、全くのゼロってことは無いでしょう。”not a main point”くらいの表現の方が知的だろうし、worth nothing だと、「ああ、それはぜーんぜん関係ないの!」という軽薄な響きも与える。@説の場合でも、なにもこんな言い方しなくたって、shoudn't be overlooked とか、いくらでも平易な表現があるじゃないの?という気がします。("worth noting"はたしかに平易な表現でそれは文句ないです。ただし、「第二文で米が消えちゃってる問題」と、「メインには量を言ってるのか、塩分を言ってるのかの論旨がスッキリしない問題」は尚も残ります。) あれこれ考えさせられてうちにむかっ腹がたってきまして(^^*)、そもそも、なんだよ、この写真?片膝たてて食べるのは韓国でしょ?日本じゃないでしょ?まあ、そこまで正確な理解を他国の人に望むべくもないとはいえ、一応日本が題材になってるんでしょ?プロが編集してるんでしょ?、そりゃあねえだろうって気もします。(この、やつ当り的な批判は尚も維持します。) それに、タイトルの”A Yen For Soya"も寒いっちゃ寒いタイトルです。これは、「yen for/〜を渇望する」というフレーズと、日本の話だから、日本円の「YEN」をひっかけてダブルミーニングにしているのでしょう。この種のタイトルは、マスコミ記事の当然のお約束だからいいとしても、この場合、「大豆への円」では意味が全然通じないから、ダブルミーニングになってないっつーの。これこそ、どっちに取っても意味がそれなりに通じて、思わずニヤリとさせられるのがいいタイトルなのであって、これでは、たんなるダジャレというか、寒いおっさんギャグでしかないではないか、、、、なんて、ひとくさり意地悪を言いたくなったりもします(^^*)。(このタイトルに対する難癖もまた維持します。) というわけで、悪いのは全部ワタシでありました。すいません(・・;)。 |