1 全体的印象について ○司法試験の選抜としては、受験生の中で優秀な者が合格しているが、真中以下の層の学力に差がつきにくくなっている。 ○受験生全体の出来が悪くなっている。 ○ここ数年、非常に基本的なことができないという人が増えている。 ○真中より上の人たちはまあまあだが、下の人の成績が徐々に毎年下がってくるような気がする。 2 論文式試験の答案について ○表面的、画一的、金太郎飴的答案が多い。 ○同じような表現のマニュアル化した答案が非常に多い。 ○答案がパターン化しており、それも同じ間違いをしている答案が多い。 ○フレーズや文章の運びが同じで、総じて「落ちない答案」が多い。 ○判で押したような予備校で習ったブロックの組合せを書いている答案ばかりである。 ○論理矛盾を起こしていることを気づいていない答案や、論点が違っても平気で違うことを書いている答案が多い。 ○基礎から積み上げて勉強していく方式ではなく、論点についての解答を覚えているという感じである。 ○自分の頭で考えず、逃げる答案が多い。 ○掘り下げが浅く、理由づけのない答案が多い。 ○4,5年前の答案も金太郎飴的であったが、その中にもよくできる答案や自分の頭で考える答案があった。しかし、最近では、極端にそのような答案が少なくなった。 ○文章は毎年下手になってきている。国語力が低下している。 3 口述試験の受験者について ○因果関係など典型論点についてはよく話すが、少しひねったあてはめを聞くと全然できない。 ○一見して若い感じの受験生の中に、基礎的知識が足りない者がいる。 ○時効と登記という基本的事項について聞いても、判例の立場をそのまま答えるだけで、反対説を聞いたり理由について尋ねても全然答えられない。大学で接している学生とは異質である。 ○基本的な制度について説明させても、30秒以上説明できる人はあまりいない。 ○論文できちんと書いていると思ったが、口述をやってみて、実は何もわかっていない状態で書いていた者がいるということがわかった。 ○受験生の答えが、一言一句違わず、それも大抵どの先生の教科書にも書いていないようなことを言っており、最近そのような傾向が顕著になりつつある。 ○テクニカルターム、専門用語はすぐ言えるが、少し突っ込んで理由や根拠を聞いたり、議論をしようとするとうまく答えられないということで、表面的な知識は多少付いていても、突っ込んだ勉強が進んでいないという印象である。 ○自分自身で考えて答えているのではなく、インプットされているマニュアルをいかに出すかということだけに終始しているような感じである。 ○少し突っ込んで聞くとすぐに撤回し、撤回を繰り返す受験生が多い。 ○結果の妥当性にさえ依拠すればよいと考えているのか、自説の弱点を追求するとすぐに撤回する。 ○憲法などで論争を仕掛けても,議論にならず深みがない。議論に耐えるような勉強の仕方をしていない。 |