今週の1枚(06.01.02)
ESSAY 240/摂氏44度の元旦
写真は、元旦の日のおせち料理(見れば分かるか)。海外でもこのくらいのおせち料理は余裕で用意できます、という証拠写真として。
もっとも今年は手抜きで自分で作ったのは端っこに写ってる雑煮くらいです。後列の漆塗りのお重に入っているのは、こちらの日系食材店で冷凍品を購入したもの、前列の折り詰めはMosmanの「美濃」という懐石料理屋さんで出しているおせち料理を買ってきたもの(これで二人前120ドル)です。
これを書いている今日は元旦です。みなさま、明けましておめでとうございます。
元旦から仕事なんかしたくないので、今回は手短かに切り上げとうございます。
いや、「元旦だから」という理由は実はどうでも良くて、とにかくメチャクチャ暑いのでヘバッているというのが実際であります。暑いんですよ、今日は。1年中でもここまで暑くなるのは珍しいくらい暑い。元旦の気温としては観測史上最高だと思います。
新聞によりますと、シドニーの元旦の気温で歴代最高なのは、1928年の38.1度、1977年と2002年が36.9度、1898年が33.9度だそうです。そして、今日の最高気温は、オーストラリア気象庁のサイトで公式記録を見てみると、都心周辺の基準となるロックスのオブザーバトリー(天文台)の百葉箱の水銀柱は、44.2度を記録したようです。シドニー空港はなんと45.2度。ぶっちぎりの過去最高新記録です。まあ、「元旦としては」ですけど。
昨日(大晦日、土曜日)も、37度くらいありました。昨日も暑かったです。昨日は、湿度が70%くらいあって日本のような蒸し暑さで、これはこれでイヤだったですけど、それでも夕方になるとお約束のようにクールダウンしてくれました。しかし、今日は、いかにもオーストラリア的、大陸的な暑さで、湿度は10%とか20%とかそんなもんです。ひたすら太陽の暴力的熱射による暑さ。いわゆるヒートウェーブ(熱波)による暑さです。
もう、「やってやれっか」というくらいの暑さですね。暑いのもここまでくると暴力ですよ。
今日みたいな日には、オーストラリアの太陽の凶暴さというのがよく分かります。なんせ朝の7時の太陽でもう肌が焼けるくらい強力で、晩の7時にもまだ結構空の高い位置にいてギラギラしていて肌が焼けます。一番陽射しがキツい正午過ぎくらいに日向に出ようもなら、太陽光線が物理的な力となって全身にきます。もうウルトラマンのスペシウム光線を浴びてるような感じ(浴びたことないけど(^_^))。
日本も暑い国ですし、僕自身、盆地独特の京都の暑さも、東京以上に公園が少なくビル街独特の暑さの大阪も、岐阜県の内陸的暑さも、散々体験しました。しかし、今日みたいな大陸的な、砂漠的な、熱波的な暑さは日本では経験したこと無いです。巨大なヘアドライアーで熱風を吹き付けられるような暑さというのは、海洋性島国の日本にはないでしょう。ちなみに公式記録による日本の過去最高気温は、1933年7月25日に山形市で記録された40.8度です。温度それ自体でいえば、日本はたいしたことないんですね。ただ湿度がミックスするから非常にしのぎにくくて、つらい。
今、この個所を書いているのは、夜の8時前くらいですが、さすがに日が沈みつつあるので温度は下がってきましたが、それでも家の中の温度計をみると35度あります。35度でも結構楽な感じがするくらいで、少なくとも「エッセイを書こうかな」と生産的な意欲が湧くくらいには下がってます。44度じゃ生きてるだけでしんどい。なんせ家にはクーラーなんかどこにもないですからね。オーストラリアでは、クーラーのある家の方が珍しいでしょう。最近流行ってきましたが、今日みたいな経験をすると「ウチもマジに考えようかな」とか思っちゃいますよね。
こういう暑い日は、クーラーの利いてるショッピングセンターなどに行くのが定番の避難場所なのですが、今日はあいにく元旦でさすがに空いてません。あとはもう海ですね。海はさすがに涼しいです。海=膨大な水という巨大な冷却装置があるから、海辺にくるだけでぐっと気温が下がり、さらに海に一歩でも入るとさらに下がります。10度以上軽く涼しいし、涼しい風もよく吹きます。
今日みたいに真剣に暑くなる日、勝負は朝から始まります。
家中の窓を締め切り、カーテンも閉める。一晩過ぎた冷気を出来るだけ逃がさないようにするためです。ヘタに窓なんぞを開けようものなら、熱波が襲い掛かってきます。カーテンも開けていると、熱せられた窓ガラスを通じて熱気が入ってきます。これを上手にやれば、午前11時くらいまではなんとかしのげます。もちろん家によりけりですが、ダブルブリック(煉瓦を二重に積んで断熱用に間に空気を入れている)の古い造りの家だったらワインセラーのように冷気を保てます。場合によっては外部の気温よりも10度以上低くキープできます。
ただ、それもせいぜいお昼までのイノチで、それを過ぎるともう家全体が熱せられてきます。こうなると熱せられた煉瓦に囲まれてるわけですから、石焼ステーキ状態といいますか、ロースト状態になります。どういう感じかというと、家中のものが熱をもってきます。椅子に座ったら椅子がぬくいわけです。食器を取ったら食器が温められており、ボールペンを握ったらボールペンが熱く、猫に触ったら猫まで熱いという、いちいちなんでも熱くなるという。昼寝してやりすごそうと思っても、ベッド自体が熱せられてるから、寝てるうちに汗だくになるという。こうなるともう処置なしですね。だもんで、「一時避難だ!」という。
「やってられない」と思うもう一つは、体調的なものです。僕は偏頭痛持ちなのですが、気温が急にあがると偏頭痛が起きやすい傾向にあります。モノの本によると、セロトニンの代謝がおかしくなって血管が膨張して頭痛が起きるらしく、また急激な気温の変化、環境変化、強い光による目の疲れによってこの代謝異常は起きるといいます。僕の場合もまさにこれで、特に急に暑くなるようなときは、「あ、ヤベ、、」と目の奥が痛くなったりします。
オーストラリアにくると大抵の健康状態は増進するのですが、その例外がこの偏頭痛。さらに、空気が乾燥しているのでドライアイが生じ、コンタクレンズの装着がきつくなる傾向にあります。実際こっちにきてコンタクトレンズが合わなくなる人は多いです。僕も長時間つけるのは避けてますし、コンタクレンズによる目の緊張によって頭痛が引き起こされるのは日常茶飯事です。最悪のレシピーは、急に温度が上がってるときに、コンタクトをつけて車を運転してるような場合で、温度+コンタクト+強い照り返しの三大悪条件が揃ってしまって、頭痛になったりします。本気で頭痛になってしまったら、もう半日間は絶対安静状態になるので、このあたりの体調管理にはメチャクチャ気を使います。
もう一つ、アンチ健康的な要因は紫外線。これがまた半端でなくきついです。僕みたいに40歳過ぎた野郎の場合、今更「お肌が、、」なんて心配はないのですが、皮膚ガンはマジに心配ですし、もっとイヤなのは目の網膜にダメージを与え遠い将来失明の危険すらあることです。オーストラリアの紫外線対策は、さすがに本場だけに色々揃っています。オススメは、カンサーカウンシルというガンに関する啓蒙と対策をやっている民間の財団法人みたいな団体です。ここがいろいろショップをだして紫外線対策グッズを売ってます。かなりシリアスな対策グッズが充実してます。サンスクリーンを塗るだけではなく、UVカットの帽子、上着、サングラスいろいろあります。特にここのサングラスは愛用の品です。視界の明度は極力変えずにギラギラだけをカットしてくれるからかなり楽です。
急激な温度変化や暴力的な紫外線によって、セロトニン分泌や体温調節機能やら自律神経やらが酔ったようにおかしくなるのも特徴的です。これらも若い人にはそんなに影響ないでしょうが、厄年過ぎた男性とか、更年期が近づいてただでさえホルモンバランスがおかしくなりがちな女性とかにはキツイときがあるようです。僕も体温調節機能をよくぶっ壊されます。暑いんだか寒いんだか分からないという、汗ダラダラ流して身体は火照るんだけど、身体の芯は冷えていて鼻水やくしゃみが止まらないところに、大量の汗が冷えてさらに身体を冷やす、だけど気分的には暑いという。もう面倒くさいですよ。年食ってイヤだなと思うのはこういうときですね。筋力とか柔軟性とか持久力なんかいくらでもトレーニングでリカバーできるけど、神経系統とかそのへんのものは何をどうやって訓練すればいいのかわからんです。
というわけでオーストラリアに来てこのあたりの症状に悩まされている人は、気をつけてください。まあ、気をつけようもないかもしれないけど、「そういうもんだ」と意識してるだけで随分違いますよ。コンタクトレンズを新たに作り直すだけでも結構違うときもありますし、温度変化にビビットになって神経系が酔ってしまう前にこまめに上着を羽織ったり、汗で濡れたシャツを替えたりすることで予防できることも多々あります。
オーストラリアの気候はある意味単純で、赤道からダーウィンなどの北方系の熱気集団と、南極からの寒気集団の力関係で決まります。北方系の熱気にすっぽり覆われると今日みたいな熱波地獄になり、南極系の寒気が侵入してくるとぐっと肌寒くなります。
シドニーの日々の多くは、夕方くらいになると南風が吹きます。「風が南風に変わる」というのを、天気予報英語で”southerly change”と言います。気をつけて天気予報を聴いていると、年がら年中言ってますよ。こいつが吹いてくると、暑いのも終わりで一息つきます。シドニーの暑い日の90%以上、いや95%は、夕方になるとぐっと気温が下がり、一気にしのぎやすくなります。これがこの都市の最大の美点の一つだと思うのですが、「夕方までの辛抱だ」と思えるわけです。日本みたいに日が沈んでも熱気はおさまらず、一晩中熱帯夜で苦しむということは殆どないです。そこで、夕方になって涼しい風が吹いてきたら、というか家の中の気温よりも外の気温の方が同じかないし低くなってきたら、一気に家中のカーテンも窓も開け放ちます。
ただ、熱帯夜が絶無かというと、そんなことはなく、年に1−2日くらいはあります。こういう日はたまらんですけど、それでも湿度が低いケースはまだまだ日本よりもしのぎやすい。そして、今日のように、夕方になっても冷たい南風が吹かず、暑いままってケースがマレにあります。
さて、ここまで書いている途中、晩飯を食べたりしていたのですが、午後9時を廻った時点で待望の冷たい風が吹いてきました。予報ではミッドナイトまで吹かないといってたのですが、嬉しい誤算で、早めに吹いてくれました。ゴーというすごい音がして樹木が揺れてます。ふー、涼しい。生き返りました。吹き始めてから30分もしないうちに外気温は25度まで下がってます。冷房のきいた建物なみに涼しくなってます。あとはこの涼気が家中を冷却してくれればいいわけです。しかし、今日はえらいキツい吹き方で、暴風に近いくらい激しく吹いてます。台風みたい。いちいち荒っぽい大陸性気候。
明日からの天気予報は、月曜日が最高気温25度、火曜日が27度、以下25度、26度。最低気温は、20度、20度、19度、19度となります。かなりしのぎやすい日々が続きます。こんな感じで3−4日周期で暑くなったり、涼しくなったりします。だから、昨日と今日とで気温が20度違うこともザラ、一日の間で20度違うのも、今日なんかまさにそうですが、ザラです。いつか書いたと思いますが、日中、43度から23度まで30分で20度下がったこともあります。
最高気温25度、最低気温19度というのは、日本の、例えば東京の場合、6月の平均(最高/最低)気温に相当します。今から一気に2ヶ月くらい逆戻りするわけで、ここで頭を切り替えないと、寝冷えしたり、風邪をひきます。しかし、これ、わかっていても風邪ひきます。これだけ特徴的な日だったらそれなりに気をつけますけど、平凡な日でも気が付くとガラッと気温が変わってしまったりしますから。
さて、今回はこのくらいにしておきましょう。
いつもの三分の1くらいの量だけど、このエッセイももう少し短くしていこうと思います。これ、いつも同じようなことを言いながら、ついついムキになって長くなってしまうのだけど、これだと書く方も読む方も負担ですので。新年の抱負のことを英語で、New Year resolutionといいます。パソコンのディスプレイの解像度も同じresolutionという単語を使いますが、もともとは「決意」の意味です。ですので、今年のレゾリューションとしては、エッセイ少な目、その分他のコンテンツを充実ということで。まあ、新年の抱負なんか2月になれば皆忘れてしまうものですが(^_^)。
さて、これからUPしますが、月曜日の朝9時の気温は20度。Tシャツ一枚では肌寒いくらいです。
文責:田村
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