今週の1枚(05.09.26)
写真は、Hunters Hill(より正確な行政区画はWoolwich)からノースシドニーやシティ方面を望む
先週に引き続いてリニューアルの進行状況ですが、先週ちらっと書いた死蔵してた「今週の一枚 Photo編」ですが、蔵から出してきて、新しいサーバーに復活UPしました。全部で220MB、6000ファイル以上あります。これまでのAPLaCの全部のコンテンツ総量が220MBくらいですから、一気にコンテンツが2倍に膨らんだことになります。もっとも画像中心ですから、実際の情報量そのものは大したことないですけど。
これでAPLaCの全コンテンツが440MB。そのうち、現在の今週の一枚エッセイ編が120MB、今度のPhoto編が210MBですから、ほぼ4分の3が「今週の一枚」で占められている計算になります。
「何を、まあ、ムキになって書いておるのだ、俺は?」といういつもの感慨に加えて、これはちょっと考えさせられる数字です。それだけのエネルギーがあったらもっと他のコーナーを充実させることも出来たわけです。かーなりほったらかしのコンテンツも多いですし、この後UPDATEするつもりが全然無いコンテンツもあります(ホテルガイドとかツアー情報などは将来的にも更新するつもりはないです)。ちょっとやりかけて終わってるコーナーもたくさんあります。ドライブガイドなんか出だしだけでで終わってます。「オーストラリアの基礎知識」もしかりです。「これでいいのか?」という気もしますね。
あ、そうそう、オーストラリアの基礎知識で思い出しけど、オーストラリアに長期滞在しに来る人、ワーホリでも留学でもなんでもいいですけど、ちょっと勉強不足ちゃう?と思われる部分があります。「勉強不足」って言い方はなんかアロガントですね、エラそげですね。なんと言えばいいのかな、「なんで興味を持たないのか、不思議」とでも言いましょうか。僕は、渡豪にあたって、特に準備なんか要らないよと書いてますし、せっせとインターネットで情報集めてもかなり無駄だと今この瞬間も思ってます。しかし、「準備」は要らないけど、もうちょっと予習くらいして来たら?ってのはあります。
例えばオーストラリアのことを通称「ダウンアンダー/Down Under」と呼ぶこと自体、殆どの人が知らないまま来てますし、もしかしたら知らないまま帰国してるかもしれない。母国イギリスへの愛憎入り混じった複雑な感情なり、本家欧米に対する疎外感を含んだほろ苦いプライドは、オーストラリア社会を織りなす重要な糸であり、オーストラリアを理解する一つの糸口になります。本家イギリス(あるいは欧米)からみてオーストラリアというのは地球の裏側にあるわけで、「足の下の方=地球の反対側で逆立ちしている連中」ということで「ダウンアンダー」。さらに転じて「超ド田舎でヘンな事してる連中」みたいな軽蔑的な含意もあります。オーストラリア人は、それを逆手にとって、「どうだい、俺たちってユニークだろう?なんつったってダウンアンダーなんだからな」みたいなやや倒錯したプライドに昇華していたりもします。
実際、オーストラリアに住んでいたらイヤでもDown Underという文字は目に付くし、それを会社名に取り入れている企業も結構あります。日常会話でもちょこちょこ出てきます。左の写真は、某語学学校で階段に表示されている「左側通行」のプレートですが、ここでも「ここダウンアンダーではこうだよ」ということで自然に使われています。本来が軽蔑的な語感を含むものを、敢えてポジティブに、笑いのめして自分たちでも使ってるというあたりにオーストラリア人のメンタリティが垣間見えるわけです。
日本だって、「極東」とか言われますよね。日本の世界地図は日本が中央に表示されるから全然「極東」にないけど、欧米の世界地図からすれば地図の右端のはみ出しそうな位置に日本はあります。まさに「極東」。ある意味「超ド田舎」ってことですわ。「極」だもん。英語でいえば "Far East"、”Far”だもん。しかし、日本人的にはこれを逆手にとって、「世界の東の果て、太陽の昇るところに神の住む国あり」「日出る処の天子」みたいなポジティブなプライドもまた持ちうるわけです。それにやや似てます。
そのへんのことって現地社会に溶け込んでいったり、ヒューマンウォッチングをするときに重要なヒントになると思うのだけど、でも皆さんあんまり興味がないみたい。1年も住んでればイヤでも目に付くだろうに、それでも知らないままってのは、現地のことを本気であんまり知りたいって思ってないのかな?って。別に「勉強せんかい」という説教がましいことを言ってるのではなく、それを知らないのになんでオーストラリアを選んだの?という部分ですね。何故選べる?という素朴な疑問です。
まあ、適当に物価も安いし、治安も良いし、日本との時差も少ないし、距離も手頃だしという理由はアリでしょう。ワーホリにしても、ニュージーランドはちょっと小さいし、カナダは広いけど寒そうだからということで、消去法的にオーストラリアになりましたってのもアリだと思います。普通の日常会話の応答くらいだったらそれで十分でしょう。いちいちシリアスに説明することもないでしょうし。でも、正真正銘、マジにそれだけってこたあ無いと思うのですね。普通、もうちょっと考えない?
これから自分の住む国なんだから、どういう構造で国が成り立っていて、どういう経済基盤があって、どういう社会が構築されていて、どういうメンタリティで人が動いていて、どういう問題があってということに興味が無いのかな?って不思議な気がするんですよ。なんで特別にオーストラリアを選んだの?と。「なるほどザわーるど」的に面白いトピックを並べてたってその国は分からんです。ゲイシャ、フジヤマ、アキハバラと並べたって日本に住むに当って屁の役にも立たないのと同じです。日本社会に入っていこうと思ったら、日本社会の成り立ち、そのメンタリティの構造、社会や人々の行動力学みたいなものが分からないと溶け込めないし、理解もしにくいでしょ。
渡豪にあたってのべ数千通にのぼる質問メールをいただいてますが、99%がダンドリに関するレベルです。今気候はどうなっているのか、どんな服を着ていけば良いか、携帯電話は日本で用意していった方がいいか、インターネットの接続は簡単か?とかそのあたりの質問が多いです。それはそれでいいです。疑問に思っても当然だし、聞いていただくのは always welcomeです。気候でも、検索サイトでオーストラリアの気象庁や新聞サイトを探せば現在の気温くらい分かるだろ?とは言いません。英語圏の国に行くのに、日本語ばっかりで情報を探してる時点でもう終わってるんじゃないの?そこを頑張って英語で検索することこそ真の「準備」じゃないの?とも言いません。英語ヤだもんね。それはわかる。痛いほど分かるぞ。だけど、99%、もっといえば99.9999%がそれで、「オーストラリアのマルチカルチャリズムは2000年の共和制移行がリファレンダムで頓挫して以来むしろ退行してきているのでしょうか?つまり行っても学ぶところの少ない、後ろ向きのクソ社会になりつつあるのでしょうか?」みたいな質問は殆ど無いです。ほとんどというか絶無でしょう。そーゆー Good Question!のメールが来たら嬉しいですね。
僕はそれがかなり不思議です。僕自身、「日本で学べないものを学ぶためにわざわざ外国に行く」というコンセプトがあったので(それは誰でもそうだと思う)、そのあたりのことって、そもそも「行くか/行かないか」という根幹に関わる、かなり重要なポイントだったりします。例えば、「日本になくてオーストラリアにあるものって何だ?」というと、出てくるものの一つとしてはマルチカルチャリズムとその実践です。200以上の民族を丸抱えにしながら皆でハッピーにやっていくスキルと努力とマジックは、人口比あたりコンマ数%中国人が微増しただけでキーキー金切り声を上げている、単一民族・金太郎飴社会にいたら絶対に学べないですからね。この種の「オーストラリアとは何か?」的な質問は、「何をしに行くの?」という根本に直結するから、もっともっと質問が来てしかるべき筈でしょう。でも、来ない。WHY?そんなの当然に知ってるから敢えて質問するまでもないということだったらいいのですけど。
でもマルチカルチャリズムにしても、対岸の火事じゃあないですよ。いずれ日本も少子化と若年労働力不足で大量に移民を必要とする時代がくるかも知れない、というかもう来てます。だから、どうやって移民を受け入れ、どうやって受け入れないか、どうやって選別するか、どうやってその社会に彼らをなじませていくか、どうやってヘルプしていくか、どうやってゲットー(民族的階層的スラム)を作らずいい治安を維持していくかは、今の日本に求められ、しかも絶対的に不足しているスキルでしょ。それを多少なりとも造詣を深くしていくことは、自分の将来のキャリア戦略からいってもアドバンテージになるんじゃないでしょうか?別にあなたが政治家とか官僚にならなくなって、どっかの会社で外国人労働者の人々を使ったり、面倒見たりする立場にたつことはありうるでしょう。そのときに、異文化の中でマイノリティでいる人間の気持ちがわかること、「違う人」に歩み寄ること、try to understand with respect ってことを皮膚感覚で体験してるのとしてないのとでは全然違うと思います。
また、日本が移民を迎え入れるという文脈じゃなくても、今後中国に活動の場を求める日本人は大量に出てくると思うのですが、そこで求められるのは異なる文化をいかに速やかに、いかに徹底的に理解するかであり、いかにうまく自分を馴染ませていくかであり、いかに自分の文化や考え方を分かりやすく表現するか、あるいはいかに妥協するか、です。グローバリゼーションというのは、とどのつまりは異文化の咀嚼と自文化の表現だと思われます。「英語を使った仕事をしたい」という人は沢山おられますが、英語という言語スキルに先立つのは異文化コミュニケーション能力であり、コミュニケーション能力を磨かずに言語スキルだけ磨いても結局現場ではそんなに役に立たない。その意味で、シドニーは異文化の坩堝でありながら、コンフリクトもカントリーリスクも少ない、まさにビギナー向けの最高の教室/道場だと思うわけです。こんなにとっつきやすくて、安全で、でも奥が深い場所は世界中どこ探してもそうそうあるもんじゃないです。でもあまりそのあたりのことって語られないし、そういう戦略眼をもって来られる人が少ないです。勿体無いなって思います。
でも、一方ではこういう視点から、HOW TO USE AUSTRALIA ということを積極的に提示しているところは少ないです。これはもう、僕も含めて、多くの留学系サイトやオーストラリア関連サイトの怠慢なのかもしれません。ただし、ビジネスとしてやってる留学サイトでそういった情報を提供する意味があるのか?ってのはあります。基本的には商売なんだから、「わあ、いいなー、オーストラリア」ってボヤヤンと美しい虹がかかるような表現やコピーが、やっぱりビジネス的には望ましいんですよね。そんなオーストラリアの社会構造とかシリアスなことを書いていても、夢見る夢子のお客さんには鬱陶しがられるだけですから、ビジネス的にはアウトってのも分かります。そのアウトなことをせっせとやってるから、僕はいつまでたっても経営的に大変なわけです、はい。個人サイトは、別にそこまで他人への教育効果を配慮しなきゃいけない義理はないですから、感じたことをそのまま書くことこそが正義でしょう。書いてる内容が合ってるか間違ってるかはともかく、「私にはこう思えた」って部分が大事。それを鵜呑みにするかどうかは読み手の自己責任でしょ。
ところで、どっちかというと、ある程度社会経験のある方が観光で数日滞在した場合の方が、オーストラリアの社会に関する鋭い洞察メールを送ってこられる傾向があります。まあ観光の方が住むところとかに気にせず短期集中できるのでしょう。長期間住むとなると生活基礎を固めることに頭がいきがちなのも止むを得ないです。ただ、それまで生きてきた社会洞察力みたいなものは確かに反映されるのでしょうね。ワーホリは現在30歳「まで」ですが、個人的には30歳「以上」にした方がいいかもしれないって思ったりします(何度も言ってますが)。ある程度社会経験を積んだ人の方が、海外は面白いと思います。オススメです。もちろん若いうちに海外に出るのも、人格形成とかキャリア策定のために非常に有意義なのは疑いがないです。でも、どちらが1年間でより多くのものを吸収するかというと、個人差を度外視すれば、上の年代だと思います。だから、上の世代は、お仕着せパックツアーなんかやってないで、「実質的にはワーホリ」みたいな感じでどんどん海外に出て行って欲しいです。得るものありますから。いや、あなたにも出来ます。僕にだって出来たんだから。
「僕にだって出来たんだから」、というのがAPLaCの原点です。「面白から、こっちおいで」という、無邪気な呼びかけをしたくてホームページを作ったのですし、今もその気持ちに変わりはないです。
と、段々話を余談から本題に回帰させてるわけですが、そのためにホームページを作っておきながら、その4分の3が「今週の一枚」だったりするのも、いかがなものかって考え込んだりしたるわけですね。
「いかがなものか」なんていってるそばから上記のようなことをここで書いてしまっています。ダンドリばかりに目を奪われずに、オーストラリアってなんだ?というど真ん中の直球的な準備をした方が役に立つよとかいうようなことは、こんな毎週の読み捨てエッセイではなく、「ワーホリの部屋」にでも書いたらいいのです。
しかし、この種の話というのは、なにかを書いている最中に、「おお、そう言えば」「あ、そうそう」という連想発想で出てくるのですね。「ワーホリさんの準備論について、さあ書こう」と思っても出てこないですね。出てきても、なんか、「これってわざわざ一章を設けて書くほどのことか?」とか思ったりもします。だからどうしてもフリートーク的なエッセイの中に登場するケースが多く、結果として全ホームページの4分3くらいに大事な情報がインデックスもろくすっぽないまま死蔵されているという状況になっています。
そう思うと、やっぱり「いかがなものか」と思いますよね。そこで、膨大なエッセイの行間に埋もれた情報を発掘し、有機的にインデックスをつけていくかという作業が必要なのではないかと。その第一弾として、前回書いたようにサイト内検索が出来るようにしました。
第二弾として、死蔵しているエッセイ+画像を復活し、復活するだけではなく、これにインデックスを付しました。全150回ほどあるものを、大きくエリア編とイベント編に分け、さらにエリア編は各サバーブごとにまとめました。イベント&トピック編も「日本帰省記」だったらそれをまとめました。これらのインデックスは、シドニーサバーブ&イベントギャラリー としてまとめてあります。
第三弾として、このギャラリーに付加情報をリンクさせていくことです。既にいくつか施していますが、ギャラリーに出てきた内容にこれまでの今週の一枚エッセイ編に出てきた内容とが関連する場合、関連リンクを張るという作業です。さらに画像だけでいえば、今回でエッセイ編266回目を迎えるのですから、これまで少なくとも266枚の写真が既出してるわけで、これらをリンクしていくという作業もあります。かなり面倒臭そうですが、新しいものほど画像が大きく綺麗ですからね。
第四弾としては、ギャラリーのみならず、他のコーナーにも積極的にサイト内リンクを張ることです。いわゆるクロスリファレンスの徹底です。既に料理関係のエッセイについては、料理コーナーの空腹絶倒にリンクを足しておきました。あと、一口情報とかオーストラリア現代用語の基礎知識あたりも相当掘り返してリンクをはって統合していく余地がありそうです。
このへんの地味な作業が、前回にいったリニューアルといっても水道管工事みたいにジミだということの実体です。
まあ、ボチボチ頑張っていきます。そうそう、徐々に皆さんをこれから新サイトの方に誘導していきます。「移転しました。3秒後に〜」という表示を出す(クライアント・プル)のはずいぶん先の話にするつもりですが。
しかし、上記のいずれも既にUPしてある情報をもう少しわかりやすく整理しようという話で、新規に創造するものではありません。新規に付加するもの、付加すべきもの、これもまたたくさんあります。例えば容量が増えたことからもっとガンガン画像をUPできるようになるわけで、上記のギャラリーに未公開の画像を付加することも可能です。僕のPCの中におさまっているシドニーの画像は2万枚を越えます。バイト数でいえば5GB以上。中にはしょーもない写真もたくさんありますし、公開に値しない駄作も多々ありますが、仮に10枚に1枚公開に値するとしても2000ファイル、500MBあります。ケチケチせんと、こういう未公開画像も積極的に放出したっていいんじゃないかって気持ちもあります。
画像ではない、純粋に文章コンテンツにしても、まだまだ足りないと思ってます。
これっぱかしでは全然オーストラリアを紹介したことになってないよなあって常々思うのですが、紹介より何より僕自身が分かってないよなって反省してます。
最近では官公庁や各種団体のホームページも丁寧に作りこまれていますから、その気になったらいくらでもデーターは引っ張り出せます。例えばですね、観光的にも有名なチャイナタウンのパディスマーケットですが、あそこで自分が店を出したらショバ代は幾らになるの?という素朴な疑問があったりします。木金は79ドル、土日は104ドルです。この程度のことだったら、Paddy's Market Operation Times & Feesに公表されてます。出店にあたっての規則・制約も載せてくれています。
こんな具合に、その気になったら幾らでもインターネットで引っ張り出してこれる情報を、いちいち日本語に訳して掲載して何になるのか?という気もします。第一、やりきれるものでもないですしね。必要なのは、これらの情報に対する評価というか、個人的な意見というか、まあ「編集」ですね。「一応こういうことが出来るようになってるけど、実際には機能してない」とか「非常に有用なシステムなんだけど英語がかなり流暢でないと使いこなせないから、事実上無意味」とか、そこらへんの対日本人への付加価値情報なのでしょう。これは載せる価値があるかなと思いますが、この種のことはやっぱり自分で実地で体験してみないと分からんですよね。
ただ、いずれにせよ系統だって取材方針を固めてやっていけるようなものでもないです。範囲があまりに膨大だし、正直、そんなことやってるヒマなんかないし。
そうなるとやっぱり、こういった今週の一枚系のエッセイなんですよね。
それについて書こうと思ってなくても、話の展開から、「あ、そうそう」ってのが出てきて、気になるから調べてみて、「おお、そうだったのか」というのが分かればそれを載せるという。そして、載せたコンテンツをあとでインデックスをつけるなり、リンクを張るなりしてアクセスしやすくする、ある程度まとまった量になったところで一章起こす、、、とまあ、こんな感じでやっていくしかないだろうなって思います。
というわけで、また改訂作業に戻ります。
文責:田村
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