今週の1枚(05.08.29)
ESSAY 222/Cross City Tunnel 〜 民営化と「トンネル会社」
写真は、Cross City Tunnel開通を報じる新聞記事から(多少コラージュしてますが、ハメこんである他の記事は下記に説明してます)。
こちらでは高速道路やトンネルなどが開通すると、オープニングで市民がゾロゾロ歩く機会があります。これは新しいインフラの完成を市民が皆で祝おうという趣旨のほかにも、単純に面白いからということもあるでしょうし、はたまた地元コミュニティや環境団体などがチェックをする機会を提供する意味もあるでしょう。特にトンネルの場合、ベンティレーション(換気システム)が関心の的になります。なんせ毎日数万台分の排気ガスが地上に放出されるわけですから。そして、この写真にあるように、建設関係者の家族が「お父さん(お母さん)の作ったものを見に行く」という意味もあるでしょう。日本では、あんまりこういうことやらないようですが、やればいいと思います。
今回は、現地の新聞から現地ネタをご紹介しましょう。
かねてから工事中だったCross City Tunnel/クロス・シティ・トンネルが、この文章を書いている今日(2005年8月28日)に開通します。
このトンネルは、南北に細長いシドニーシティの東西を横断するトンネルで、東はクングスクロスの先、Rushcutters Bayのあたりから、西はダーリングハーバーまでの2.1キロを結びます。
このトンネルが何故作られたのか?どういうメリットがあるか?ですが、これはもうシティの道路渋滞緩和、これに尽きるでしょう。
前にも書いたと思いますが、シドニーシティエリアというのはもう地形的・歴史的・宿命的に道路渋滞が起きます。まず地形的にというのはこういうことです。シドニーシティという、この縦2キロ横500メートル程度の狭いエリアは、北の部分を海に突き出す、いわゆる半島のような形になってます。この半島の先っぽにオペラハウスがあったり、ハーバーブリッジやロックスやサーキュラーキーという観光名所があります。海はさらに両側からシティを包むように西側はダーリングハーバーになって深く切れ込み、あるいは東側はWoolloomooloo Bayになって切れ込んでいます。要するにシティの上(北)半分は海に包まれているわけですね。観光的に言えば、都心近くまで海が来ており、白いオペラハウスが紺碧の海や空に映えて美しかったり、ホテルから歩いてナイトクルージングの乗り場に行けたりということで便利です。しかし地元住人にとっては必ずしもそう喜んでばかりはいられない。
なぜかというと、北半分を海に包まれているということは、そこで北+東西の道路が海でブッタ切られているということを意味します。北東西、どちらにいっても「行き止まり」なんです。そうなるとシティに入ってきた車両は、いわば袋のネズミ状態になり、北に向かった車は必ずまた南に戻ってくることになります。これが、海に囲まれてなかったら、北に向かった車はそのまま北に走り抜けます。東西もしかり。車がパッシングスルーしやすいわけです。でも、シドニーの場合は行った車は必ず戻ってくるわけですから、これは混んで当たり前です。混雑したバーゲン会場や展覧会を想像してもらえばわかりますが、混雑を緩和するときは順路を作って人の流れを一方向に固定するのがセオリーです。入り口と出口を同じにしてしまうと、もう神社の縁日状態になって、行く人と来る人ニ方向がゴチャゴチャになるわけですな。シドニーシティはまさにこれです。これが地形的な宿命。
次に歴史的な宿命ですが、シドニーはオーストラリアで一番古い町です。キャプテンクックの移民船団が最初に投錨したのがロックスで、そこから村づくりを始め、徐々にオーストラリア全土に広がっていったわけですね。とにかく古い。古いというのはどういうことかというと、人口数千人とか数万人とか、今の人口規模の100分の1くらいの規模の段階で町割り、つまり都市計画がなされているわけですね。その当時としては画期的に巨大な街路をはりめぐらしたとしても、今の感覚でいえばどうしても手狭になります。いくら道路を拡幅しようとしても、歴史的に由緒ある建物がドーンと建ってて(特にシティの北部)、いまさら壊せない。大体、人口400万の都市のCBD(都心)としては異様に狭いです。シティの目抜き通りのジョージストリートにしても、北部になったら片側2車線です。400万都市の心臓部の目抜き通りが片道2車線というのは、いかにも厳しい。しかし、拡幅しようにも限界がある。これが歴史的な宿命です。
というわけでシドニーシティの道路渋滞は、もう地形的、歴史的に不可避なのですね。
付言するに、2000年に開催されたオリンピックや観光地の中心ということで、「歩行者に優しい」街づくりがなされてきました。ただでさえ少ない車線をまた削減して歩道を広くしていってます。実際、ジョージストリートの南側、タウンホールからチャイナタウンにかけては歩道が広がりましたよね。10年前はあんなに歩道が広くなかったし、バブル崩壊後の打ち捨てられたビル建設現場やたらあちこちにあって、「そこだけ真っ暗」みたいな、「おいおい、治安的に大丈夫なんか」と不安になるような個所があちこちにありました。まあそれだけスリリングで、海外に来たという実感があって面白かったですけどね。今は、明るく綺麗な町並みになって、あんまり緊張感がないです。でも、治安的に言えば、昔よりも犯罪件数は増えてるだろうと思われるから、かえって問題かもしれないです。一見怖そうに見えて実は安全の方が、一見安全そうに見えて実はそうではないよりもマシですから。10年前には、今ほどシティに居住マンションも建ってなかったこともあいまって、「シティに住む」なんてのはもう論外、out of questionだったのですが、今は結構香港ばりの高層マンションなどに皆さん住んでます。
さて、当局も道路渋滞を指をくわえて見ているわけではなく、渋滞緩和の措置をいろいろと考えています。
ひとつは、オリンピック前に竣工した Eastern Distributor といわれるバイパスです。これが出来て、シティ東部、ウールームールー、ダーリングハースト、サリーヒルズあたりの混雑はかなり解消されました。これが出来る前は、例えば僕が空港まで皆さんをお迎えに行こうとしたら、鬼のように混んでましたからね。特にダーリングハーストのテイラーズ・スクエアの交差点あたりは、「いつになったら通過できるんだろう?」ってな感じでした。裏道も車でびっしり。こうなるとコミュニティにへったくれもないです。今は、テイラーズスクエアも一回の信号待ちで大体通過できるし、ダーリングハーストのシティ寄りのあたりなんか、エアポケットのように閑静なエリアに戻りました。作った甲斐があったというものです。
そして、今回のクロスシティトンネル(CCT)です。
これはシティの真中あたりを東西を横断するトンネルで、このトンネルのメリットは二つあると言われてます。一つは、シティの東部と西部をつなぐというメリットです。まずトンネル利用車両は、これまで延々待たされていた信号18個をフリーパス出来るというメリットがあります。これはこれで大きいですよね。なんせ平日の夕方あたりに、タウンホールあたりに車を進めようものなら死ぬほど混んでますもんね。特に東方面からキングスクロス経由でWilliam Stでシティに乗り込んだ場合、ハイドパークのあたりから混み始めて、もうニッチもサッチも状態になります。一回、ハイドパークのあたりからハーバーブリッジに乗るまで小一時間かかったことがあります。車が流れてたら5−10分なのに。平日の昼時なんかも混みまね。
ボンダイに住んでる人が、ライカードでイタリア料理を食べに行こうとか、フィッシュマーケットに魚を買いに行こうというときに重宝するでしょう。逆に、西のエリアに住んでる人が、ボンダイやクージーに泳ぎに行こうという場合も重宝します。これまでの東西リンクは、オックスフォードストリート、パデイントン経由という”王道”がありますが、王道なだけに混む。だから南下して南下して裏道を行こうとします。とりあえずフォーボーストリートを抜けてセントラル駅の裏手に出るとか、クリーブランドストリートを抜けてシドニー大学の近くまで行くか、さらに南下してWaterlooあたりの道をクネクネ抜けてニュータウンに行くか、もういっそのことヤケクソでバイパス使って空港経由でSydenhamまで抜けて、、とか、あれこれ頭に思い浮かんだりします。どのルートをとってもハンパではありません。ハンドル片手に「さーて、どーしよっかなー」と悩んだものです。西から東に抜ける場合も同じ。グリーブからボンダイに行こうと思っても、"How?"って感じで、鬱陶しさが勝って、「また今度にしよ」とか思ったりもします。その意味で、東西の架け橋ならぬ架けトンネルの効用はあると思います。
メリットの第二は、東西を往来する車両がシティから消えることです。つまりシティに用があるわけではなく、シティを通過するだけの車両の多くがトンネルに流れ、その分シティの車が減るという寸法です。これはやってみないとどれだけ効果があるのか分からないでしょうが、当局の推定では毎日9万台の車がトンネルを利用するというから、その分の車がシティから消えるということでもあります。こういう推定数字は希望的観測や水増しだったりすることも多いですが、仮に半分の4−5万台だとしても、それだけの車両がシティから消えてくれたら、やはりそれはビッグ・リリーフだと思いますね。
さて、このクロストンネルですが、有料です。それも、シドニーで初めて完全自動(電子タグ式)料金システムです。日本の高速道路でいうところのETCシステムですね。ETCはElectronic Toll Collectionの略ですから、こちらでE-Tollといってるものと同じです。これまでハーバーブリッジをはじめETCは沢山導入されていますが、料金所が一切なく、100%完全にETCだけというのは初めてです。完全ETCは、メルボルンにはあったのですが、シドニーにはありませんでした。それが初めてシドニーにも導入されることになったわけです。
しかし、これ、よしあしですよね。たしかに料金所を一切なくしてしまえば、料金所渋滞が解消されますから、車の流れは格段にスムーズになります。しかし、他のエリアからのビジターにとってはツライところです。メルボルンを走ったときもそう思いましたが、知らない町の高速道路を走ってるときに、「あ、ここはE-TOLLオンリーの道路だからやめよう」なんてとっさに判断できないし、仮にそういった表示が掲げられていてもチェックしきれるものではないです。よそ者に優しくないシステムだと言えましょう。
しかもこのE-TOLLのシステムが複数出来まして、全部で4種類あるようです。一つは、RTA(道路交通行政を一手に管轄する役所)が発行しているE-TOLLでして、最も普遍的なのかな?僕もこれを使ってます。他にも、今回Cross City Moterwayが発行することになるBeepTag、TOLLAUSTが出しているEXPRESS TAG、INTERLINK ROADSが出しているE−WAYなどがあるようです。それぞれ詳しいことは、www.rta.nsw.gov.au、 www.crosscity.com.au、 www.expresstag.com.au, www.tollpay.com.auをご覧になってください。
この4つのうち公共機関なのはRTAだけで、あとは民間会社です。それはWEBのアドレスがGOVではなく、COMになってることからも分かります。
なんでこんなに色々あるのか、僕も正確なところはわかりませんが、察するにこれはこちらのインフラ整備に関する行政と民間企業の関わり合いに端を発するのではないか。何を言ってるかというと、今回のクロストンネルもそうですが、他の高速道路であるM2やM5なんかもそうですが、あれって民間企業がお金をだして作って、所有して、経営して、収益をあげているという”私物”なのですね。国や州のものではないです。完全民営化というか、「化」ではないですね、最初から民営なんだから。公共のRATが施行している料金システムのほか、M2会社、M5会社がそれぞれ出しているシステムがあり、これに今回のクロストンネル社が出す方式があいまって4種類ということでしょう。いずれも完全に相互互換性があったと思います。
日本にいわゆる第三セクター方式というのがありますが、これは第一セクター(国や自治体)と第二セクター(民間企業)が共同出資&運営で第三セクター法人を立ちあげて、半官半民でやっていきましょうという方式です。でも、こっちは、第三セクターではなく、最初っから第二セクターだけというパターンが結構あったりするわけです。今回のクロストンネルも、保有している会社は ”CrossCity Motorway Pty Ltd”という会社です。まさに「トンネル会社」ですな(^^*)。このトンネル会社の持ち主は誰かというと、三大株主は Cheung Kong Infrastructure (CKI)という会社、あと clients of Deutsche Asset Management and Bilfinger Berger BOTと記されています。最初のCKI、チェンコング公共インフラ持株会社とでも訳すのでしょうか、は、バミューダ諸島の会社のようです。バミューダにしてるのは、もっぱらタックスヘイブンなどの税制上の理由でしょうから、おそらく名前から推測して華僑ビジネスの一環としてやっているのでしょう。ドイツアセットマネジメント社はドイツの投資会社、ビルフィンガー・ベルガー社もドイツの巨大な建設会社のようです。
このあたり、日本の土建行政からするとかなり異質ですよね。日本の場合は、出資者はとにかく国民で、税金を使って公共投資をし、それを司る道路公団が設立される。そして、建設事業の入札は談合で、地元のボスの政治家が音頭とって地元企業に分配し、道路公団は建設省などのお役人の天下りの温床となり、実際の建設費の倍くらいの建設費を計上し、あっちこっちで皆さんが甘い蜜を吸って美味しい思いをする。こうした積年のツケが溜まりにたまって今日本の財政は超火の車になってます。景気が悪い→景気対策→公共投資という、一部の人にとっては笑いの止まらないようなパターンが数十年続いてきましたからね。
そういった泥臭く素朴な日本の公共インフラ行政からすると、国や地方自治体はお金を出さず、海外の投資顧問会社など出資者を募って事業をやらせ、公共インフラを整備させてしまうという方法が今ひとつピンとこないと思います。僕もなんだか狐につままれたような気分が中々抜けません。「へ、税金使わないで、インフラ整備ができちゃうの?」と。そんな上手い話があるのか?と。
でも考えてみたら、鉄道だったら幾らでもありますよね。いわゆる私鉄です。あれは純然たる私企業ですからね。国や自治体がやることは、許認可や指導をしてコントロールすることだけです。よく考えてみたら、バスなんかもそうです。私鉄バスが出てます。飛行機なんか基本的には民間だし、TV局なんかNHK以外は民間です。要するに、巨大なインフラを構築して、一般の人に利用してもらって利用料を徴収するというシステムが出来れば、それはビジネスにもなりうるということですね。だから民間企業が参入してもちっとも不思議ではない。逆に言えば、高速道路だって、いちいち律儀に国が全部作って、メンテしなくたっていいのでしょう。もっとも、日本でも、地方の短いバイパスなどは私企業が保有していますし、昨今外国人投資家が買収を進めているというニュースがあることも、この間書いた記憶があります。
高速道路がビジネスとして成立するなら、あとは資本主義のシステムに沿ってやればいいということになります。つまり片や有利な投資先を探している金持ちがおり、片や道路建設や管理技術をもっている連中がおり、それらをマネージしたり経営するスキルをもってる連中がいる。だったら、彼らを集合させて、コンソーシアムという連合体を作り上げ、あとは彼らにやってもらいましょう、完成の暁には、料金を徴収してせいぜい儲けてくださいねってことです。逆に言えば、政府が音頭とって、世界中に「儲かりまっせ、一口のりまへんか?」と営業するわけですし、逆に「こうやったら儲かるからやんなはれ」と政府を焚きつける企業も出てくるでしょう。そして、それらの企業や投資家は、別にオーストラリア国民に限る必要なんかないですから、ドイツの投資顧問会社や、華僑企業が入ってきたりするわけですね。これが国際ビジネスってもんでしょう。今回のトンネル完成を記念して特集された新聞記事(折込別冊)に、ドイツの投資顧問会社は全面広告で完成を祝するとともに、投資顧問会社に投資を委託している大口投資家の氏名を掲示しています。右の写真参照。クリックすると大きくなります(以下同じ)。
しかし、こんな重要な公共インフラを純然たる「私有物」にしてしまっていいのか?って気になる向きもあるでしょう。例えば、このクロストンネル社が儲けるために後でめちゃくちゃ料金を値上げしてきたらどうするんだ?って。でも、それって日本の私鉄でも同じことでしょう?小田急線が、突如として初乗り100万円という途方もない料金設定にするかもしれないでしょ。でも、こういうことって起きていません。なぜか、一つには「市場原理」というものがあるからです。小田急線が突如初乗り100万円にしてもいいですよ。でも、そんなことしたら誰も乗りませんから、小田急電鉄はあっさり倒産するでしょう。こういった市場原理が一つの抑制になります。もう一つは、私企業であっても国や自治体の統制に服するようにするのは可能だということです。実際、私企業でも、公共に対する影響が大きい場合は、特別法で国や自治体がコントロールすることが出来るようになってます。考えてみれば、ガスも電気も全部私企業です。でも、公共料金を値上げする場合は、役所に値上げ申請をして許可を得ない限りできないようになってます。だから、勝手に値上げすることは出来ないし、出来ないようにする法的措置は十分に可能だということです。
国とは何か、自治体とはなにか、ガバーメントとはなにか?ですけど、終局的には「意思決定」だと思うのですよ。「ここに道路を通そう」とか、「ここに児童病院を作ろう」とか、「戦争をしよう」とかね。法律とはそういった意思決定の内容を書いたものです。公共的なことの意思決定権だけ政府、すなわち国民・住民の手にキープしてたらそれで必要十分です。その意思決定に沿ったものを誰が実行するかは、別問題。別にガバーメントでなくてもいいわけです。コントロールさえ出来てればいい。
いや、それは違う、やっぱり国の手で最後までキチンとやるべきだという意見の人もいるでしょう。それはそれで一理あるし、レスペクトします。でもね、例えば高速道路は国の税金で作って、国民が保有して、国民が管理すべきだといっても、実際に建設現場で作ってる人達は民間企業でしょ。現場でセメントこねたり、鉄骨を打ち込む作業まで100%公務員がやるべきだとまでは言わないでしょ。現場の作業員の人が食べるお弁当まで100%公務員の人が調理すべきだとは言わないでしょ。「国が作る」っていっても、大部分は「外注」に出すわけです。その外注を「入札」といい、そこで「談合」が起きてるわけでしょ。
思うのですけど、「なんとなく公共的なものが運営していると安心」というメンタリティが日本には強いですよね。公共=公正というイメージ。これは悪いことではないですよ。それだけ「公」というものを国民が信頼しているのですから、それは健康なことでもあります。でも、行き過ぎはマズイです。「公共」には二つの相反するイメージがあると思います。一つは、今言ったように、私企業と違って利潤追求を第一義にしないから公平で公正な運営が期待できること。これはいいイメージです。でもまったく相反するイメージもあります。「お役所仕事」ってやつです。異様に能率が悪い。お役所仕事だからアテにならない、失敗しても首にならない親方日の丸だからやることなすこといい加減だという悪いイメージです。これ、どっちも本当だと思います。これの合わせ鏡のように、私企業にも二つの善悪のイメージがあります。一つは物凄く効率的で、痒いところに手が届く消費者本位の運営という良いイメージ。もう一つは、私利私欲を追及するためにメチャクチャをするという悪徳企業のイメージです。これもどっちも本当でしょう。
整理して言えば、公共体には公正だろうけど能率が悪いというデメリットがあり、私企業には効率はいいだろうけど無軌道になりがちだというデメリットがあるわけで、それらをどうミックスさせればいいのかってことだと思います。そのミックスの細かなレシピー、配合比率こそが、今も日本では郵政民営化で、オーストラリアではテレストラの完全民営化で議論されている民営化問題なのでしょう。
だから、民営化の問題というのは、本来おっそろしくキメ細かくやらないといけないのでしょう。なんせレシピーですからね。甘辛煮を作るときに、醤油と砂糖をどのくらいの割合で入れるかという話です。醤油しか入れてはダメ、砂糖のみじゃ、という話ではない。ゆえに、民営化だから常に正しいとか、民営化だから絶対反対という話ではないのでしょう。民営のものは絶対ダメというならば、私立学校も、私鉄も私バスも民放も電気もガスも飛行機も全部ダメだということになります。コミュニストでもない限り、そんなこと言う人はいないでしょう?
付言しますに、日本の場合、公共だから公正且つ清廉潔白に運用されているってのはどうですかね?公正な筈の公共事業においてこそ、入札をめぐる談合だの、癒着だの、利権をめぐっての水面下の争い等、イリーガルなアクティビティが激しいんじゃないでしょうか。国立大学の運営や人事は私立大学のそれよりも常に透明で公正でしょうか。公的病院の方が私立病院よりもその経営は常にクリーンでしょうか。これは一概に言えないんじゃないでしょうか。
もう一つ付け加えておくと、クロストンネル社がこのトンネルを未来永劫保有するのではないです。期間限定です。(建設期間も含めて)33年契約らしく、それを過ぎたらトンネルは州政府の持ち物になるようです。なんで33年?といえば、おそらく投下資本を回収して十分に利潤をあげられる(投資効果をあげられる)期間として、算出されたのでしょう。
話をクロストンネルに戻します。料金所がないって話でした。
さて、気になるお値段ですが、3.53ドルだそうです。なんでそんなハンパな数字なの?ってまた気になる数字ですね。まあ、ETCでやるから(クレジット引き落とし等だから)ハンパな額でも問題ないわけですが、それにしてもこの数字はどこから出てきたのでしょうか。
支払方法ですが、上述のように自動引き落とし方式になってます。これには二つのパターンがあり、一つはTAG方式で、クロスシティトンネル会社に申請してBEEP TAGというタグ(信号発信装置)をゲットし、車に装着する方法。これをゲットしておけば、シドニーの他の有料道路(ハーバーブリッジにやらM2など)でも使えます。もう一つは、クロストンネルしか使わない人、あるいは旅行者のように数日しか使わない人の場合は、PASS方式というのがあるようです。これは、あらかじめ自分の車のナンバープレートを登録しておけば、タグなどの機械をゲット&装着しなくても、料金ポイントを通過するときにナンバープレートを認識、指定口座から引き落としてくれるシステムです。特に旅行者用に期間限定の1-7日パスというのもあるようです。
タグ方式だと3.53ドルですが、パス方式だとこれに手数料1.60ドルが加算され、5.13ドルになります。だから、しょっちゅう利用する住人だったらタグを買えってことですね。タグやパスの購入や登録は、インターネットで簡単に出来ます。
もし、事前にタグもパスも登録もせずにトンネルを通過してしまった場合はどうするか?ですが、24時間以内に、90 333 999 に電話するか、クロストンネルのHP(上記)にアクセスして事後登録をすればいいです。24時間以内に何もなされなかった場合、クロストンネス社は、料金不払い車としてRATに通報し、RATは14日以内に、料金+事務処理費用10ドルを払えという通知をするというシステムになってるようです。
なお料金の支払いは、クレジットまたは自動引落し(Direct Debit)ですが、どうしてもキャッシュがいいんだという人は、クロストンネル社のCustomer Service Centre (131 Cathedral Street, Woolloomooloo )までトコトコ歩いていって事務所で現金で払うことも可能だそうです。
以上、このあたりの会社の概要なり、料金支払いの方法なりは、ぜーんぶトンネル社のHPに書いてありますので、しっかり知りたい人はどうぞそちらをお読みください。
さて、これをUPする月曜日(8月29日)から、いよいよ本格的にトンネルも始動です。
ただ、地元ドライバーが慣れるまで当分混乱が予想されています。なんせ、このトンネル開通に伴って、かなり道路規制とかが変わるようですからね。また、トンネルの途中から入ったり、途中から出たり、途中で別の高速(Eastern Distrubuter)にジョイントできるのかできないのか、どうすればいいのか、皆が一通り走って覚えないとなりません。
新聞記事に掲載されてあった道路規制の変化や、ややこしそうなスポットを記した部分をスキャンしておきましたので、シドニーのドライバーの読者諸氏はどうぞご参考にしてください。って、もう知ってるとは思うけど。
文責:田村
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