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今週の1枚(04.11.01)
ESSAY 180/ Sculpture by the Sea (岸壁の造形展)
今週は、久しぶりに写真をメインにした「今週の一枚」をお送りします。
”久しぶり”といっても一体どれだけの人が覚えているか分からないのですが、エッセイ形式になってから180回4年近くを数えるのですが、それ以前には純粋に写真を主体にした「今週の一枚」を約3年150回くらいやっておりました。”一枚”といいながらも一回で20-30枚くらい掲載していたので、結局全部の写真は3000枚くらいになりますか。全部で220MBくらいあるのでサーバーに置いておけずその都度削除しており、現在APLaCのホームページのどこにもこのコンテンツはありません。
日曜日(10月31日)に、新聞でこの "Sculpture by the sea"イベント(”岸壁の造形展”とでも意訳しますか)があることを発見し、見に行ってきました。ことあるごとに触れてますが(ってそんなに言ってなかったかな)、シドニー・モーニング・ヘラルドという地元紙の土曜日版のなかにスペクトラムという名前の分冊があり、その真ん中あたりの見開き2ページを見ると、その週末のシドニーのイベントや見所がずらっと載っています。ほんとシドニーは年がら年中なんかイベントをやってますので、重宝しますよ。以前は”48hours"という分冊にあり、その前はまた別の個所にあったりしてちょこちょこ移動するのでお気をつけください。
本当は今週もエッセイを書こうと思い、実際にも半分以上書きあげていたのですが、このイベントを見に行き、わりと面白い写真を撮り貯めたので、急遽差し替えることにします。それにこの展覧会、まったく無料のうえに、今月(11月)の14日までやってます。現在シドニー在住で、興味のある方になるべく早めにお知らせしておこうと思います。
場所は、シドニーのイースタンサバーブ、ボンダイからブロンテまで続く海岸ぺりの遊歩道 (Bondi - Bronte clifftop walk)です。この全長2キロの遊歩道のうち、ボンダイからタマラマビーチまでの約1.5キロに渡って、112個の作品が展示されています。
鑑賞するのは前述のとおりまったくタダです。
ただし展覧順路の両端にブースがあって、そこで全76ページのカタログを8ドルで売ってます。これが結構な収益になるのでしょうね。賢いやり方だと思います。ちなみに子供用のカタログもあったりして、これは4ドル。子供用のものは買ってないのでどういうものか分かりませんが、折に触れ感じるのですが、社会全体として子供を大事にしてるなと思わされるところです。気に入った作品を投票したりも出来るのですが、子供用の投票もあったりします。
この展覧会、今年で8回目を数えるそうです。最初は純粋にボランティア的に始まったそうですが、今ではオーストラリアを代表する展覧会の一つであり、かつ野外展示としては世界最大規模だそうです(まあ、全長1.3キロですからね)。これだけのものを無料でやり続けているのも凄いのですが、大海原をバックグランドにするという最高の立地で開催できるのも無料だからこそでしょう。つまり入場料を徴収しだすと、どうしても囲いを作って目隠ししたりする作業が必要になってくるので、自ずと開催場所も限定されます。無料だったら、そのあたり全く気兼ねすることなく、広々とした場所を使うことが出来ます。
無料でやっていられるのもシドニー水道局を始めとする企業協賛やスポンサーがいるからですが、他にも一般市民の寄付があります。あなたも250ドルを払うと”サポーター”になれ、1500ドルを払うと”パトロン”になれます。また、カタログに名前が載ります。まあ、神社やお祭りで寄付をすると名前を張り出してもらうのと似たようなものですね。ちなみに、パトロン/patronというと、日本ではスナックやクラブのママの影の出資者(=愛人)的なニュアンスがありますが、本来の英語にはそんなニュアンスはありません。レストランの常連客なんかもパトロンと呼んだりしますので、妙な日本語英語は忘れてください(^_^)。
詳しいことは、ホームページがありますので、こちらをご参照ください。
腕に覚えのある方は見るだけではなく参加することも出来ます。上記のサイトでは、応募用紙もダウンロードできます。また、設置その他のボランティアも募集しています。これもサイトに書いています。コマメにアンテナを張っていれば、ボランティアの機会なんか幾らでも転がっているといういい例ですね。
能書きはこのくらいにして、では作品をお楽しみください。
↑写真上左・中央は、ブロンテ方面から見下ろすタマラマビーチ。ここに出展番号89番から112番の作品が展示されています。車をブロンテ方面に停めたという個人的な理由で、紹介する順番はタマラマ→ボンダイ方面になります。
↑写真上右のペンギンみたいな作品は、可愛くて結構好きです。実はこれ、オギノ・コウイチ氏という日本人の方の作品です。日本人の出展者はあと3名(だったかな)おられたと思います。展示されている112作品は、世界30カ国から応募された全600点から選び抜かれたものらしいのですが、日本のアーティストも中々頑張っているのですね。でも、日本人だからというわけではなく、この作品は愛らしくていいです。ハートがあるよね。カタログに記載されている作者のコメントによると、"人は一人では生きていけない We cannot live alone."だそうです。グラナイト(花崗岩)製で大きさもよく、値段が手ごろだったら買ってしまいたいくらいですが(殆どの作品には値がついてます)、これは3万ドルでした。ちょっと(大いに)無理ですね。
↑写真上左の作品もクるものがありました。すっごいベタなんだけど、下世話にならなくて、伝わってくるものがあります。”Man and child"という題名の作品ですが、「人は子供の過去であり、子供は人の未来である」というコメントが意味深ですね。本来逆じゃないの?と思われるのですが、輪廻のことを言っているのでしょうか。
写真上中央も日本のタカダ・サトル氏の作品。地表に巨大な線画を描くコンパスのようなものらしいですね。
写真上右は、イルカの形をしていますが、中はペットボトルなどのゴミだったりします。ちなみに魔法使いのコスプレをしている女の子がいますが、これはハロウィンの衣装でしょうね。ウチにも子供がやってきてお菓子をぶん取っていきました(だから事前にお菓子を買って用意しておくべし)。
↑写真上左はひたすら巨大なサングラス。
写真上中央は、レッドツェッペリンのプレゼンスとアルバムジャケットを思い出してしまいました。裏側に亀裂が入っているらしく、そこがミソのようです。しかし、実際に見ているときはそれに気づかず通り過ぎてしまいました。今、カタログをじっくり読んでて気づいた。もう一回見に行こうかしら。
写真上右は、堂々たる、そして分かりやすい作品ですね。この3作品いずれも作者は、アマチュアというか、プロのアーティストではないようです。サングラスの作者は写真業界で働いているそうですし、鳥の作者は伝統的な鍛冶屋業を営んでいるとか。
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写真上左。どれが作品なのかと言うと、乳母車です。その中に赤ん坊の人形があり、テープで泣き声を流しているという。タイトルは"high anxiety"、”非常に強い不安”とでもいうのでしょうか。作者のマイケル・コーデル氏は有名な映画監督らしいのですが、これは彫刻作品第一号だそうです。お値段はわずか75ドル80セント(材料代だけって気もします)。
写真上中央も分かりやすく力強い作品。機械文明と人間の関係を現しているようですが、どうも日本人的にはお釈迦様の手の平と孫悟空を思い出してしまいます。
↑ 写真上右は、この椅子が作品です。
↑写真上左は、なかなか豪快な作品で、「時間との競争」というタイトル。あまりにも多忙になりすぎた現代人のカリカチュアみたいなものでしょうか。
写真上中央はオーストリア(ラリアではなく)からの出展。タイトルは「客と主人」。なにやら茶道の世界のようです。
↑写真上左は、閉じ込められた筋斗雲みたいなのですが、タイトルも「拘束された自由」。めちゃ分かりやすいのですが、ここではオーストラリアで政治問題になっている難民収容所への批判も含まれているようです。
写真中央、これも椅子ですね。
写真右、これも分かりやすいなあと思ったら、タイトルは「レノン&マッカートニー」でした。ほお。
↑写真左は、これも日本からウシオ・ケンゾウ氏の作品。
写真中央は、外国から渡来した見慣れぬ舟を現し、これを見る人が物語を作るべしとコメントされてます。
↑写真左はテレビなどの廃品で作った象。インパクトあります。イギリスからの出展
写真中央は、これも日本からニッタ・ヨシオ氏の作品。
↑写真左は、ビーチサンダルを貼り付けて作った巨大なボトル。
写真中央と右、これらはいずれも海というバックグラウンドでますます映える作品ですね。
↑写真左はリンゴトーテム。作者はオーストラリア人ですが、生まれはウズベキスタン。シルクロードの中央アジアで、生まれた村にはリンゴの果樹園があったそうで、シルクロードの旅人がリンゴを東西に広めていったそうです。
写真中央、夕映えのボンダイが美しいのですが、手前にある作品は、フィッシュボトル・カルテットだそうです。魚が歌ってるわけですね。
他にも、載せたい写真は沢山あったのですが、キリがないのでやめます。
おもしろそうだな、と思ったら、どうぞご覧ください。
あ、そうそう、ボンダイビーチのボンダイパビリオンのギャラリーの中にも70点ほどの小品が収められているとのことです。こちらは僕もまだ見てません。
文責:田村
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