今週の1枚(01.09.03)
Essay 17 Melbourne / メルボルン(その3)
メルボルン特集の最終回です。
今回は、GOR、つまりグレート・オーシャン・ロードです。
メルボルンからGORを日帰りで行って帰ってくるというのはかなり強行軍らしく、キロ数でいっても600〜700キロくらいあるとのこと。東京〜岡山くらいありそうです。しかも僕の行ったのは最終日で、単にメルボルンに戻るだけではなく、そのまま空港までいってレンタカーを返し、飛行機に乗ってシドニーまで帰らないとならないという。遅れたら航空券パーになるという、かなり無理メなスケジュールでありました。「ほんまに行けるんかいな?」「まあ、無理そうだったら早めに帰ってこよう」と思ってたわけです。
結果的にいえば、何とかなりました。早朝7時くらいに出かけて、夕方6時にはメルボルンに戻ってました。しかし、まあ、「行って、タッチして、帰ってきた」ようなもんです。せっかく行くならもっとゆとりのある日程で行かれた方がいいと思います。
なーんの予備知識もない方、つまりは丁度一ヶ月前の僕のような方に、申し上げますと、グレート・オーシャン・ロードというのは、メルボルンの西側の海岸線に沿った、全長250キロの風光明媚な街道であります。
しかし、GORを「グレート」たらしめてるのは、波浪の侵食によって形成された奇岩奇景だと思います。この景色がなければ、別にそんなにグレートではないというか、この種の海岸線にそった街道だったらオーストラリアに幾らでもあるでしょうし、シドニーの周辺にもあります。
下の地図を見てください。これは縮小設定して表示してあるのでちょっと見にくいと思いますが、クリックすれば別のブラウザ画面で大きくなります。
GORの全てにこの奇岩が転がってるわけではなく、下の地図でいえば、青いラインマーカーで塗ってあるが中心部になります。GORは青いマーカー部分と黄色いマーカー部分全てなのですが、「うわっ」という絶景見所は青い部分になります。いわゆる、「12使徒」とか、よくオーストラリアのカレンダーの写真になってるようなところですね。
王道的なGORの楽しみ方は、メルボルンから南西に下ってきて、Geelongという町からGORに入り、途中のTorquay、Angelsea、Lorne, Applo Bayなどをのんびり楽しみつつ、Cape Otwayという自然公園で遊び、シメにProt Campbell周辺の奇岩を見てから、ゆるゆると帰るということになると思います。
が、日帰りでこれをやるのは不可能といってもいいと思います。海岸線の道路は、片道一車線のワインディングロードが多く、特に地図上茶色で示した部分がキツいのですが、頑張ってぶっ飛ばしても、ほとんどスピードが出ないです。また、おそらくは同乗者のうち車に酔う人が続出するでしょう。ましてや、各町をのんびり散策なんてしてたら、二日あっても足りないくらいでしょう。
「ワインディングロードがキツそう」というのは事前の下調べでなんとなく分かってましたから、往路は、Geelongから山沿いの道を進み、そのまま一気に「12使徒」などの名所を急襲するという方法にしました。義経のヒヨドリ越え(←あ〜変換しろよ、このくらい!漢字検索で探すの面倒くさいんだから。鵯越です)みたいなものですね、、って、「鵯越の戦」って知ってますよね?「鹿が通れるなら馬も通れる」とかいう話。日本人だったらこのくらい知ってた方がいいよ。ちなみに、Windowsの辞書を作った人は知らなかったのかもしれない。どれ、どのくらい知ってるか変換試しをしてみると、「桶狭間」OK、「長篠」ダメ、「一ノ谷」も「壇ノ裏」もダメじゃん。「賎ケ谷七本槍」なんてのも全然ダメ。家康、信長、光秀、秀吉はOKだけど、元就になるともう駄目。信玄はOKだけど、息子の勝頼になるともうダメ。何回か前にも言ったけど、このあたりの変換馬鹿辞書って本当に苛々するんですよね。
それはさておき、GORですが、行きは陸路を通った方がいいとおもいます。GeelongからPrinces Highwayを進みます。途中、Colacという町にインフォメーションセンターがありますが、立ち寄られるといいと思います。ここで、詳しく書かれた地図を無料でくれますし、12使徒までの道順を示した詳細な地図もくれました(ご丁寧にラインマーカーまで塗ってくれているという)。
下の写真、左がインフォメショーンセンター、右がもらった詳細地図(クリックすると大きくなります)。
「山沿いの道」といっても、ウネウネ峠道が続くわけではなく、Colacから12使徒のある海岸まではほとんど平地ですし、走りやすいです。農道を突っ走るという感じ。また、Princes HWYも感じのいい道でした。どうかすると、GORよりもこっちの方が奇麗で印象に残ってたりします。
下の写真は、12使徒の名所の駐車場での写真ですが、それまで通ってきた陸路方面を望みます。こんな感じでなかなかのどかで、美しいですよ。
以下、12使徒の写真です。
最初にお勉強ですが、なんでこんなモンができたのか?です。クリックして読んでみましょう。まあ、図を見れば一発でわかりますけど。一言でいえば、「ゆっくり崩壊していく過程」なのでしょう。
読んでみて初めて知ったのですが、前世紀(って前々世紀だと思われる)には、"Twelve Apostles"ではなく、"Sow and Piglets"と呼ばれていたのですね。
しかし、"sow"が雌豚、"piglets"が子豚達という単語なんか覚えておらず、「sow =種を撒く」しか思い付かず、「?」でありました。前回も述べましたが、観光英語というのは意外と難しいです。一回ジェノランケイブでガイドさんが解説してくれる英語も単語力不足でよく分からず自爆しました。だってさ、stalagmite=石筍(せきじゅん、また変換しない!)、stalactite =鍾乳石なんて単語、普通使わないからすぐに忘れてしまいますもんね。一回覚えたけど、今はすっかり忘れてしまっていた。このあたりが本当の語学力の差が出てくるところで、1年に一回も使わない単語をどれだけキチンと貯蔵してるか、ですよね。
これにも書いてあるように、展望台の位置からは12使徒全部見る事はできません。また、実際には12個以上あるようで(数え方にもよるのでしょうが)、だから「12使徒」というネーミングも結構観光用にコジツケたんじゃないの?って気もしたりして。
「地球の歩き方」には『見晴台から眺めるこの聖人達の顔は、何かしら物悲しく、そして、どことなくやさしい。ここで、この12人の使徒たちの語りかけを、じっと耳をすませて聞き取って欲しい』と書かれてますが、うーん、そこまで詩情あふれる気分にはならんかったです。
駐車場からはそこそこ歩きます。遊歩道も長いです。断崖まで車で乗り付けて、、というわけにはいきません。
以下の写真は望遠レンズを使ったのが殆どですので、実際に見た感じは、下左端よりもやや大きいってくらいです。この写真は逆に広角レンズをつかってますので、実際よりも小さく(広がって)見えます。
この下の3枚は、望遠バリバリのアップです。風が岩をえぐっている様子や、未だにてっぺんに緑が残ってる様子などがよく窺えます。
下の写真は、12使徒からほど近いところにある Loch Ard Gorgeです。
ロード・アード・ゴージという呼びにくい名前は、ここで難破したロード・アード号にちなんだ命名だそうです。ゴージ/gorgeは「渓谷」の意。
ここも歩かされます。マジメに全部見て歩いたら2時間かかるそうで、強行軍途上の身としてはとてもそこまでやってる余裕はなかったです。
下の左二枚を強引にくっつけてパノラマ風にしたのが下右端の写真です。なんとなく広さの感じがわかれば。
でもこの「島状」になってる部分ですが、左下端のように非常に薄いのですね。これ見てたら、なんだかアイスクリームケーキが食べたくなった(^^*)。
下の写真は、Port Camppbellよりも西にいった地点にある、The Grotto。
階段を降りていった底の地点からは、洞窟越しに海が見えます。ただ、「珍しい構図で海が見える」からいいっていうよりも、こじんまりした、静かな落ち着いた空間で、その心地よさの方がむしろ印象的でした。Port Campbellのインフォメショーンセンターのお姉さんに、「あと一つ見るなら、どこがいい?」と聞いたら、「私はGrottoがピースフルで好き」ということで行ってきました。
下の写真は、どこだっけな、The Archだったかしら。
右二枚の写真で遠望するのは、12使徒。ここから見ると、なるほど奇観ですね。
ちなみに、有名な London Bridgeはパスしました。数年前にアーチが崩れるまでは上を歩けたそうですが、崩壊してブリッジ状ではなくなってからは、当然ながら歩けないそうです。
下の写真は、帰路、Cape Otwayを過ぎて、Apollo Bayに向かう途中の山越えの写真。ちょっと内陸にはいるとこの種の風景がたくさんあって、目を楽しませてくれます。
ちなみに、Cape Otwayですが、先っぽまで行ったのはいいのですが、そこから遊歩道2時間コースとか書いてあるので挫折しました。海を見下ろす緑の丘に、牛さん達がのどかにうずくまってたりして、なかなかいい雰囲気のエリアなんですが、やっぱり「おし、見た!次っ!」みたいな強行軍には向いてませんね。
というわけでGORの奇岩地帯ですが、これもとても全部見切れていないです。が、遊歩道を延々歩かされている間に、段々「別にもう見なくていいや」ってな気にもなります。そりゃ、絶景だし奇景であることに違いはないのですが、基本パターンは一緒ですから、飽きるっちゃ飽きます。
もっとも印象に残ったのは、奇岩達もそうですが、実は海の美しさでした。いい色してるんですね。これ、写真に撮った段階で、「うう、こんな筈では」と思い、さらにスキャナーで取り込んだらガックリくるくらい画質が落ちます。いくらレタッチしても、もとがダメだからどうしようもないです。
というわけで実物はこの写真なんかよりももっと奇麗です。特に海の色。いわゆる「エメラルド色」なのですが、通常このテの色を見かける海は大体穏やかなんですが、ここは波浪がかなり厳しい。「激しく押し寄せるエメラルド色」というのは、なかなかいいものでありました。
そういえば、オーストラリアの風景写真って、カレンダーみてもガイドブック見ても、そりゃさすがにプロが撮っただけあってスゴイ出来なのですが、それでもまだ実物の方が数段良いってケースが多いです。絵葉書よりも実物がいいってケースは比較的マレだと思ってたけど、こっちではその方が当たり前のような気がします。ひとつにはスケールが雄大すぎて写真には収まりきらないことと、一説によるとオーストラリアは太陽光線が強すぎてフィルムに焼き付けたときに色が飛んでしまいがちという話も聞いた事があります。ただ、これは本当かどうか分かりませんが。でも、現像したのを見てガックシというのは、もう普通です。
ちなみに、ガイドブックなどによると、このあたりの奇岩地帯は朝日や夕日に照らされてシルエットになってる時間帯がカッコいいそうです。僕らは夕方まで待ってたら飛行機に乗り遅れちゃうから無理でしたけど、でもこの海の奇麗さを考えると昼でもいいんじゃないかって気もします。もっとも、いつもこれだけいい天気に恵まれるとは限りませんけど。
グレートオーシャンロードですが、車で行かれる場合、日帰り強行軍で「12使徒とその他」が見れたらそれでいい、というならば、行きも帰りも内陸ルートを通った方がいいかもしれないです。「それでは本当のグレートオーシャンロードを見たことにならない」という意見はもちろんあるだろうけど、でもGORを本当に堪能するなら最低1泊はしないと楽しめないと思います。
ただ、そこでの楽しみは、「グレートオーシャンロードだから」というよりは、オーストラリアの呑気な海岸線巡りの楽しみだと思います。それはそれで勿論楽しいのでしょうが、どうしてもここで無ければ味わえないというものでもないです。それこそオーストラリアの周囲グルリと海岸線ですから。
また、前述しましたが、海岸線のワインディングロードは、それなりにキツいです。
むしろゆったりとドライブを楽しむという感じで行かれたらいいでしょう。ちょっと走って町についたら休憩、という。日帰り強行軍には向いてないと思います。だいたい海岸線ドライブといっても四六時中海が見えてるわけでもないです(バスだったら車高が高いから、結構楽しめるかもしれないけど)。
また運転する側にとってはハンドル操作に忙しく海を見てる暇は無いです(^^*)。ワインディングロードで燃える人だったらともかく、楽チンに運転したかったら、内陸ルートの方をお薦めします。海は片側だけだけど、内陸の緑の丘陵やのどかな風景は両側というか前方全てですから、運転しながらでも楽しめますし。
ガイドブックでも、Lonly Planetなどのバックパッカー系の場合、重点的に書かれているのはGeelongからApollo Bayあたりで、「ここはサーファーのメッカ」みたいな感じで、町々を泊まり歩いていくような旅です。でもって、日本人的に「時間もないし、とにかく珍しいモノを見りゃあいいんじゃい」というパターンの場合は、内陸ルートの重点爆撃方式の方が向いているでしょう。
前回のペンギンもそうでしたけど、メルボルンの場合、天候が心配なので1週間くらい余裕をもって観光されたらいいんじゃないかと思います。「3日滞在したけど全部雨で、結局町をちょっとぶらついて終わり」って人、結構聞きますから。とは言いつつも、どんな旅をされるかは人それぞれですし、その人を取り巻く環境(仕事を何日休めるかとか)によります。そんなにホイホイ一週間休める人も少ないでしょう。
そういう意味では、留学とかワーホリとかで来てる間にいろいろ見て廻っておかれたらいいと思いますね。こっちで仕事をはじめちゃったら、やっぱり日本にいるのと同じで、そうそう休めませんからね。
写真・文/田村
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