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今週の1枚(01.08.27)
Essay 16 Melbourne / メルボルン(その1)
先週に引き続いて、メルボルンの特集です。「特集」といっても、2〜3日滞在した人間のベタな観光雑感でしかないのですが。
メルボルンの構造ですけど、ある意味では種々の点でシドニーと全然違います。が、見方を変えたら殆ど同じです。
何を言ってるかというと、一定規模以上の「人間の集落」の構成要素−−つまり、中心繁華街があり、官庁街があり、外部からの交通の要所があり、内部的な要所があり、山の手地区と下町エリアがあり、文化地区があり、工業エリアがある、、、、という様々なピースは、シドニーもメルボルンも、東京も大阪も宇都宮も高松もそう変わりはないと思います。ただその東西南北の配置が、各町によって違っているということですね。
CBD(中心部)についていえば、その形状は、シドニーの場合は南北に細長いコンニャクみたいな短冊型をしておりまして、北半分がビジネス&観光エリア、南半分が歓楽エリア(チャイナタウンやシネマやゲーセン)になってると大雑把に言えるとおもいます。で、北端にはオペラハウスやハーバーブリッジがあり、南端にはセントラル駅があって外部からの交通の要所(シドニー以外の地域との結節点)になっています。
ちなみに外部的な交通の要所が、ローカル的には全然要所になってないというのは結構ありふれた現象のようです。東京だったら、銀座、渋谷、新宿など東京駅周辺以上に栄えているエリアはいくらでもあります。京都もメイン繁華街は四条界隈ですし、日本の多くの都市はそうなっているように思います。岐阜もそうですし、福岡もそうでしょう。例外的なのは、大阪駅で、一応梅田キタ地域と一致していますが。シドニーの場合も中心はタウンホール〜マーティンプレイスエリアでしょう。
メルボルンの場合はどうなってるかというと、はっきりとは見極められなかったのですが、形状は東西にやや細長い正確な長方形型。不鮮明な地図ですが、左の地図の真中の、青く正確に長方形に区切られているエリアですね。
ざっと見た印象では、CBDの右半分(東)が左半分に比べて栄えているというか、観光客にとっつきやすい繁華街や名所旧跡の類が集中していた感じがしました。左半分は、どっちかというと殺風景なビジネスエリア。栄えている右半分でも、そのなかの上半分よりは下半分の方がより栄えている感じでした。正確にいえば、真ん中からやや下あたり。Burke StからCollins stのあたりですね。
外部への交通の要所は、左側(西)のスペンサー駅、南のフリンダース駅。空港からきたシャトルバスはスペンサー駅に着くのですが、スペンサー駅の方がよりガランとしているというか、よりセントラル駅っぽいですね。駅前が何にもなくて、駅裏を頑張って再開発してるようでしたので、状況は京都駅に似てるな、と。フリンダース駅のほうが、繁華街に近いだけあって、より賑やかな感じでした。ただ駅前を中心に栄えているという感じではなかったです。
サバーブ関連ですが、シティの南東にボタニックガーデンなど大きな緑地帯があり、そのさらに南東にサウス・ヤラという山の手エリアがあります。昔からお金持ちエリアだったらしく、Come Houseなんていう旧跡もあります。
ところでこのコモ・ハウスも行ってきましたが、そんな信じられないような豪華絢爛な豪邸というのではなく、「え、?これ?」という白塗りの住宅展示場の家みたいな外観だったりします。ただ、中は非常に広かったし、歴史やアンティークに興味があったら面白いと思います。無料ガイドツアーも30分に一回くらいの頻度でやってて、これは聞いた方がいいのですが(というか勝手に中を見れないから聞かざるを得ないのだが)、流暢に説明してくれるのはいいのですが、かなり英語に自信があっても、日本語パンフレットもらった方がいいです。僕も半分くらいしかわからんかった。なにが分からんかというと、昔の洋館の生活用式や各パーツに関する単語を知らないこと。昔の日本家屋でいえば、「書生さん」「女中部屋」「欄間」とか「違棚」とかいうのに相当する英単語を知らないし、知ってても具体的な知識になってないでしょ?だから、結局、キメの説明語句が分からんからなんだかわからなくなります。また、結構スラングが多かったですね。彼らはスラングだと思ってないのだろうけど、たとえば、"pot" でトイレを意味するなんてのは、あんまり試験ででませんからね。そういえば、”トィニー”って単語が分からず、あとで調べても分からんかった。というわけで、日本語パンフをもらいましょう。説明の最初に言えば無料で貸してくれると思いますし、帰りに入り口で4ドルで買ってもいいでしょう。
それはさておきサバーブですが、シティの南南西を少し進んで海に突き当たる地点が、セント・キルダという街になります。シドニーでいえばボンダイに相当します。
シティの北側はカールトンというイタリア人街があり、イタリア料理をはじめレストラン街になってます。事前に聞いた話では、メルボルンに比べて、チャイナタウンはシドニーの方がよく、イタリア料理街はメルボルンの方がいいと。夜にカールトンを訪れたのですが、なるほどわかりやすく賑わってました。というか、レストランが軒並み続いていて、そこで客引きやってるのですよね。イタリア料理の客引きなんか初めて見た。
味は、まあ、はっきりいって大したことなかったのですが、これは店の選び方を間違えたのでしょうし、これはもうしょうがないという感じですね。シドニーのイタリアン街ライカードは、メルボルンに比べるともっと広範囲に分散してるので、見た感じは結構ガランとしてるし、一番賑やかそうなところに一番おいしい店があるわけでもないですし。たとえば、一番といわれるフラッティーニなんかかなり離れてますから。多分、カールトンも事情は同じなのでしょう。
シドニーとの比較を大雑把にいってしまうと、メルボルンのサバーブ配置は、地図を逆時計廻りに90度まわすとシドニーになるような気がします。つまり、北部がシドニーでいえば西部、南部が東部に相当するのではないか、と。メルボルン北部は、前述のカールトンがあり、またメルボルン大学がありで、学生と洗練されたエスニック色が強い感じ。シドニーでいえば、シドニー大学とライカードみたいな、インナーウェストですね。
メルボルンの南部は、山の手エリアということでシドニーのイースタンサバーブに該当し、ボタニックガーデンとその周辺の球場などの感じは、シドニーでいえばムーアパークからセンテニアルパークに連なる感じに似てます。またその先に海があり、海辺にボンダイのようなセントキルダがあるあたりもやや似てるかな、と。
まあ、これは、あくまで大雑把に見ての話です。もっとじっくり見ていけばいろいろとわかるのでしょうし、大体この説だと、エスニックエリアの本場リッチモンドは、シドニーでは東部になっちゃって破綻しちゃったりするのですね(^^*)。でも、リッチモンド、行ってる暇なかったですね。車で通り過ぎただけで。次回の課題です。
写真にいきます。
まずは、メルボルン都心の南側にある
ボタニック・ガーデン
。上の大きな写真もそうです。
ここはなかなか奇麗でしたね。シドニーのボタニックガーデンはすぐ目の前に海がきていて、これもいい感じなのですが、メルボルンのボタニックガーデンは海はないけど、よりまとまってる感じがしました。中に池もあるし、結構絵になる構図もたくさんあるし。
シドニーの場合は、ボタニックガーデンといっても、そう言われないと気づかない、ただの広々とした公園みたいな感じですもんね。メルボルンと違って、入口に案内書やショップがあったりするわけでもないですし。
左下は、昼間寝ているコウモリ君達。
セント・キルダ/St Kilda
です。
この街が一番面白かったですね。ガイドブックなどによりますと、夜は歓楽街になって、女性の一人歩きは止めた方がいいと書いてありましたが、昼間に行く分には、なんてことない、のどかなで開放的な、まるでカルフォルニアのような海辺の町です。
この街が面白いなと思ったのは、複数の町のキャラが一つになってる部分です。
まず夜に歓楽街になるという部分(実際には夜に訪れてないけど)についてはシドニーではキングスクロス的な部分があり、海に近い開放的な町という意味ではボンダイビーチ的であり、サブカルチャー的に面白いという意味では、ニュータウンやグリーブ的であったりします。おまけにルナ・パークまであったりして。
つまりシドニーでは幾つかの町で「分業」しているのが、メルボルンではセントキルダに集中しているという部分ですね。
ここでまた、いい加減な思い付きの仮説をいいますと、オーストラリアには二つの相反するカルチャー要素があるとします。一つは大英帝国の流れを汲むスクエアな要素。もうひとつは、「南の国」の明るく楽天的な要素。ついでにいえば、戦後大量に流れ込んできた移民達によるエスニック要素という第三の要素があり、オーストラリアのあらゆる事象は、この三つの要素の組み合わせに分解できるんじゃないかと。ちょうど、色の三元色みたいに。
メルボルンとシドニーの違いは、大英帝国要素と楽天要素のレシピーの差であって、メルボルンの方が大英帝国要素の方が強い。7:3くらいじゃなかろか。シドニーは、半分半分くらい。これが、もっと北に向かうと、楽天要素の比重が大きくなっていって、ゴールドコーストとかケアンズになると、ほとんど90%が南の国の楽天要素になってるような気がします。第三のエスニック要素は、これはシドニーが一番強いような気がします。
そういう仮説を前提にすると、メルボルンにおいては、セント・キルダ的なボヘミアンな人達は、メインストリームの大英帝国要素に押されて、シドニーほど行き場所がなく、結果としてセントキルダに集中してるのではなかろーか?
セントキルダの街の成り立ち=最初高級地で、それがすたれてスラム化し、さらに復活して人気エリアになる=は、シドニーでいえばパディントンのそれに相当するように思います。が、シドニーの場合、パディントンはそのままヤッピー化&観光化し、本物のボヘミアンな方々はニュータウンなりクロスなりボンダイビーチなりに分散していったんだけど、メルボルンではそのままセントキルダに留まり、いろんな方向性が一つの町に凝縮されているように思いました。
まあ、あまり真剣に受け止めないでください。所詮、ざっと見ただけの印象に過ぎませんから。
写真です。
写真下左ですが、これはショッピングセンターの壁に描かれていたものですが、なかなかよく出来ている「セントキルダの自画像」だと思います。こんなイってる絵が、落書きではなく、ちゃんと街の自画像的にショッピングセンターに描かれているあたり、セントキルダの人々のアイデンティティとプライドを垣間見たような気がします。また、気をつけて見ていると、歩道に埋め込まれている模様なんかも、ちょっとサイケっぽくて、そのあたりにも窺えます。
ルナパーク(という名のショボい遊園地)が、あるのにはちょっとびっくりしました。
あんな趣味の悪いお月様、シドニーだけだろうと思いましたが、メルボルンにもあるのね。表情はちがうのですが、「同一人物」って感じです。セントキルダのルナ様の方が、よりパンキッシュな顔をしてらっしゃいます。
日曜日に訪れたので、海岸通を中心にフリーマーケットをやってました。
さて、次は最もベタな観光、
フィリップ島のペンギンパレード
です。
シティからは、高速道路のM1を南下し、さらに幹線道路を表示にしたがって進んでいけば、比較的簡単にたどり着けます。大体シティから100キロちょっとくらいですから、シドニーでいえば、ブルーマウンテンくらいの距離だとおもいます。
ただ、フィリップ島からの帰りですが、これは必然的に夜になるのですが(ペンギンは日没に見られるので、見物してると帰りは完全に夜になってしまう)、なかなか走りにくかったです。M1高速まで入ってしまえばいいのですが、それまでの数十キロ、普通の道を80〜100キロ前後でぶっ飛ばすのですが、殆どの区間に街灯がないです。
オーストラリアの田舎道で街灯がないのは当たり前ですが、日本から来ていきなり走るにはちょっと面食らうかもしれません。アップビームにすると見えるのですが、そうすると対向車の迷惑になりますからダウンビームにします。すると今度は殆ど前方は真っ暗なままです。はるか向こうに対向車の光が見えて、「あの光の左側を走るわけね」くらいの見当で、100キロぶっとばすのは慣れないとなかなか大変。ましてや雨なんか降ってたら。
まあ、シーズンだったらメルボルンに帰る車が連なってるでしょうから、先行車のテールランプを道標にして走ればいいですが、今回みたいにシーズンオフになると、道が空いてるのはいいのですが、単独で走らねばならないのでちょっと疲れます。
そうそう、M1との合流地点ですが、標識がわかりにくかったです。大きな高速道路との立体交差のところに差し掛かったら、スピード落として慎重に入り口を探そう。高架を潜り抜けてすぐの所だったと思いますが、キュッと左折すると合流できます。これ、「あれ?あれ?」で行き過ぎてしまって、それからしばらく迷ってしまった。
フィリップ島(といっても江ノ島みたいに橋でつながっている)ですが、のびやかで奇麗なところです。
ペンギンパレードは、島の先端部分でやるのですが、この風景が美しい。別にペンギンなんか見なくても、結構満足しますよ。
この先端のさらに先に、オットセイ君達が集う岩場、Seal Rocks があるのですが、ここには別途船のツアーで行かねばなりません。時間がないので、見る暇なかったですが、本当は1泊くらいするのが理想なんでしょうね。なんせ、この日だけで、このページに書いてあるところ全て見るという強行軍やってましたので。
ビジターセンターも充実してます。日本語のパンフレットもちゃんとありました。コーラの自動販売機にも、オットセイ君(アシカのような気もするが(^^*))が出演しています。
で、ペンギン君です。
えーと、まず寒いと言われてます。もともと寒冷なメルボルンですが、それよりも外洋に面してるフィリップ島はさらに寒いです。でもって、ペンギン君上陸予想時刻のかなり前から入場しますので、吹きさらしの海岸で延々1時間以上待ち続けることにもなります。僕が行ったときは、かなり温暖な日だったのですが、それでも吹きさらし1時間以上はコタえます。
ただ、この防寒具問題が頭の痛いところで、日本から来たら四季が逆転してるので、クソ暑い日本をダウンジャケットかなんか持って出かけないといけない、嵩張ってどーしよーもないという問題があります。ホテルによっては、ペンギン見物に毛布を貸してくれるようですし、別に部屋から予備の毛布をもってきちゃえばいいんじゃないかと思います。僕らも車に積んでもっていきました(もっとも、「これだったら大丈夫だろ」とナメて使わなかったのですが、30分経過くらいで後悔しはじめました)。
ペンギン君ですが、一日の海のお仕事を終えて陸の巣に帰る上陸シーンを皆で見物するわけですね。
まあ、言って見りゃそれだけのことなんですが、メジャーで成功し得た幾つかの「売り」があります。
@小さくて可愛い。フェアリーペンギンという一番小さなペンギンらしく、小さいです。20〜30センチくらいじゃないかな。小さな体でチョコチョコ歩くのが、まず可愛い。
Aグループ行動をしている。三々五々帰ってくるのではなく、10頭内外の小集団で動きます。集団でちょこちょこ歩くのがまた可愛い。
B行動パターンがまた可愛い。最初に斥侯が出てきて様子を窺って、「よし」となったらいつの間にか海から他の連中が出現して、集団で陸に向かいます。で、これがまた、「引っ張る」んですよね。ちょっと調べて、チャッチャと移動するのではなく、斥侯がしばらく見て、「よし」となって歩き出してからでも、「あ、駄目だ、やっぱり退却!」とばかりに、全員180度クルリと反転して、いっせいにワーっと海に帰るわけです。これを何度も繰り返す。この「ワーッ」がまた可愛い。
ただですね、観客席から見てるとですね、別の目の前に来るわけでも無いので、結構離れています。体が小さいのが災いして、遠くから見てると、白いカモメと区別がつかなかったりすることもあります。まあ集団で動き出したらよく見えるんだけど、斥侯が調べるときなんか動きませんから、「あれ?ペンギン?」てな感じです。
上陸したペンギン君達は、そのまま陸地の草むらに進み、それぞれに巣に帰るのでしょうが、別に浜辺で見なくても、浜辺に通じる遊歩道あたりからでも散らばったペンギン君を見ることができます。どうかすると、こっちの方がゆっくり、間近に見れたりします。
ちなみに写真撮影は不可。
昔のガイドブックだと、フラッシュ撮影だけが禁止と書いてありますが、現在は全面不可。そりゃ、まあ、どうしたって間違えてフラッシュ焚く奴は不可避的に出てくるでしょうし、当然の措置だとは思います。なお、カメラの持ち込み自体はいいみたいです。ただ、入口で別途支給される黒い袋にカメラを入れられてますけど。
ペンギンが上陸するのは、なにもここだけではなく、タスマニアでも見たことがありますが、地勢的、確率的にここが一番見やすいのでしょうね、多分。
写真・文/田村
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