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今週の1枚(03.09.08)
ESSAY121/本州四国連絡架橋について
写真は、朝帰りの人々がそぞろ歩く、土曜日の早朝のCity
ジャスミンの花も満開になり、朝晩にまだ肌寒さを残しながらも、シドニーはいよいよ春本番の風情です。日本は、そろそろ秋の高い空になりつつあるでしょう。いかがお過ごしでしょうか?
さて、先日、四国は徳島からおいでになった方とお話する機会があり、たまたま話題は本州四国連絡架橋、いわゆる瀬戸大橋や鳴門大橋になりました。地元徳島の人の素朴な感想としては、「橋なんか無い方が良かった」ということで、「ほお?」と続けてお聞きするに、要するに橋の料金が高すぎるという点に帰着するようです。「行って帰って1万円じゃ、やってられないですよ」。
高い高いとは噂には聞いてましたが、確かにそんな値段じゃ気楽に行けないですよね。通行料金は片道で表示されますが、行きっぱなしということは通常ありえないから、どうしても往復料金になり、そうなると約1万円。バブルの頃ならいざ知らず、デフレ社会の昨今、「ちょっとドライブしてみようか」という値段じゃないでしょう。結果として、本州と四国の往来は従来よりも落ち込み、四国はより孤島になり、経済圏全体に影響を与えている、と。あと、昔のようにフェリーだったら、家族サービスのお父さんとしても、フェリー乗船中はドライブしないでのんびりタバコ吸ってればいいから身体も楽だったし、船に乗ること自体がレジャーになりえたという視点もあるそうです。
そして、話はオーストラリアの定番話題に移るわけで、オーストラリアには有料道路はないのか?ということですが、有料道路はあります。しかし、全国でたしか6本、うちシドニーに4本(M2、M4、M5、ハーバーブリッジ&トンネル&ED)、メルボルンのCitylinkとクィーンズランドのMotorwayという話を聞いたことがあります。料金も、シドニーで一番高いのは、たしかEDの4ドルだったと思います。300円前後。購買力平価から推測するに、大阪の阪神高速くらいの値ごろ感覚だと思います。だからオーストラリアでは「道路を通るのにお金を払う」というのは、異例中の異例な事態であり、道路なんか無料で当たり前です。
「どうしてこんなに違うのか?」という話は、以前したと記憶してますが、いくらオーストラリアが人口が少なく(1800万だから日本の7分の1弱くらい)、道路数も沢山必要ではないといっても、国土の広さがケタ違い(約22-23倍)だから積算距離では似たようなものでしょうし、オーストラリアの方が道路建設&維持費が圧倒的に安く済む、というものでもないでしょう。
まあ、このあたりの日本の道路行政の話は、日本の病巣の一つとして今話題にもなってますし、僕なんかよりも皆さんの方が詳しいでしょう。ただ、単に税金の無駄遣いと途方も無い累積赤字国債だけに留まらず、それ以上に道路を作って地域経済&生活にむしろダメージを与えているとすれば、ますますもってヒドイ話だなとは思います。
ところで、四国大橋ですが、本当はいくらするのでしょう?橋はいくつもありますが、例えば瀬戸大橋をみてみました。本州四国連絡橋公団のサイトに料金表がありました。それによりますと、岡山県側の最も海に近いICである児島から四国の坂出まで、中型車の場合、片道5900円するようです。山陽自動車道から倉敷JCTを経由して一気に行こうと思ったら早島ICを使うことになりますが、そうすると6800円。うーむ、「行って帰って一万円」というのは本当でしたね(別に疑ってたわけではないけど)。1万円どころか、1万2、3千円するではないか。これって、東京=大阪の新幹線くらいの値段だぞ。
ちなみに、3本ある橋のうち、明石・淡路・鳴門大橋の場合、神戸西=鳴門まで中型車片道9000円(!)、尾道=今治ルートの西瀬戸自動車道、通称「しまなみ海道」というのですね、初めて知った、の場合、区間ごとに細切れにされてますが、全部合算して西瀬戸尾道から今治まで、3050円+2550円+2100円だから7700円になります。ふーむ、こうしてみると、瀬戸大橋が一番「安い」ことになりますな。すごいな。
しかし、財政事情とか色々難しい問題はあるのでしょうが、これって本気で料金設定してるのか?疑問になりますね。普通の市民が気軽に利用できる値段じゃないですよ。これはもう家族が危篤とか受験とか、”なんかすごく特別なときに使う”というプライスという感じですね。公団のHPでは、行政コストの財務書類がいろいろ掲示されていて、この通行料金でもまだ全然赤字であることが示されているけど、道路なんかモト取らなくたっていいんじゃないですか?
資料によると、いろいろな積算方法はありつつ、だいたい年間経費が2200億円だそうです。うち自己収入は半分以下の900億弱、あとは損失1200億円。でも、2200億「ぽっち」の経費だったら、もう全額国が払って、通行料完全無料にしたらいいんじゃないかのか?って気もします。だって、今みたいにクソ高い通行料を設定しても、1200億の損失なんでしょ?あと900億くらいいいじゃないですか、って。国債累積700兆円からしたら7000分の1くらいでしょうが。それで、本州と四国の往来が活発になり、経済波及効果があるんだったら、お釣りがくるんじゃないですか。
もっと正確にいいますと、年間経費2200億のうち、橋の維持管理コストはわずか230億に過ぎません。支払い利息などが1200億あるわけです。あとは600億の減価償却。だから、つもり積もった借金さえなければ(減価償却を考えなければ)、収入900億、維持費230億なんだから、バリバリ黒字なんですね。減価償却いれてトントンくらいです。要するにこれまでの借金だけがガンなのであり、利息を払うためにまた借金をするという馬鹿なことをしてるから大変なのです。
今地元はどういう話になってるのかな?と思って、いろいろ検索したら、地元の山陽新聞で大々的に特集しておりました。http://www.sanyo.oni.co.jp/kikaku/2002/tiiki-saisei/ に「地域再生」と銘打った長い連載シリーズがありまして、全85本の記事がまるまるインターネットで読めました。しかし、ついでに見てたのですが、山陽新聞、面白いですね。こういう地方紙の方が海外から見てて、地域の実情がリアルに出ていて今の日本がよりよく分かるような気がします。「炎の岡山・焼肉情報」なんてシリーズが、妙にツボにはまって笑ってしまいました。いいなあ、焼肉食べたいなあ。
さて、このシリーズ、85本ですから本一冊分くらいの内容があるのですが、パラパラと読んでるうちに面白くて、ナナメ読みですが全部読んでしまいました。非常に勉強になりました。まず、地元の現状を理解するために、目に付いた事実だけ箇条書きしておきます。
・架橋の町、児島も坂出も、橋が出来て逆に人口が減少している。
・本州四国を行き来するビジネスマンは、通行料の高さのあまり、児島で車を降り、そこから電車に乗り換え橋を渡って、また坂出で予め駐車してあった車で動く。月ぎめの駐車料金を含めても、あるいはレンタカーを借りても、その方が断然安くつく。
・瀬戸大橋開通後も、宇高航路のフェリーを利用するトラックの台数は開通前の80%に上る(「30%程度しか残らない」との国の予想と大きく違う)。
・経済波及効果と期待された工場・企業などの四国進出は、殆ど期待はずれに終わっている(公団は「効果はあった」と言ってるけど)
・架橋とともに整備された四国の高速道であるが、運輸業界の価格競争等の厳しい環境から、多くのトラックは一般道を相変わらず利用している。ましてや、キロあたりの通行料単価が高速道の11倍である架橋の利用は”論外”。そのため大気汚染や交通事故など地元の問題は解決していない
・橋の下に位置する与島と櫃石島。後者の方が児島にやや近いために島民割引で橋の通行料は普通車243円。そのため、若者Uターン現象がおき、人口は与島の1.4倍になる。一方かつては櫃石島の1.5倍の人口のあった与島は島民割引でも通行料が尚高く(3倍)、年間の通行料だけでも40万円になるらしく、そのため人口は減少し、幼稚園・小学・中学はいずれも生徒が一人もいなくなり廃校の危機に。大々的に作られたレジャーランドも閑古鳥で、先行き不安を抱えている。
・開通前に予想された「中四国にまたがる広域観光」も頓挫。一昨年9月にゴールドタワー閉鎖、昨年1月に鷲羽グランドホテルとリゾナーレ宇多津それぞれ閉鎖、スカイパークホテル倉敷は近く研修施設へ変わる予定、与島のフィッシャーマンズワーフは譲渡先を探しており、定期観光船の利用者は初年度21万人から01年には殆ど20分の1の1.3万人に激減。
・観光への悪影響は”橋近辺”に留まらず、金毘羅さんの琴平でここ2年で100万人近く(約4分の1)観光客が減っているのをはじめ、屋島や栗林公園も橋開通前よりも悪化している。結局は”橋代”。バス一台の通行料は6万円。乗客30人でツアーを組んでも1泊2日で1万6千円程度かかる。沖縄二泊三日2万円強、北海道3万円のデフレ時代にこれでは対抗できない。
・対岸の岡山側でも事情は似ていて、美観地区は24年前、後楽園は40年前の水準にまで戻っている。しかし、岡山県全体の観光客数はほぼ変わらない。これは、観光客数がのべ人数でカウントされ、且つ観光地が増え、県内の日帰り観光が増えたためだと思われ、観光現場の危機感は深い。
・宅急便でも引越便でも、四国への送る場合料金が高い。岡山から香川に送るよりも九州に送るほうが安いという逆転現象が起きている。理由は橋代。橋の影響は他にもあり、中型車から通行料が安い軽自動車への買い替えや、さらに橋代片道肩代わりサービスをうたって集客に努力している四国のゴルフ場などもある。
・橋開通にむけ、岡山県が作った物流の要になる総合流通センターは、しかし橋代のあまりの高さにフェリー利用を強いられ、抜群の立地を誇りながらも、なんのため物流センターを作ったのかわからないことになっている。
・それでも架橋により岡山県の立地の良さが認められ、西日本の物流の要所になっており、7年前に岡山県は倉庫面積で広島県を抜いた。しかし、最近の趨勢は、西日本全体で関西ひとつに集約しようという傾向も出てきている。岡山に物流拠点を持つ、グンゼ、キリン、カルピスなどは、しかし四国への輸送はフェリーである。
・坂出市では瀬戸大橋料金値下げの百万人署名運動が起こり、108万人が署名した。
・橋の交通量は、開設当初から国の予想の40%にとどまっている。
・悪い話ばかりではなく、良い影響もある。例えば高知県は農産物の出荷ルートが出来たことなどで県民所得は17%伸びた。香川も伸びている。また、本四間の通勤通学者なども増えており、生活圏は広がっているともいえる(ただ、これは車というよりも比較的安い電車の影響だろうが)。与島も、ゴミ収集車が来るようになって生活が便利になった側面もある。
以上のような現状(といっても記事掲載は一年前)がありつつ、この問題をどう解決するか、国レベルで協議されました。
小泉構造改革の目玉というべき、猪瀬直樹氏などが参加している”道路関係四公団民営化推進委員会”という機関がこの問題を検討していました。そこで繰り広げられたのは、国と地方との壮絶なバトルであり、これまでのいい加減な公共工事のつもり積もったツケをどうしたらいいかという悩ましい問題でありました。
この3本の橋はなにをどうやっても「破産」してます。あれだけ高い通行料であっても年間収入は800億とか900億。しかし、累積負債は3.8兆円で、年間返済の利子だけでも1200億。利息すら返しきれない。しかし、よく読んでみると、「ものすごく不経済な道路」というわけではないです。というのは、この橋の三ルートの収支率(01年度)は178で、これは100円の収入を得るために178円を支出した計算になります。でも、それを言うなら、中国道も177で似たようなものです。さらに、関西空港道は381、北関東道201など、もっともっと経営効率の悪い道路は全国各地にあります。今首都圏で作ってる道路も、キロあたりの工事費は架橋の二倍、だけど料金は5分の1だと聞きますから、10倍くらい採算性が悪いことを堂々と首都でやっている。
そもそも、橋や道路という公共インフラは、採算性だけが成功の基準ではないハズです。無料の公衆便所だって、無料だから採算性だけでいけば”極悪”でしょう。無料の図書館だって、公園だって同じことです。そもそも、圧倒的大多数の普通の道路は無料だから、あれだって採算性で考えていけばとんでもなく不採算です。だから、公共インフラについて考えるならば、第一に「役に立ってるかどうか」であり、第二にコストパフォーマンスはいいかどうかです。公衆便所でも、人里離れた北海道の原野に、大理石を敷き詰めた超豪華トイレを作るのはダメだけど、誰もが安心して使える清潔なトイレが駅や商店街にあるならOKでしょう。
その意味で、採算性がどうのとか、破綻がどうのだけで本四架橋を論じるのは、そもそもの視点が変だと思います。それに採算性だけでいっても、全国の高速道路は全部ひとまとめにして収支勘定しており、だからドル箱東名名神高速のあがりで、地方に高速道路を作っているけど、なぜか本四架橋だけはこの仲間に入れられず、独立した本四架橋公団になってます。だから何かと槍玉に上がるのですが、それがそもそも妙な話です。本四架橋は、「便利だし、皆使いたいけど、高くて使えない」ということが問題であり、あるだけ無駄という種類のものではない。その存在の有効性は誰もが認めているのに、料金設定が法外だから無用の長物になっているわけです。なんで法外な料金になるかというと、公共インフラなのにここだけ独立採算を求められているからであり、何だか知らないけど、採算性の方が公共の便益よりも大事であるかのような逆立ちした論理が最初からあります。
さらに問題は、4兆円近い負債も、最初はまだそれほど傷が深くなかったことです。あまりの料金の高さに客足が伸びない時点で、国や公団が機敏に対処してたら、まだまだなんとかなった可能性が高いです。それを「十分採算ベースに乗る予定だから」と再三強弁を繰り返し、当初の負債額を3倍くらいに膨らませ、経済圏の落ち込みで四国の人口がガタ減りし、さらに収入が落ち込み、しまいには借金して借金を返すという、どうしようもない悪循環の自己破産パターンを、この15年間繰り返し、ろくな対応をしなかったことが何よりも問題でしょう。地元に負担させた建築費の一部も、97年だっけには償還が済んでいるはずなのに(十府県市の出資負担の総額は5500億円だったと思う)、さらに追加追加で地元に負担が求められています。
前記の道路公団民営化推進委員会は、議論の結果、「国費(一兆円)による債務カット、地元の追加負担(十五年間出資延長)、本四連絡橋の通行料金の半額化」という基本方針を打ち出しました。
ここでもすったもんだの議論があったようです。特に委員会(のなかでも猪瀬氏)の、地元に対する強硬な見方が、地元の反発を招いていました。彼の所論はこうです。もともと四国に3本も橋なんか必要なかった。それを地元が陳情誘致合戦を繰り返し、政治家を動員し、結果として国費をつかって3本も橋を掛けさせた。その結果この赤字なんだから、国が1兆円出して尻拭いをするんだから、地元も誘致した責任で応分の負担をせよ、ということです。
これに対する地元の意見は、陳情誘致はどこでもやってるし、地域競争という意味ではある種当然。それに「3本掛けろ」という要請は誰もしておらず、3本掛けたのは、結局「決めきれないから全部作ろう、何とかなるでしょ」という判断をした国であり、その最終判断の席に地方は参加させてももらえなかった。前述のように採算性からひとり本四架橋だけが槍玉にあがるのは不公平だし、地元の出資比率はどの道路よりも高い。地元はやることをやってるのに、それを今更「誘致責任」で、国の経営責任はまったく問われないまま、地元ひとりが悪者にされるのは納得がいかない。負債をここまで膨らませた元凶も国(公団)ならば、今回追加出資を決めるのも国。結局地方は意思決定の場に一度も参加させてもらっていないのに、ツケだけ廻されてはたまったものではない、というものです。
猪瀬氏の言いたいこともわかります。もともとが構造改革の一環、民営化促進という視点で、「大ナタを振るう」のが役目の委員会としては、骨太にバッサバッサと切って、将来へのめどを立てるのが仕事です。国も地方も火の車なのは一緒だから、グタグダ言ってないで、出す金出してさっさと精算しようぜという言い方になるのも無理ないでしょう。しかし、国側の経営責任や地方分権が進まないという大本の問題点になると、「そんな話を今やっても仕方がない」という言い方をしながら、地元に「誘致責任」と言うのは、第三者の僕が見てても、やはりスジが通らない気がします。もちろん、今の日本の現状を考えたら、大局的にはそのくらいの矛盾は枝葉末節だろうし、あえて乱暴な話をしなければならない必要性はわかるのだけど、実際に負担する地元としては、そういう言い方されたら怒るのも無理ないし、「ふざけんじゃねえ」という気分にもなるでしょう。
経営責任でいうなら、本四公団は、言うまでも無く建設省のお役人の天下りのための団体であり、総裁の報酬は昨年度より百万円減になったそうだけど、それでもまだ約二千四百万円に上るそうです。これ、民間企業だったら、家屋敷全部投げ出して、本人は自己破産でしょうに。
それでも、委員会の最終案は「料金の半額化」という意味で、まだしも要諦は押さえていました。一番の問題は、借金の額ではなく、公共インフラが使われてないことだという正しい視点に立ってますから、それは評価できるし、半額ですら全然手ぬるいと思うくらいです。
ああ、だが、しかし、ここから先が、日本的な、”あまりにも日本的な”ツイストがかかります。以上のような答申を受けて、肝心の国交省の最終案(政府案)はどうなったかというと、「国費で債務カット、地元の追加負担(十年延長)」を取り入れ、通行料金は原則現状維持」というものでした。地元側から評価できる部分としては、「誘致責任」という言い方はしなくなり、その意味で「冤罪は晴れた」と溜飲は下がったらしいのです。国費は投入+地元追加支出はまだいいとして、問題は「料金現状維持」という部分ですね。正確には2割引きらしいのだけど、今現在特別期間で最初から2割引してるから、結局現状維持になるわけです。
僕も、これを書くまで本四連絡架橋の問題にそんなに注目してなかったのですが、順を追って読み進むうちに、最後に事実上「料金据え置き」という政府プランが出てきて、椅子から転げ落ちそうになりました。「なにを考えてるんだ?」と。お前ら、本当に「政治」やってんのか?と、700兆円もこれまで散々似たようなことやってきながら、たかが目先の1兆やそこらの帳尻合わせのために、あの膨大な社会インフラをこのまま死蔵させるつもりなのか?
四国の人口は、今や減少して全国の3−4%しかいないそうですが、橋によって影響を被る人々は、京阪神や九州まで含めれば人口の10%、20%はいるでしょう。年間GDPが500兆円として100兆円くらいは叩き出してるでしょう。中国、四国、関西、九州エリアにおいて、この橋が生かされることによる経済効果は、100兆円のうちどんなに少なく見積もっても1%はあるでしょう。それだけで1兆円創出効果はあるじゃないか。10年で10兆、余裕じゃん。それを、チマチマ妙な帳尻合わせに走りおってからに、政治というのは金銭勘定だけじゃないでしょ。それは政治ではなく「事務」でしょ。最終的に、税収やら通行料やらで上がりがなくたって、国民全体がそれで豊かになれば、それは良い政策じゃないのか?
大体なんのために構造改革をやり、何のためにリストラや民営化をしてるのだろう?この国は猿が国家を動かしてるのか?と真剣に疑問に思ってしまった。
さらに、トホホの猿ぶりが露呈するのは、まだ道路作ってることです。それも瀬戸大橋につながる瀬戸中央自動車と平行して船倉曽原線という4車線道路を作っています。要するに通行料が高すぎるから、誰も利用せず、渋滞が緩和されないから、また国費を投入して新たに道路を作っているという。かなり唖然としますね。こんなことをしてるのは、何もここに限ったことではないようです。
通行料金を安くするための国費投入は”国民にツケを回すことになり反対”というのは扇千景の発言であり、この人は、「本四架橋を作ったのは政策判断の誤りだった」とか皆が知ってることを今更ながらエラそうに発言したり、「利潤が上がってる道路から先に値下げをすべきだ」という経済原理をまるで無視した発言もしてます。そうなんですよね、こういった道路行政の最高首脳たる国土交通大臣が、このオバハンなんですよね。なんでこんなのが大臣やってるのだろう?猿が国を動かしてるというレトリックもまんざら言い過ぎでもないかもしれん。まあ、こんなのが大臣やってるくらいなんだから、本四架橋のマトモな解決なんか期待しちゃいけないのかもしれないですよね。
でも、「猿なんだからしょうがないよ」という結論では、真面目に頑張ってる地元の人たちがあまりにも気の毒すぎます。
誘致責任とか、地域エゴとかいうけど、そもそも誰だって「誘致」なんて情けないことしたくないでしょうよ。誘致するのは、最初から財源を奪われているからであり、地方の税収を中央で吸い上げられているからでしょう。全然、地方分権なんか進んでないじゃん。着工当時はまだしも、地方分権が政治課題になって既に10年以上たつのに、自分の地元にかかってる橋の料金だって自分で決めることが出来ない、その決定過程に正式に参加することすら出来ない。自分で決めうるだけの政治的権力も与えられてなければ、財政的基盤も奪われている。日本の知事さん達のメインの仕事は、中央の役人に乞食のように土下座して哀願することだというけど、ほんと大和朝廷の租・庸・調の頃からこの国は何も変わってないじゃん。
最初に書いたのですが、本四架橋の収入900億に対して、維持費はわずか230億。減価償却いれてもトントンないしちょっと黒字くらい。橋単独だったら、問題ないじゃないですか。ただただ、ひたすら過去のいい加減な日本式意思決定と先送りのシワヨセである膨大な4兆近い借財にあえいでいるわけですよね。
年金破綻などで、「現在のツケを将来の世代に廻すのか」という言い方がされますが、この件に関する限り、今が我々がその「将来の世代」なのでしょうね。それに借金って言っても、国債とか郵貯とかそんなのだから、国民が国民に負ってる自己借金みたいなものです。だったら、もう国費で借金チャラにするなどして、あとは地元に全部管理させたらいいじゃないかと思います。
大体、今のこの死蔵インフラの壮大な無駄を目の前にしつつ、「料金据え置き」なんて決定をする政府に、まともな「管理能力」があるとは思えないもん。108万人の値下げ要求署名を集めた地元に全部やらせたらいいんじゃないかと。地方分権推進なんでしょう?
橋の一つや三つ任せられないで、なにが地方分権かと思います。
料金3分の1にしても、通行料が4倍になるんだったら儲かるわけだし、お得なクーポン券や定期券、地元温泉などとタイアップして通行領収書を見せると宿代3割引にする提携旅館を募るとか。今も、公団のHPを見ると、瀬戸大橋フォトコンテストを主催したり、シンボルキャラクターの「わたる君」を作ったり、経費削減努力を訴えたり、素朴な作りのHPの風情とあいまって、それなりに努力してるのは認めます。公団が天下り先として叩かれるのは一部の上層部だけで、あとは実直で真面目な地域の方々なのでしょう。その方々に恨みはないです。可哀想なくらいだ。
でも、「公団」という公的なシバリがかかってる以上、やっぱり限界あります。この種のタイアップとか、メディアミックスとかいうのは、公団の職員さんになるようなスクエアな人間類型とはまた違った、というか対極にあるような人たちの方が得意です。本四架橋の通行料の高さがゆえに、冒頭で述べたように、社会のあちこちで大きな影響を受けているとするならば、逆にそれだけ影響力が大きい存在だということでもあり、ビジネスチャンスの宝庫であるともいえます。
うわあ、メチャクチャ勿体ないなーって思います。
世界のトップレベルの技術の橋があります、それを期待してる人も数百万という単位でいます、立地も十分、借金をのければ採算性あるし、ねえ、ちょっとこれらをいじくって活用したら、どれだけの効果があるか?それをみすみす、、、、と思うと、当事者でなくても歯がゆく思います。
なんとかならんのか?って思いますよね。
でも、なんとかなりますよ。とにかくこんな国民舐めたようなことやってる政府は一回クビにすべきでしょう。次の総選挙で、自民党が政権から転げ落ちたら、また違った風が吹くでしょう。当たり前のことが当たり前に出来ないのは、それ相応の理由があるからで、つまりはこれまでの経緯でのシガラミとか利害関係だと思うのです。前提となる人間関係が同じである以上、どんなに頑張っても限度はありますから、とにかく一回前提の枠組みを壊すしかないでしょう。癒着という名のシガラミを壊すこと、壊せないまでも揺さぶりをかけること。別に野党に多くは期待してないです。野党の最大のメリットは、「与党じゃない」というところにあります。政策とか、政権担当能力も大事なんだろうけど、一番大事なのは、特に今の日本で大事なのは、「与党じゃない」連中に権力が動くことであり、何よりも「動く」という状態を作り、それによって「変化をもたせ」「シャンとさせ、メリハリをつけさせる」ところにあると思います。その意味では一瞬共産党が政権とった方が一番のカンフル剤になるかもしれない。
最後に別のニュースですが、ここのところ、首都圏に人口が再集中しているそうです。すでにこのエッセイでおなじみになったFPCJのジャパンブリーフのニュースです。
それによりますと、
8月20日に総理府の発表した人口動態調査によると、今年3月末時点の都道府県人口は、東京が前年同期比で9万748人増加(伸び率0.76%)と、数・率ともに前年に続きトップを占めた。出生者数から死亡者数を引いた自然増加数の伸び率は0.11%と全国平均並みだったが、転入者数から転出者数を引いた社会増加数の伸び率が0.65%と極めて高かった。以下、神奈川の6万2113人(同0.73%)増、愛知の3万3244人(同0.48%)増、埼玉の2万7762人(同0.40%)増、千葉の2万7703人(0.47%)増で、首都圏以外で増加数上位5位に入ったのは愛知県だけ。
全国で人口が増えた18都府県を見ても、首都圏のほか、名古屋圏(愛知、岐阜、三重)、関西圏(京都、大阪、兵庫、奈良)の3大都市圏に多い。ただ、首都圏が28万8000人増えたのに対し、名古屋圏は3万3000人、関西圏は1万5000人のそれぞれ増加にとどまり、首都圏への一極集中ぶりが際立っている。
中でも近年は、東京都心への人口流入が目立ち、2003年版国土交通白書によれば、90年代前半に減少傾向にあった東京23区の人口は94年から減少率を縮小したあと、97年以降は増加に転換。さらに、99年に増加率が0.52%と首都圏全体(0.45%)を上回って以降、その乖離幅は拡大傾向にある。総務省が住民基本台帳を基に3月に公表した「02年(暦年)人口移動の現況」でも、東京23区の転入超過数は5万3000人と、横浜市(2万2000人)や札幌市(9000人)を大幅に上回った。この傾向は03年1―3月期も続いている。
ということです。
本四架橋の話と続けて読むと、今の日本の姿がよく見えます。ほんと、目指すべき方向と全然違う方向に進んでいるとしか言いようがないです。
(文責・田村)
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