今週の1枚(01.05.21)
雑文/ あっ、エルビスだ!
上の写真、マイクをもって歌ってる男。エルビス・プレスリーである。よく見ると全然似てないような気もするのだが、なぜか「あ、エルビスだ」とわかってしまうのである。
僕はエルビスをリアルタイムで知ってるわけでもないし、当然見たこともないし、それどころか大して興味もない。だから、なんで見た瞬間「あ、エルビスだ!」とわかってしまうのか不思議なのだが、とにかくわかってしまうのである。
このエルビス人形、シドニーでは超有名である、というのは嘘である。でも、本当かもしれない。
「何をワケわからんこと言ってるのだ、こいつは?」と思われるあろう。それは、つまり、こういうことである。
僕はそんなにテレビも雑誌も熱心に見てるわけではないので、そんなに確かなことは言えないのだけど、シドニーでこのエルビス人形が大流行して、皆が先を争って買っている、、、という事実は無いと思う。また、世界でも貴重なエルビス人形として、オークションで記録的な高値がついてマスコミを賑わした、、、という事実も無いだろう。つまりは、マスコミにこのエルビス人形が登場したことは無いと思う。僕が知らないだけって可能性も大いにあるだろうが、少なくとも連日連夜報道していたということはないだろう。また、他のオージーとの会話で出てきたりしたこともないし、日本人同志の会話で出てきたこともない。
要するに、シドニーのとある中古家具屋の店先に、売ってるんだか、客寄せの飾りに過ぎないのかよくわからんけど、このエルビス人形を見かけることがママある、という程度である。だから、全然、有名ではないと思う。
しかし、このエルビス人形の印象は強烈である。
僕がエルビス人形と最初に出会ったのはいつだろうか?車で信号待ちをしているときに、ふと目をやって、「なんじゃ、こりゃあ?」と思ったのが最初だったと思う。
上の写真の画像データーによれば、この写真の最終更新日は97年の12月になっている。少なくともそれ以前に撮影したのだろう。また、最初にこの人形を見たときにいきなり撮影したという記憶はなく(そんなに四六時中デジカメを用意して車を運転してるわけではない)、何度か目に見たとき、たまたまデジカメを持ってたので、信号待ちの暇つぶしに撮影したのだと記憶している。だから、最初に見たのはかなり古い頃であろう。
そんな昔の話なのに、未だに覚えていて、ましてや今こうして雑文まで書いているわけであるから、その印象たるや相当に強烈である。
僕がこれだけ印象深く覚えているくらいだから、他のシドニー在住のドライバー達だって、きっと同じなんじゃないかと思う。皆、それをとりたてて話題にするわけでないし、相互に確認し合うわけではないが、シドニーに何年も暮していて車であちこち走ってる人だったら、実は殆ど全員知っているかもしれない。つまり、潜在的には「超有名」なんじゃないかと思うわけである。
また、このエルビス人形、出現の仕方が非常に憎いのである。
常に常にこの店先にいるわけではない。というか居ない方が多い。すっかりエルビス人形なんか忘れた頃、ドーンとまた出現したりするもんだから、「おお、そういえば!」と強烈に記憶喚起されてしまう。
人間の記憶というのは、ずーっと連続して接しているときよりも、一回忘れてまた思い出す事を繰り返した方が定着率が高いように思う。毎日見てたら、そのうちただの風景になってしまって、注意力も落ちるし、全然印象に残らなくなってしまう。
その意味でいえば、このエルビスの出現頻度とパターンは、人間の記憶パターンを十分に知悉した誰か頭のイイ奴が、綿密に最も効果的な出現プログラムを組んでるんじゃないか?と思われるくらいである。いやがおうでも覚えてしまう。
エルビス人形は、この店先 − Lane Coveの Burns Bay Rd と Penrose St との交差点にある−だけにいるのではない。実は他の所でも見たという目撃証言も多数あるのである。「目撃証言」っつっても、僕が自分で見ただけのことなんだけど。
例えば、パラマッタロード、CamperdownあたりからCityに向かう、シドニー大学が右手に見え始めるよりちょっと前あたりのアンティークショップの店先にこのエルビスが出現していた。それも一度ではなく、数回。「おおっ、なんでコレがこんなところに!」ということで、印象はひときわ鮮烈であった。
それだけではない。あるときは、ボンダイ・ジャンクションに向かう、Old Southhead Rdの路上先でも目撃したこともあるし、Manlyの近く、Balgowlahあたりから北に伸び、French Forestに向かう Wakehurst Parkwayという、原生林のなかの一本道という結構人里離れた感じの道でも目撃したことがある。
このように、エルビスは、シドニー各所に神出鬼没に出現しているのである。出くわす度に、「おおっ、何故ここに居るんだあ!」と強烈に印象に残るのである。これで覚えなかったら馬鹿である。
ところでこのエルビス人形、一体なんなんだろう?
他の場所で目撃したあと、再び何食わぬ顔で上の写真の店に戻ってきてるから、どうも転々売買されているとは思いにくい。なんかのデコレーション用として貸し出されているのだろう。それは有料で貸し出されているのだろうか、だとしたら1日幾らなのか?あるいは全くの無料で、友人間を渡り歩いているだけなのだろうか?
ケンタッキーのカーネル・サンダース、マクドナルド、不二家のペコちゃん人形、コルゲン人形、くいだおれ人形、商業的なアイキャッチのために考案された人形は世界中に沢山あるだろう。
しかし、このエルビス、そういった商業的な臭みが全くない。売ってるんだか、貸してるんだか、それとも単にヒマな人間が作って面白半分に置いてあるだけなのか。「何だかわからんけど、とにかく居る」って感じなのである。
謎である。
そんなに気になるんだったら、車を停めて店の人に聞いてみればいいのだが、そこまでするほどの事でもないので、「なんとなく不思議」ということで、心に温めている。
こーゆーのって、僕だけじゃないと思うんだけどな。あなたはどうですか?知ってた?
ところで、上の写真を見てもおわかりのように、人形はエルビスだけではない。保安官らしい人形、インディアンらしい人形もある。上の写真には居ないが、他にも、黒服を着たレストランのウェイターらしき人形もある。いろいろ居るのだが、印象的には、このエルビスが一番強烈だし、他の場所で見たというのはこのエルビス人形だけである。多分一番人気があるのだろう。わかるような気がする。
もう一つ余談。写真の左端に映ってるガソリンスタンドのガソリンの値段。
いいなあ、あの頃はリッター71.9セントだったんだよな。それでも「高い!」と思ってたんだよな〜。最近またあがってきて、1ドルボンボン超えてきてるもんな〜。もう、ええ加減にせーよ、産油国も。
写真・文/田村
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