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インターネットについて
1996年当時のインターネットの状況
インターネットをはじめて、既に1年が経過しました。最初は「ブチ壊したろか、このパソコン!」と何度も思ったくらい苦労しましたが(その苦労話はまた置いといて)、何とか続いています。
こちらに住んでいるので、日本での「パソコンブーム」「インターネットブーム」は直接知らないのですが、それでも始めるとなれば多少は期待します。でも、正直言って、1年前は期待よりも失望の方が大きかったですね。
なにが期待外れかというと、これは簡単で「情報が得られない」ということです。
海外にいるから、「日本語を読める」というだけでも十分幸せだったはずなのですが、だから日本国内の人よりも要求水準は低い筈だったのに、ああそれなのに、「そりゃあないだろう」と思うくらい情報がなかった。なにしろ、自分の家の電話番号ひとつ、株式市況の動きひとつロクにわからない。これは未だに分からないんじゃないかと思いますが、NTTの番号案内も東京京都大阪に限定してるわ、それもほんの一部しか載せてないわ、しかも最初にいちいち会員登録みたいなことをしなくてはならないわ、また反応が重いわで、これなら日本に国際電話して104で調べたほうがよほど早かったりします。株式市況も個別銘柄は全然わからない。
個人的には、日本の全法規の条文と主要判例くらいネットでひけるようにして欲しい。今でもちょこちょこ法律相談は受けるのだが、一応調べるだけでも背丈の本棚分くらいの資料は必要で、そんなもん運送費数十万かけてこっちに送るわけいかないから、未だに困りつづけています。
電話番号も株式市況も、そしてなにより法律も、いわば共有財産でしょう。だれかの特定の個人試算ではない。だから、電話帳なりなんなり、既に数十年前から簡易に調べることができる「情報インフラ」があったわけだが、特に電話番号なんかとっくにコンピュターにインプットしてある筈なのに、どうしてそれがネットに出てこないのか?不思議だ。
というわけで、「結局、新聞とエッチ系くらいしか面白いのないのかなあ」と思ってたこともあります。こちらで日本の雑誌を買うと高いので(少年ジャンプが800円とか)、今日本はどうなってるかチラッとでもいいからネットで見れないかなあと思っていたのですが、これも最新号の表紙と目次の画像がチンタラ表示されるというパターンが多かった。今でも覚えてるけど、週刊ポスト。「最新号」といって半年前の号の表紙だけ登場するという。これで「これからは情報時代で〜」なんて記事が載ってたらバッドジョークとしか思えない(今はどうなってるか知らないけど)。反面、AERAが毎週2本だけだけど記事全文載せてくれているのがありがたかったです。
うんざりしたのは、やたらロゴとか画像ばっかりで、中身は工事中ばっかりというサイトや、「ホームページ作ってみました」で燃え尽きてるサイトとか。オーストラリアでは、市内通話は何時間かけても料金同じだからネットやるには天国だけど、それでもプロバイダ料金は掛かる。そんななか、100キロバイト近い画像、しかも作った本人以外には意味がないようなロゴ等の画像の表示を延々待たされるのは、かなり辛い。だから、逆に、「しっかりした内容のあるテキスト情報」があると、本当にホッとしました。自分でもホームページやるようになったら、画像は極力おさえようと思ったし、「ちゃんと読めるテキスト」を載せようと思いました。
クリエイトする側に廻れば、そりゃいろいろ欲も出るし、「こうして、ああして、こうして」という青写真も描いてしまいます。それでも、現時点では、ショックウェーブでもなんでも、使うに足りるものはないと思っています。これは僕が変わってるからかもしれないけど、「芸人根性」といいますか、僕もかつてはギター抱えてステージに出たこともありますが、対オーディエンスとの関係で物考えると、アニメとかショックウェーブとか恐くてよう使えません。だって、ダウンするのに最低でも1分以上かかりますわね。ステージで1分客待たせたら=それだけ「引っぱったら」、それ相応のもの出さないとブーイングの嵐でしょう?で、「1分待たせるに値するだけの音楽/画像」と言われたら、今の僕にはそうそう思い付かないのです。そうすると、やっぱ総合的にみると「ない方がよっぽどスッキリしていていい」という判断に落ち着いてしまうのですね。まあ、「テキストばかりじゃ目が疲れたでしょ」程度に画像をもっと入れてもいいかなとは思ってますが。でも、ほんとに、トイレ行って帰ってきてまだダウンしてて、やっと終わったと思ったら、チャララ〜ンとヘナチョコな音楽が流れてきた日には、軽い殺意感じてしまいます。
1年前に比べたら、切磋琢磨といいますか、全体にホームページのクオリティはずっとよくなってるとは思います。前述のとおり、僕はアニメとかそこらへんの「仕掛け」やギミックは殆ど評価しませんが、それでも内容的に充実してるページも多いし、相当時間かけたんだろうなという労作にも出会います。画像の減色(同じ画像でも、色を減らして100キロバイトのものを20キロバイトまで減量する)テクニックも進んできてますし。ええことやと思いますし、うかうかしてたら自分の方が「しょーもなサイト」として石投げられそうで恐くもあります。
日本ではインターネットの解説本や雑誌が続々出てるとか聞きますが、僕自身は一冊も見てないのでわかりませんが、そうなんでしょうか?ギミック系の仕掛け満載の、最初のページ全部ダウンするのに5分以上掛かるようなページが「クール」とか言われてるのでしょうか。だとしたら、ちょっと脱力しちゃうけど。
のべ数千のサイト見てきましたが、最終的には、「パソコンに向ってない時間」がサイトの善し悪しを決定するように思います。何を言ってるかというと、例えばこのAPLaCでいえば、ペイントショップとかそこらへんの画像ソフトを駆使して背景画像を3時間かけて作るのであれば、その3時間で、現地の新聞読んだり、現場行って確認してきたりしてその内容を書いた方が結果的にはいいものが出来るだろうということです。要するに、取材でありコンテンツなんじゃないかなと。「テクニック見せびらかし」というのは、凡庸なヘビメタバンドのギターソロみたいに、自分が思うほど、あるいは仲間内での評価ほどには、他人は喜んでくれないんじゃないかと、もとヘビメタギタリストの僕は思うのでした。デヴュー当時のエドワード・ヴァン・ヘイレンくらい飛びぬけていたら話は別ですけど。
1996年12月5日 田村