前回の雑記帳で「面白いよ」とちょっと紹介した、日曜版の新聞Sun HeraldにおまけにようにくっついてくるSunday Lifeという小冊子があります。今回は、99年6月6日号の記事の中から、下手な翻訳とともにお伝えします。
本来この手の紹介ものは、
情報BOXのスクラップブックでやっているのですが、今回は雑記帳に書きます。
この記事は現地のオージーが現地のオージーーに向けて書いたものですが、同時に現地にいる僕が日本の皆さんに「リアルタイムのシドニーってこんなところ」と紹介するにも都合良く出来ているのですね。で、近況報告代りに、僕からのコメントも合せてお伝えします。まあ、コメントといっても、殆どが「そうそう!」の世界なんですけど。
さて、この記事の冒頭のサマリー部分を抜き書きしましたが、この英文の意味がお分かりでしょうか?
You're terrified road rage so you catch a taxi out to dinner. The driver loses his way, then the plot when you hand him a fifty. You arrive at the restaurant late and the waiter ignores you. You walk home and fall into a ditch where the pavement used to be. Welcome to Sydney, where, because of low-flying aircraft, no one can hear you scream. Here then, are the 10 things we hate about our city.
これ、最初読んだとき爆笑してしまいましたけど、これ多分現地にいないとよう判らんと思います。単に英語の問題ではなく、その文章の前提となってる共通体験がないと意味がよう理解できないんじゃなかろか。
簡単に意訳まじりに訳してみれば、こんな感じでしょうか?
夜のディナーに出掛けるためにあなたはタクシーを拾う。最近のロード・レイジが恐いからだ。ところが運転手は道に迷ってしまうし、お金を払うときに50ドル札を出したら、例によっていつもの話だ。やっとこさ遅くにレストランに辿り着いたら、あなたはウェイターに無視される。歩いて家に帰る途中、ついこないだまで舗装してあった筈の道の溝にコケてしまう。
Welcome to SYDNEY!ここでは、いくらあなたが叫んでも、低空を通過する飛行機の爆音にかきけされて誰にも聞こえないよ。さてさて、今回の特集は、私達の街シドニーの「ここがキライ!」の10ケ条。
これでも良く分からんと思います。特に、”then the plot when you hand him a fifty.”なんて言われても、「そんでもって例のアレだよ」と言ってるようなもんですから、判るわけないですわ。でも、今回の雑文を最後まで読み通したらもう一度読んでみてください。おそらく今度はよく判ると思いますよ。
また、これからシドニーに住もうとされるアナタ、これらを一応頭にいれておけば、現地の人の話題やギャグが多少は判るかもしれません。まあ、自分で体験して「ええ加減にせんかい」という目に遭ってみたら、もっともっと切実に判るでしょうけど。
「もうこれは悪夢だよ」、アートディレクターのDavid Talbot Priceはボヤく。ボンダイにある彼の家からダーリングハーバの職場まで、最高に早ければ車で12分で着くのに、時には40分もイライラ運転を余儀なくされる。「どこもかしこも渋滞だよ。道路システム自体が全然オーガナイズされてないんだもんさ。そんでもってあちこちでやってる”オリンピック工事”。あれは至るところにボトルネック(瓶の首のように細まって交通を阻害する部分)を作ってるんだよ。運転するなら休日だよね、もうガラガラだもん」。
Josephine Serratoreもまた、アッシュフィールドの自宅からボタニーの工業地区まで45分かけて通勤している。それでも彼女は朝の7時前に出発してるのだ。「今じゃ、職場までの裏道という裏道は全て覚えてしまったわ。幹線道路を一つも通らずに裏道を抜けていくと、大体15分くらい短縮できるのよ」。
NRMA(オーストラリアのJAFみたいな機構)によると、シドニーの車利用の60%は通勤に使われているという。予想によると、2016年までの25年間のスパンで、シドニーの渋滞率はなんと600%も上昇するという。特にSouth Dowring StとCBD(都心)の工事現場が、クラクションの不協和音を招いている。あるドライバーは、工事現場の道路を隔てるブロックのために無理やり合流させられ、本当はシティに行きたいのに無理やりハーバーブリッジに向かう車線に押し込められ、そのままブリッジを渡らされた。結局彼は、渡りおわったキリビリで転回して、橋の通行料2ドル払って戻ってくるハメになったという。
最近のRoy Morgan調査によると、NSW州のドライバーの81% が何らかの形でRoad Rageを経験しているという。71%は"rude gesture/無礼な仕種→中指出したりするアレ"を、57%が罵声を浴び、19%が追いかけられ、10%は車にダメージを受けている。AAMI(損保会社、通称エイミーと発音する)の事故指数によると、他車に進路に強引に割り込んだことがあるかという問いにYESと答えたドライバーの数は、1996年から3倍にも達し、また60%のドライバーが「道路は戦場だ」と答えている。
AAMIの法人部長のRichard Jefflyは言う。「アグレッシブなドライバーに言いたいのは、『クールになってくれよ』ということです。他の車に乗ってる人も、あなたと同じ立場なんだということが、なんで分からんのかなと思いますね」。
シドニー市当局は、工事の遅れは大したことなくて、むしろ単純に交通量が増加していることこそが問題だと言う。この9年間で、CBDの交通量は27%も増加した−この数字は毎日余計に10万台の車がやってくることを意味する。だから、当局としても、シティ横断トンネル計画を支持している。Eastern Distoributersトンネル工事(=東部支線。ハーバーを渡ってくる車がそのままシティの下を通過できるようにトンネルを掘ってます)の他に、east-west Cross City Link Tunnel計画も進行中だ。これによると、シティを横断する1.2キロを、わずか1分で走り抜けることになる。それは今ゆるゆると横ぎっている12個の信号をフリーパスできることでもあるし、シティから4万8000台の車を除去することでもある。
他では、オーストラリアで初めての州都空港との直結電車路線の建設も進んでいる。シドニー空港とシティとを結ぶ10キロのAirpor Linkという地下鉄だ。これによってシティから空港まで10分でいけるようになるし、また4万6000台の車の流れが不要になる。
トップバッターは道路渋滞ですけど、この記事に関しては両手を挙げて「支持!」ってな感じです。
しかしボンダイからダーリングハーバーまで12分というのはスゴイな。よほど飛ばしてるんじゃなかろか。ディビットさん、僕みたいに免停になるよ。でも、混んでるとき40分というのはそうですね、そのくらい軽くかかるでしょうね。アッシュフィールドからボタニーまで朝行くんだったら、そりゃしんどいですね。シデンハムロードが常道だろうけど、あそこ朝は鬼のように混むもんな〜。
時々空港にお出迎えにいきますが、平日の早朝だったらまだしも、ラッシュアワー(ピークタイムという)にぶつかったらえらいことです。下手すりゃ行って帰って3時間くらい掛かるんじゃないかな。日曜の早朝なんか1時間くらいで済むのに。
シティの中は、もう、文句言っても言っても言い足りないくらいですね。もともとが複雑な規制なのが、後でも出てくるけどオリンピック工事やらで週単位で規制が変わったりしてる。「え、ここ右折禁止になったの?嘘!」みたいな。シティは規制がややこしいので、A地点からB地点まで行くには、ちゃんと道順があります。これ適当に行くと、右折禁止や一方通行で全然辿り着けずにどんどん遠ざかってしまったりもします。しかもメチャクチャ混んでるから、一回間違えると、イライラしながらアサッテの方向に流されていくという。
週代りで変わるというなら、これにも書いてあるようにイースタンディストリビューターのトンネル工事ですね。車線変更が出来ないままハーバーブリッジ渡らされちゃったという話が載ってますが、これは無理ないですよ。この被害にあった人って、もう何百人何千人という単位でいると思いますね。
Road Rage/ロードレイジはですね、こんな言葉が日常語になりだしたのはここ数年のことだと思いますが、考えてみれば、クラクション殺人とかやってたんだから実は日本の方がずっと進んでるような気もしますね。総じていえば、日本のドライバーの方が短気でイライラしてるんじゃないかな。すぐクラクション鳴らすし、罵声は飛ぶし。こっちもロードレイジなんて言う割には、まだまだジェントルなもんだと思います。道もすぐ譲ってくれるし、暴走族なんてのも殆ど見たことないし。
ただ、この統計で「車にダメージを受けた10%」というのが気になりますね。故意に車をぶつけるとかいう狂犬みたいなパターンが10%もいるとは、シドニー運転7〜8万キロの経験からしても思えないんですけど。おそらく、強引に割り込んできて軽い接触事故を起こしたような場合も含んでるんだと思われます。事故は多いですからね。毎週一回はどっかで見ますし、僕も巻き込まれたこと何度もあります。今も一つマイナーなバンパー修理がありますし。
なんでこんなに車が多いのか?とは、日本から来た僕はそんなにも思いませんが、増えてるといえば確かに増えてると思います、5年前に比べれば。一つには、公共交通機関がまだまだ未発達なんですね。特にノースなんて、電車路線は一本だけだし、車持ってないとどうしようもない所だらけです。
余談ですけどホームステイの斡旋なんかで、ノースを紹介されると、「学校まで30分」かという触れ込みなのに、平気で1時間以上かかったりして、それでよく文句言ったりしてます。学校や紹介業者と喧嘩したこともあります。これは裏話なんですけど、大体ノースとかイースタンサバーブって、自分らの住んでる所にプライドを持っていて、それはいいんだけど、「駅から遠いですね」とかいうと怒る人が多かったりします。「駅までバスで10分、歩いて30分」とかいうけど、実際に調べてみたら、バスなんか夜の8時で終わってたり、歩いて30分どころか45分くらいかかったり。なんせ「生まれて一度も電車に乗ったことがない」という人々がゴロゴロいますからね、公共交通機関の感覚が欠落してんじゃないか?と思われたりもしますね。お屋敷エリアだからろくすっぽ街灯もないようなエリアを、女の子一人で45分も夜歩くのは嫌でしょうが。
で、「素晴らしいエリアなんだから学生も皆ハッピーだ」とかいう意識でいる奴も多かったりして、この中華思想的スノビズムにこちらもカチンときて、「ただの不便なド田舎じゃねーか」みたいに言いたくなっちゃうという。ホームステイの斡旋なんか殆ど強制割り振りみたいなものですから、学生さんの側で「こういうところがいい」とかいうリクエストなんか殆どなかったりするし、しようと思っても土地カンないから出来ないし。で、こっちが代って文句言って替えてもらったりしてます。4回連続でダメ出ししたこともあるし、バスと電車の時刻表まで調べて証拠として突きつけたこともあります。こんなところで文句言ってるのって、そんなに居ないと思いますし(どの旅行会社や留学斡旋会社だって実際に現場までいってバス停の時刻表調べて喧嘩してるところってないと思いますよ)、、嫌われてるだろうな〜とは思いますけど、でもね、僕らも最初車なくてトボトボ歩いてた口ですから、それがどんだけ大変なのかは身に沁みてます。
余談はさておき、一つには車がないとどうしようもない地域が多すぎるんだと思います。逆にいえば、公共交通期間、バスはまだしも電車、これがイマイチどころかイマサンくらいだったりします。当局も頑張ってるんだろうけど、よく見ると予算削減してリストラやってたり。また、駅前駐車場というのが、全然整備されてなかったりしてね。もっと駅に大きな地下駐車場作って、1日2ドルくらいでやれば、もっと皆さん電車使うと思います。
「わたしは慢性疲労症候群にかかってるんだけど、それはこの汚れた空気が一番の原因だと思うわ」とニュータウンの住人Janet Sykesは言う。「犬を連れて散歩してるとき、通過する飛行機の後ろからとてつもなく大量の何かが降ってくるような気がするし、排気ガスの匂いで息が詰まりそうだわ。もっと遠い郊外に出るとずっと気分は良くなるのよ」。
シドニーでは年間400人の人がスモッグが原因で死んでいるという。だからJanetが郊外に逃げ出したくなるのも無理のない話である。
シドニーの大気汚染の約70%は、車やトラックからでるディーゼル排気ガスだという。「ディーゼル排気ガスは、非常に毒性の強い発癌性物質で、多くの疾病をもたらす原因でもありますし、汚染のひどい日が続くことは、既になんらかの疾病を有している人々へ大きな負担をかけます。特に呼吸器系ないし心臓系の疾患を持つ人々に対してです」と、総合環境センターのディレクターJeff Angelは言う。
NSW州の環境レポートによると、2016年までに市民ひとりあたり67%の道路交通量の増加、23%の温室効果をもたらすガスの生成、そして23%の燃料消費量の増加が予測されている。すでに毎年100万トンもの汚染がシドニー上空に流れ込んでいる。車公害によるコストはざっと年間3億ドルに達するという。
しかし全てが暗いニュースで塗りつぶされているわけでもない。環境保護局長のNeil Shepherdによれば、「ここ20年の間に、シティの大気の鉛(※有鉛ガソリン等の排気ガスによるものか)は10分の1に減少しています」とのことだ。「一酸化炭素の大気含有量もまた減少しています。これはもっとも高値の汚染が予想される都心部においても減少しています」。
これはですね、日本の感覚でいえば、こっちはまだまだ奇麗です。最初住んだ頃は、「こんだけ空が青くて何が汚染だ」と理解できませんでしたけど、遠くからみると確かにシティ上空とかスモッグだらけなんですね。
しかし僕もジャネットさんと同じくニュータウンに住んでましたけど、この程度で身体壊すくらいだったら、シドニーに住むのは無理でしょう。ましてや日本(の都会)はもっと無理。そうはいっても日本もひところに比べれば格段の進歩だとは思いますけど。
ただこちらで堪らんのはやっぱり車の排気ガス、それも大型トレーラーがメチャクチャ沢山走ってるから、ディーゼル車の煤煙、これがすごいです。「なんでこんなに居るの?」というくらい巨大なトラックが多い。スピルバーグの「激突」みたいなトラック。でも、日本の22倍という国土の広さと、その広い国土で「流通」をやろうということになると、どうしてもこのくらいの道路輸送量になってしまうのかな、という気がします。北海道から九州までどころか、北海道からベトナムまでくらいのだだっぴろい国で、生活物資を行き渡らそうと思えば、そりゃガンガンとトラックを走らせるしかないですもんね。
それと、こちらではガソリンよりもディーゼル(軽油)の方が高いんですが、今度のGST(消費税)導入で一つの議論になってるのがディーゼル税の値下げです。ディーゼル価格が下がって助かるのは、農村部なのですね。出荷コストがガクンと落ちるし。日本もアメリカもそうですけど、オーストラリアでも、経済の国際化によって農村部が割を食い、政治がこれを解決(補助金など)という構図は一緒だと思います。ですので政府としても地方救済の意味もあってディーゼル税率の低下を目玉の一つにしてたのですが、これがまた「環境保護」という観点からは真向から逆行したりします。
あと、年々解決しつつありますが、こちらは古い車が多い。平均車齢10歳以上というくらい古い。ということは排気ガス規制前の車もまだまだ沢山走ってるわけです。これの排気ガスがまたすごい。そんなの規制すればいいじゃんといいますが、こっちは車が高いんですよね。排ガス規制をしてない車は駄目ということになると、暴動が起きるかもしれないし、その暴動のなかには、日本から来たワーホリの皆さんも多少は混じっているでしょう。なぜなら安い車を買ってラウンドが出来なくなるからです。車一台100万円以上、本当はそのくらい出さないとマトモな車は手に入らないんだけど、そんなのポンと出せるワーホリさんも少ないでしょう。
じゃなんで車が高いんだというと、これも税金。これは別途情報BOXのスクラップブックで詳細な記事を翻訳してますので参照してみて欲しいのですが、車の税率22%だっけな、高級車は45%。信じられない高率。じゃなんで車の税金が高いんだとなると、これはそんなに深い理由はないみたいですね。でも、これを安くするなら別途増税をするか、支出をカットするしかないわけで、それも出来ない。やるなら一気に全面チェンジのGSTということでしょう。大分導入の目鼻が立ったようですけど。
というわけで排ガス規制も一気に進むわけでもないです。だから、シドニー上空の汚染は、税金が作ってるという側面もあるんですよね。ただ、ここずっと景気がいいこともあいまって、シドニーの車もずっと小奇麗になってきました。APECのおかげで関税が年2.5%下がってきたので車の値段が安くなってるということもあります。
しかし一方ではまたシドニーの人口そのものが増加してたり、車が増えたり。うーん、汚染一つとっても、色んな要素が絡み合っているのだと思います。
Gavin Vanceは、シドニーの過熱した建設ブームについて書いた彼の作品、「Filth」という劇のなかでこう書いている。「やつらがジョージストリートをズタズタに引き裂きはじめた頃、僕はあることに気づいたんだ。それは、もはや町を行き交う人々のうち微笑みを浮かべている人は誰一人としていない、ということだ」。「こりゃまるで、シドニー美観計画の名のもとに、二人の人間をフラットにセメント漬けにしてるようだ。身動きひとつ出来ないもんだから、最終的には皆仲良くビルの四方の壁に塗り込めれてしまうだろうさ」。
銀行の監査係のHelen Krinelosは、「建設現場のフェンスがあるだろ。あれに囲まれているとなんだか監獄に閉じ込められてしまったような気がするんだ。誰もが、あの狭苦しい仮歩道に押し込められる。もしちょっとでも身体が不自由だったり、乳母車でも押してようもんなら、歩くのに必死で、こんな感想すら浮かんでくる余裕もないだろうさ」。
「そういえばこないだバスを待ってたら、一台のトラックがやってきて、僕の待ってたバス停の前で止まったかと思うと、バス停をロープで結んでそのまま引っ張って持ってっちゃったんだ。信じられるかい、こんなの?」
シドニー市当局は「長い目でみれば、ほんの一時の辛抱にすぎない」と言う。より広くなり、花崗岩が敷き詰められた歩道、より現代的なセンスで整備された街路、より快適になったパブリックスペース、これらのベネフィットは確かにもたらされる。しかし、それらが完成するまでの間、我々は、マーティンプレイスで、ジョージストリート、パークストリート、ピットストリート、マーケットストリート、アルフレッドストリート、、、至る所で、コンクリートミキサー車と瓦礫の山の障害物競走のようなコースをうまくすり抜けていかなければならない。そして、サーキュラーキーの東側プロムナードとフェリー乗り場は、次のブルドーザーゾーンになる。しかし、シドニーハーバー湾岸局(SHFA)は、12月1月の最も賑わうシーズンにはこれらの工事は行なわれないのだと言っている。ともあれ、工事の成果は待つに値するだろう。より整然として、より快適なコンコース、より良い眺望、そしてバランスのとれた各店やレストランの配置。
NSW州公共工事局は「シティ全体がアップグレードする必要に迫られているのです」と言う。「ジョージストリートの機能低下は著しい。舗装は至る所ボコボコだし、街路樹の根はあちこちに広がり、道路の車線規制も必ずしも整合されていない。全てを一度に改修すれば、それは資材の大幅な節約にもなりますし、トータルアレンジもまた出来るのです。チビチビ5年かかってやるよりは、一遍に全部やってしまった方がいいんです」。
これはもう、皆がそう思ってるでしょうね。歩道拡張はいいけど、ただでさえ少ない車線を潰して歩道にしてるもんだもん。どうかすると、歩道の方が車道より広かったりするもん。シティの目抜き通りが片道一車線でどうする?タクシーが停車したらそれで終わりじゃないか。こんなの「いっときの辛抱」じゃないでしょ、恒久的に一車線なわけでしょ。「オマエ、これ、どうするつもり?」と当局に言いたくなりますわ。
おまけに不動産ブームで、ニョキニョキ高層マンションが林立してきてる。3年前のシドニーシティの絵葉書と今と見比べても違いは歴然だと思いますよ。だもんだから、歩道工事とビル工事が入り乱れ、もう大変。「大変」としか言いようがないです。
また、車線が引いては消され、消されては引いてるし、夜なんか車で走ろうものなら、車線がメチャクチャ交錯してどこ走ればいいのかわからずパニックになります。また、ある車線をそのまま真っ直ぐ走って、交差点超えたら、いきなり車線が消滅して、対向車線に突入する羽目になって、これもパニックになります。
しかし、目の前でバス停が持ち去られるというのはスゴイな。
ハッキリ言って、出来ることならシティは行きたくないです。こちらに来られた日本人の方でも、最初はよく分かんないからシティに出没したりしますが(僕らもそうでしたが)、段々自宅付近の開拓が進むにつれ、シティには行かなくなる人多いんじゃないかな。僕も最初の一ヶ月が一番シティに行ってましたもん。シティに職場があるとか、学校があるとか、とにかく何か用事がなければ、もう行く必要ないですもんね。地域の巨大なショピングモールで大抵のことは間に合いますもんね。
「どうしていつもタクシーは50ドル札を出したときのお釣りを用意してないのだろう?」というのは個人秘書をやっているLouise Cable=24歳のタクシー常用者の疑問である。「運転手達ときたら、いまどこに向ってるかを十分に判ってないみたいだし、なにより途中でガソリンスタンドで給油するのは何とかして欲しいわ。あの、しょーもない四角い箱みたいな物(※原文stupid cubicle thing)も何の役に立ってるんだか。声は聞えないし、お釣りを貰うのも一苦労よ」。ノースにある自宅からシティまでいつもタクシーを使ってるCableの不満リストはまだまだ続く。「タクシーを停めるので最悪なのは、金曜の夜、雨の日、運転手交代の時間帯、そして空港ね。」
彼女だけではなく我々も、運転席をすっぽり覆う透明なプラスチック越しに、行先を伝えたりする都度、大声を張り上げなければいけないことを鬱陶しく思っている。しかしこのプラスチックを鬱陶しく思ってるのは乗客だけではない。この1500ドルもする安全スクリーンの装着を義務づけられている運転手も同じだ。彼らはこれを「Carr’s Cages/NSW州知事であるBob Carrの檻」と呼んでいる。
州議会野党はこの安全スクリーンを、冬には「冷蔵箱」、夏には「菓子箱」と呼び、こんな装備をしても本気で金を盗もうとと思えばいくらでも盗れるじゃないかと批判している。そして実際にそのとおりになっている。政府はこれに代るものとして、700台のタクシーに防犯カメラを取り付ける12ヶ月にわたる試みを行ないつつ、全てのタクシー運転手にこの「閉所恐怖症の繭」につき、1年間の装着義務免除を与えている。もしこの監視カメラ=それは静止画像のものから監視ビデオタイプのものまで様々だが=が有用だということになれば、タクシー運転手はどちらかの一つを任意に選べることになる。
「この安全スクリーンは、背後から運転手の喉にナイフをつきつけたり、シートベルトで首をしめたりするタクシー強盗事件を憂慮して導入されたものです。しかし我々も皆さんの苦情を無視してるわけではなく、素直に耳を傾け、代案として700名の方に監視カメラ導入実験を施行しているのです。この700名の方々は全てボランティアに申し出てくれました。我々としては運転手の方々の選択肢を増やすためにいろいろ努力しているのです」とCarl Scully州運輸大臣のスポークスマンは説明する。
ところでタクシー待ちの時間についてだが、我々はそれほどこれが素晴らしいものだということを実感していないでいる。実のところ、NSW州のタクシーは世界のトップの一つに数えられているのだ。NSWタクシー協会は、タクシーを呼ぶ電話のうち85%は10分以内にタクシーが配車されているのだと自慢している。運転手は、外国人や身体障害者の人、或いはいわゆる「難しい客」にどう対処すべきかトレーニングを積み重ねているし、英語の試験や地域の知識についてシビアな試験を受けているのだ。
「昨年一年でNSW州でタクシーに関する苦情が寄せられたのはたったの3000件です。これはのべ170万件の乗車回数のうちでですよ。この数字は、どんな会社だって自慢してしかるべきものだと思いますけど」とタクシー協会のスポークスマンは言うのであった。
これについては、僕は殆どタクシーに乗らないからパスですね。最後に乗ったのがいつだったのか思い出せないくらいです。でも乏しい経験でいえば、総じてマナーはいいし、こんな皆さんボロクソ言うほど悪い印象ないですけどね。日本にいた頃はタクシー常用者でしたが、数が多いだけにこっちの方がよっぽどムカっ腹立てた記憶があります(もっとも、8割方はいい運転手さんだったけど、タクシー運がいいのかな)。
しかし、最近気づきましたが、タクシーの運ちゃんをすっぽり覆うプラスチックの壁、あれはブキミですね。「そこまでせんでも」と思ってたら、やっぱり政府主導で強制的にやってたのね。大体、こちらのタクシー文化は、「自分でドア開けて、助手席に座って、おしゃべりをして盛り上がる」というフレンドリーなものですから、あんな防犯防犯した、「人を見たら泥棒と思え」丸出しのギアとはようマッチングしないんじゃないかなと思いますけど。
シドニーのタクシーの運ちゃんについでですが、これはむかし相棒福島が雑記帳で書いてますので、これもあわせてご参照ください。
そういえば一回、非常に寡黙な運ちゃんがいまして、その容貌体格というのがもうヘルスエンジェルというか、プロレスラーというか。体重120キロ筋肉質、グラサン、髭だらけ、腕いっぱいの刺青。そんでもって、たまたま掛かってたラジオの曲がブラックサバスだったりして、雰囲気バリバリでおっかなかったです。でも、別に何事もなかったですけど。
タクシーの運ちゃん道知らないとか批判してる人いるけど、シドニーの居住エリアというのはどうかしたら東京23区よりももっと広いんだから分かるわけないけどね。それに全然碁盤のように整理されてないし、新しい地区は住民の安眠を守るために意図的に通り抜けられないように、全部行き止まりにして、且つ曲線で道路作ってるから、迷路以外の何物でもないです。僕らの住んでるレインコーブだって、かなりイヤらしい道だし、今まで一発で車で家まで来れた人は居ません。その昔、住みはじめた頃、柏木が最寄りのバス停からここまで1時間も道に迷ったというくらいだし。
だから400万都市で苦情がたったの年間3000件というのは、かなりいい数字だと思いますけど。あと苦情(complain)ですが、こちらの人はかなりマメにやります。日本みたいに「苦情マニア」みたいな人(TVの番組でちょっと何かあるとすぐに電話する人とか)じゃなくて、「苦情を言うのは、社会全体のサービス向上のための市民の義務」くらいに考えてるんじゃないか?というくらい言うみたいですね。
もっとも、そういう先入観を持ちすぎてもマズいですし、実際には肩をすくめてやりすごしてる人が大半であることに変りはないです。このへんの文化の違いを説明するのは、いつまでたっても難しいと感じますね。理解を容易にするには、違いを際立たせた方がいいけど、そうするとシロかクロかみたいな大雑把な議論になって、それも違うんですよね。日本で紹介されている「欧米では〜」とかいうの、あれ殆どがこの種の弊害があると思いますね。同じ人間なんだからそんなに天と地ほどには違わないのです。ただ、傾向として言うなら、確かにそういうところはあるな、という程度です。
例えば、電車で傍若無人の振舞いをしてる人がいた場合、日本でこれを注意する人はかなり稀だと思いますが、日本に比べればこっちの人は赤の他人でも結構言いますよね。じゃ、全員が常にそうするか?というと、別にそんなことはないです。感じとしては、人前で自分の意見を言うことに対して日本人が何となく抱く気恥ずかしさを、こちらの人は相対的に感じてないんじゃないかな?という程度。ちょっとした違いなんだけど、そのちょっとした違いが結構新鮮だったりするし、学ぶべきところはあるという感じです。わかります?
「実際の話」というのは、このように往々にして分かり難い、微妙なものだったりするんだと思います。日本でよく見かける「アメリカではこうだ〜」みたいに断定口調で「分かりやすく」書いてる本やら雑誌やらありますけど、ハッキリ言って読んでて脱力してしまう。あんまり面白すぎる話は、話半分に聞いてた方がいいと思いますよ。「大阪の人間は毎日タコ焼きを食べている」とか「いつも「儲かりまっか」と挨拶する」とかいうレベルだと思います。「ンなわけないだろーが」という。
なお、タクシーの運転手になるためには厳しい試験をクリアしなければなりません。今回と同じSunday Lifeで、このあたりの事情をレポートした号もあって、これも翻訳紹介したいなと思ってますけど、果たせていません(ごめんなさい)。同じドライバー同士ということもあって、つい運ちゃんに同情的になってしまうのですが、このシドニーを1日14時間も走ってるというだけで大変な仕事だと思いますよ。ましてや、無礼のカタマリのような客もいるだろうし、差別的な言動をする奴もいるだろうし、酔っ払いも、強盗もいるだろうに。
そういえば陣内孝則が主演してた「CAB」という映画がありましたが、気の小さなタクシードライバーがひょんなことから拳銃を手に入れて気が大きくなって、無礼な客を撃ったりしてましたが、気持は分かるなあ。あんなエラそうな客だったら、僕でも一発カマしたくなるでしょうよ。
バルメインの学校教諭Gary Newmanにとっては、それが我慢の限界であった。
彼は車の保険の更新をしようとして30分も行列させられた。彼が順番を待っている間、彼の妻とペットの犬は外で駐車していた車の中で33度の温度の中蒸し焼きにされていた。彼は、保険会社に彼の待ち時間に対する賠償として46ドル支払えと要求したのだ。
「妻と私(そして犬)は、もっとまともな扱いを受けるべきではないでしょうか」と、彼は会社宛の苦情の手紙に書いた。「待たされた私の時間や労働力は、貴社のそれと同じ価値を持つものと思います。よってここに納付期限30日の支払を請求いたします」と。驚くべきことに、なんとその会社はお金を払ったそうだ。
Marie Mitchell(22歳)がそのことに思いを巡らしていたなら、話はまた違っていたかもしれない。空港に勤務しているミッチェルは、最近、RTA(陸運局)で45分も待っていた。そのとき彼女の番号札は296番、しかし番号の進行は未だ220番にも達していないのだ。なぜならたった二人の係員しか窓口業務をしていないからだ。「苦情を書いてやろうと思ったけど、出来なかったのよ。なぜって、そこいる皆がそう思って苦情用紙を持っていったので紙が無くなってしまっていたの」。
Custmerという雑誌が行なった昨年の調査によると、コモンウエルス銀行のシティにある支店では、待ち時間はなんと65分にも達するという。また全銀行の20%以上が待ち時間15分以上だという。ずらりと並んだ窓口のうちの稼動しているのは半分にも満たないという状態で。
数年前、ANZ銀行は、あなたが5分以上待ったならば、あなたの口座に5ドル振り込んでいた。そしてオーストラリア全土でも、この支払いがなされたのは、一支店あたり週2回程度であったという。
今ではこんな保証を申し出るところは何処にもない。しかし、大多数の企業や組織は、よりカウンター業務を減少させるために、電話決済やインターネット取引、オンライン決済に集中しようとしている。コモンウェルス銀行のシティにある4つの支店は、過去3年で大幅の窓口業務の減少を図っている。ピットストリート支店、マーティンプレイス支店で25%、マーケットストリート支店で22%、ウィンヤード支店で12%の減少である。
これも、「そうそうそう!」ですね。なーんか最近よく待たされるなあと思ってたのですが、やっぱりそうだったのねという。
待たされ度が一番高いのは、移民局ですね。DIMA。先日もビザの更新にいきましたけど、「待てど暮せど〜」状態でしたもんね。番号札(券)を貰うのですけど、あれ用件によって種類が違うのですね。で、一緒にいった福島が「30分待って1番しか進まない〜」となってるところ、僕は別の用件もあって別の種類の番号だったので、あっという間に順番がきました。それでまた福島先生、「何なの、それ〜」とブチ切れてましたね。もう待つの止めて、厄落としに寿司食いに行きましたもんね。確かに先生の機嫌は直りましたけど(彼女に何かお願いするにはお寿司をおごってあげましょう)。で、そのあと駄目元でもう一回移民局にいって、「ゴハン食べにいったら順番飛ばされました」と告げたら先に割り込ませてくれたそうです。まあ常にこんなに上手くいくかどうかは別としても、順番飛ばされるの覚悟で別の用事済ませにいった方がいいかもしれませんね。
学生ビザは、ロックデイル支局に一括されるようになってますが、まあ1日仕事になると思いますから、覚悟していってください。覚悟というのは、そうだな、新幹線で東京から大阪に行くくらいの感じ?早く済めばラッキーですけど、そうでなくても焦らず騒がず読みかけの本でも持っていかれたらいいと思います。
車の車検でRTAにいったときも悲惨でしたね〜。ランチ時ということもあるけど、ほんと、窓口に2人しかいないもんね。窓口14個くらいあるのにさ。で、奥の方が職員が立ち話してたりして、「オマエ、そんなことしてる暇があったら窓口につかんかい」と言いたくなりますよね。隣のオジサンも、「ワシなんか、もう30分以上待ってるのに」とご立腹でしたけど。
銀行も、そうですねシティなんか絶望的に長いですよね。ANZ銀行では日本で口座作れてそれを利用する人が多いようですが、あれ一つ欠点があるのが、キャッシュカードを現地のマーティンプレイス支店(今そこも工事中なのでハンターストリート店に一括されてるみたいだけど)に取りに行かねばならないことです。これがまあ小1時間ものですね。
その昔5分待たせたら5ドルというのは知らなかったけど、でも本当に待たなかったですよ。職員さんも暇そうにしてたりしてね。それでリストラになったんでしょうけど、ちょっとヒド過ぎる。支店の数が恐ろしい勢いで減ってきてるから、そりゃ混みますわ。逆にいえばこちらのリストラの凄まじさを感じますね。これに比べたら日本なんか、まだまだでしょう。まだまだの方が良かったりもするのですが。
郵便局も混むときは混みますね。福島なんかもアロマの発送で良くいきますけど、大変。でも、一人あたりの所要時間が短いから、長いように見えて案外すぐ順番は廻ってくるようです。
総じていうと、シティの支店はどこでも大抵混んでます。またランチ時はどこも混みます。狙い目は、朝イチとか、逆に午後3時前後とかが結構空いてたりします。あと、「へえ、こんなところにあったの」というような、リストラし忘れたような小さな支店なんかもいいですね。郵便局なんかでも、狙えばメチャクチャ空いてるところがあります。
しかし、システム的に一番許せないのが、医療保険関係でしょう。これは体験者の(というか被害者というか)福島が書いた方がいいんでしょうが、まず諸悪の根源は「保険の事後精算制度」ですね。日本だと、例えばお医者さんにかかって会計しますが、全体が1万円で、3割負担の健保だったらその場で3000円払っておしまいですよね。ところがこっちは、まずそこで1万円払います。で、後に、領収証をもって7000円のクレーム(請求)をしに出掛けなくては
ならない。なんという非効率な制度だと思いますけど、複雑なのはこれからです。
日本の健保のように強制加入のメディケア制度があるのはいいのですが、カバー領域がすごい狭い。だから任意にプライベートの保険に入ったりします。その場合、1万円払って、うち3000円はメディケアに行って、4000円は別途プライベート保険会社に行かねばならない。
しかもですね、分業が進むのもよしあしで、レントゲンは別の機関で撮らねばならず、検査も別、手術をするとなると、別途どっかの病院の手術室をレンタルして、そこにお医者さんが出張でやってきて手術をするとか(全てがそうではないけど、プライベート医師なんかはそのパターンが多いかな)。そうなるとその病院からは場所のレンタル料の請求がきて、医者には手術料を払って、さらに麻酔はまた別に麻酔医がいてそこから別途請求がきてという、ワケわからん状況になります。これを、いちいちこれはメディケア、これはプライベート、これは自己負担と割り振って、その都度いちいち出掛けないとならない。
これ以上書くと混乱するのですが、さらに複雑なのが、日本の保険点数制度のように、政府というかメディケアで「診察料はいくら」と決めてるのですが、医師によってはこれ以上に請求することも出来るのですね。で、その差額はプライベート保険でカバーされるのかどうかという、ややこしい問題もあったりします。
これだけでも大概腹立つのですけど、さらに行った先でいちいち長蛇の列だったらキレます。でもって、後でも出てきますが、年々というか刻々とあがっていく駐車料金もあいまって、「えーかげんにせーや」状態になったりします。
お医者さんとメディケアとプライベートで、それぞれプロなんだからそっちで勝手に精算してくれよと思いますし、それらしき試みも実際にはあるようですが、そこがまたオーストラリアで、連絡不行き届きの事務ミスが発生したり、話が全然通ってなかったり、だから払った筈なのに請求書が舞い込んできたり。ああ、でも、そのおかげで1年前の福島の入院費、まだ請求来てないみたいです。
オーストラリアの事務のいい加減さには、こちらに来た日本人皆さんブーブーブタさんになりますが、何年かするとあまり言わなくなります。それはオージー化が進行して悟りの境地に達するという一面もあると思いますが、いい加減な事務のおかげで助かったというケースもポツポツと出てくるからじゃないかしら。僕の免停も、3ヶ月くらい梨のツブテだったから、「いや〜、忘れてんじゃないかな、ラッキー」とか思ってたんですけど、これはしっかり来ましたね。くそお。
(その2に続きます)
1999年07月02日:田村