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インディアン・パシフィック号 乗車体験レポート




報告者:有馬浩美さん
99/09/21





    99年8月11日から8月19日まで、オーストラリアに行き、「インディアン パシフィック」に乗ってきました。


    予約は早めに


    私が、日本で旅行会社を通し「インディアン パシフィック」の予約を入れてもらったのが7月中旬でした。非常に人気が高い列車で半年前から予約を受け付けていると聞いており、8月に乗るのはまず無理かなと思っていたので、一週間後に希望の日の予約が取れたと聞いたときには本当に驚きました。

    出発は8月13日、パースからでした。乗車駅は、パース・シティ駅ではなくイースト・パース駅になります。大陸横断鉄道の発着駅はこちらになるようです。私は、パースからシドニーまでの全区間(4352km)を乗りましたので、車中3泊4日(65時間)の長旅となりました。

    料金は、ファーストクラス寝台(シングルルーム)、食事込みでA$1,350−でした。初めワンランク下のホリデークラス(寝台)にしようかと思ったのですが、その料金に食事代を入れてみるとあまりファーストクラスと変りませんでしたので、少々高めですが全食事付のファーストクラスに乗ることにしました。


    狭いながらも、様々な工夫が・・・


    まずは、チェックイン(チェックインは出発時間の一時間前)。私は、小さめのスーツケースでしたので預ける必要はなく車中に持ち込めましたが、荷物が多いと(大きいスーツケースとか何個かあるとか)、チェックインの際預け下車する時に受け取ることになります。3泊4日必要な物を他に移すというのも面倒ですし、なるべく荷物は少ないほうがいいかと思います。

    その後ホームに行って自分の乗る車両を確認。(列車の長さは、498メートル)。初めて「インディアン パシフィック」を見た時の感想は、「意外とシンプル!」でした。豪華列車と聞いていましたので、外観ももっと凄いのかと思っていましたが、運転手さんが乗っている最前列の車両(黄色と青色のボディ)やその後の旅客用の車両(色はシルバー)も特に豪華という感じはしませんでした。

    いよいよ乗車。乗車口にいるスタッフにチケットを見せると自分の部屋の番号を教えてくれます。部屋は、非常に狭いです。初めて見たとき「これがファーストなの!?」と思ったくらいですから。どれくらいかというとちょっとゆったりめのホテルのトイレ(個室の部分)っていう感じですかね。ここでどうやって寝るの?って不思議でした。
    然し、狭いですが室内は色々な物がとてもコンパクトに上手くまとめられています。出発して間もなくスタッフが部屋の使い方などの説明に来てくれるのですが、引き出すと洗面所やトイレが出てくるわ、ラジオもあり、日中座っている椅子の後ろ側にある取っ手を引き出すとベットになるなど感心してしまいました。

    ベットメイキングは、夕食中にやっておいてもらえ、朝食の間に片付けてもらえます。その他部屋にはバスタオル、ハンドタオル、インディアン・パシフィックロゴ入りのシャンプー、リンス、歯ブラシ、乳液などが入ったポーチ(車内でも販売していますが購入するとA$7します)も用意してありました。シャワー室は、別途あります。ツインの部屋にはシャワーも付いているそうですが、聞いたところによると結構狭いみたいです。

    また、説明に来てくれた際、食事時間をファーストシティングにするかセカンドシティングにするか聞かれます。この時、選択した方で食事の時間が決まります。もしファーストシティングを希望すると3食とも最初の時間帯で食事をするようになります。因みに、わたしはファーストシティングにしました。

    ファーストクラスには、他にダイニングカー、ラウンジカーがありました。ラウンジカーには、スモーキングルームやバーもありましたし、コーヒー、紅茶が好きなときに飲めるようにもなっていました。また、「インディアン パシフィック」ロゴ入りのグッズもこちらで販売しておりTシャツ、キャップ、ボールペン、ポストカードなどがありました。ポストカードは、一枚一ドルとお安いですし記念になるのでいいのではないでしょうか。


    食事も大満足!


    食事は、どれもとても美味しかったです! ちゃんと前菜から始まり、メインディッシュ、デザート、コーヒー・紅茶と順番に持って来てくれ、また、前菜とデザートは2種類からメインディッシュは3種類の中から好きなものを選べます。デザートは、結構甘いのではないかと思っていたのですが全くそんなことはなく、ケーキなどは甘さ控えめにしているのではないかと思ったくらいです。

    食事の量は、かなりお腹いっぱいにはなりますが、食べきれないほど物凄い量が出てくるということはないです。列車の中で過ごしていて、あまり動かないですから、お腹もそれほど空かないのではと思っていたのですが、時間が来るとちゃんとお腹って空くんですね。毎回しっかり食べていました!但し、動かないで三食しっかり食べるわけですから、お腹は出てくるかも知れませんよ。

    夕食の際の服は、カジュアルなモノで全く問題ありませんでした。私は、Tシャツとジーパンではいけないかと思い、一応それ以外の服も用意していったのですが、一度も着ずに持って帰ってくることになりました。カジュアリーに豪華列車の旅を楽しめるのは、余計な荷物も増えませんしいいですよね。

    ダイニングカーの席は、好きな所に座れます。私は、乗って最初の食事の際、日本人と座りたいか他の国の人と座りたいかとスタッフの方に聞かれ、まあ、海外旅行をしているのだし折角だからと「他の国の人がいい」と答えておいたのです。ところが席に一人で座っていると日本人の女性がやって来て、ここ座ってもいいですかと私の(テーブルを挟んで)前に、もう暫くするとやはり日本人の女性がここいいですかと私の隣りに座り、結局日本の方々と座ることになりました。スタッフの方は苦笑いしていましたが、食事が終わって部屋に戻る際、「次からね!」といってくれ、本当にその後の食事からはオーストラリア人やその他の国の人と座れるようにしてくれました。

    別に日本人と座るのはイヤということではないのですが、折角、オーストラリアに来ているのですからね・・・。実際、彼女たちとの会話はとても楽しかったですし、食事の後もラウンジで暫く話しをしていました。一人の女性は、シドニーの後はケアンズへ行くと。もう一人の女性は、ワーホリで来ており4ヶ月間パースでホームステイをしながら語学 学校に通っていたそうです。彼女はアデレードで降り、その後バスでエアーズロックに行くと云っていました。

    ある晩、夕食のメニューの中にカンガルーのお肉がありました。私は、折角、オーストラリアに来たのだからカンガルーもいいなと思ったのですが、以前何処かのバーベキューで食べたときに固くてあまり美味しくなかったという印象があったので、どうしようかと迷っていました。
    すると、スタッフの方が「ここで出しているお肉は、フレッシュで焼きすぎていないから柔らかくて美味しいよ。もし食べてみて美味しくなかったら、他の料理と代えてあげるからいってね。」と親切に薦めてくれましたのでトライしてみることに。結果は、本当に柔らかくソースも美味しくて一皿綺麗に食べてしまい、他の物に取り代えてもらう必要など全くありませんでした。
    カンガルーのお肉と聞いただけで引いてしまう方もいるようですが、ここで食べたお肉は美味しかったですよ。また、私は、最後の食事の後、記念にメニューを一冊貰ってきました。


    車窓の風景を楽しむ


    車窓からの風景は、まるで絵を見ているようでした。パースを出発して暫くは緑豊かですが、だんだんと赤土の大地に草が生えているような景色になり、ナラボー平原では480kmぐらいだったと思うのですが平坦な直線距離を体験することになります。これは、日本では絶対味わえないですよね。

    アデレードからは、今度はファームの景色になります。緩やかな起伏があり、そこに羊が沢山いるような。遠くには低い山並みを見ることができ、緑が美しいです。途中、いくつも通る小さな町は、映画のセットの様で、駅前の小さなホテルや一軒一軒が特徴のある可愛いいテラスハウスを見ることができます。きっと昔とそんなに変わらない風景なのではないか、ずっとこのままのオーストラリアっぽさを残していてくれたらいいなと思いました。もし、こんな田舎町まで、近代的なビルが建ち、みな似たような家に住んでいたら、旅行の楽しみもなくなってしまいますから。

    ある町を通過した時、線路に面した庭にあるトランポリンの上でくるくる回転したり飛び跳ねたりしている小さな女の子がいました。きっと列車に乗っている人達に見て欲しかったんですね。何かその一生懸命さが面白かったです。
    また、ある日朝早く起きてブラインドを開けると、霧に包まれた林と列車が走る音だけが聞こえ、すごく幻想的な予測していなっかた景色がそこにはありました。
    シドニーに到着する日の朝食の際、見た山並みや谷の景色も美しかったです。また、なんといっても星空は素晴らしいです。夜部屋の電気を消してぜひ空を見てみて下さい。まるでプラネタリウムの中にいるようですから。


    人との出会いを楽しむ


    豪華列車の旅には、景色やおいしい料理の他に色々な人に出会えるという楽しみもあるのではないでしょうか。約4日間一緒に居る訳ですから、結構親しくなります。ファーストクラスは、先ほどの二人の日本人女性を除けば、全体的にご年配のご夫婦が多かったです。

    食事の時ご一緒になった、ご主人がリタイアされた後、のんびりと旅を楽しんでおらるご夫妻。一日の大半をラウンジカーのスモーキングルームでタバコを吸いながら、本を読んでいたおばあさん。この方は、83歳でブロークンヒルに住んでおられ、一年の内寒い4ヶ月間を北の方(地名を忘れてしまいましたが)にいるお知り合いのお宅で過ごし、後の8ヶ月を自宅で過ごすそうです。私と会った時は、パースから乗られブロークンヒルに帰るところでした。飛行機ではなくいつもこの列車を使っているそうです。

    オーストラリアの後、ニュージーランドに行かれるというイギリスから来た年配の男性。この方は、とても親切でよく声をかけて下さり助かりました。いつもラウンジカーで皆とお酒を飲みながらお話ししていたサスペンダーとジャケットに付けていた赤いハート型のバッチが似合っていた可愛いおじいさん。

    また、ある時、ラウンジカーで本を読んでいると「Excuse me」と声をかけられ、「あなたカンガルー見た?」と。私が残念がって「いつ?」と聞き返すと5分ぐらい前とか。教えてくれればいいのにと思っていると今度は一生懸命探してくれて、お蔭様で遠くではありましたが私も数匹のカンガルーを見ることが出来ました。この方は出張の帰りで、これから自宅のあるキャンベラに戻られるそうです。
    みなさんご旅行をされているのかと思っていましたら、人それぞれ色々な理由で列車に乗っていらっしゃるのですね。

    この列車は、途中数カ所の駅で2〜3時間停まります。その間、その町を案内してくれる1時間ぐらいのバスツアーがあり、停車前にスタッフに申し込んでおけば各ツアー$13〜$15ぐらいで参加できます。もちろん自分で好きなように周ることも出来ますが、時間が限られていますし、夜遅かったり、朝早かったりする場合もありますので、その町のポイントを素早く見るにはツアーに参加したほうが安全で楽だと思います。

    停車駅のひとつにブロークンヒルというところがあるのですが、ここのホームで売っているホームメイドのチョコレートは、とても美味しいのでお薦めです。値段も日本と比較したらかなり安いと思います。





    私は、列車の旅は初めてだったのですが、なかなかいいものですね。のんびりとでき、色々な人に出会えますし、何よりもオーストラリアの広さ(でかさと云ったほうが相応しいかも)を実感することが出来ました。結構揺れる時もありますが、これも列車の旅ならではとあまり気になりませんでした。8月16日に予定よりやや遅れてシドニーに到着。

    この夏は、本当に貴重な経験をすることが出来ました。もし、機会がありましたら、今度はシドニーから逆のコースを辿ってパースまで行ってみたいと考えています。





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