個人旅行/ここに注意!
なぜ大人数だと宜しくないのか?ひき続きそこらへんことを書いてみます。
★移動の不自由
これは簡単ですね、早い話が3人までならタクシー一台で済むということです。手ぶらでしたら4人でも大丈夫ですが、大きな荷物を運んでいるとかなり苦しい。そこで分乗ということになりますが、空港などは別格として、一般にタクシー乗り場というものが少ないですし、流しのタクシーを二台続けて拾うのはそれなりの幸運が要求されます。ましてや郊外では一台でも拾えたらラッキーです。都会に住んでると忘れがちですが、タクシーとは電話かけて呼ぶものであって道で拾うものではないのですね。日本でも地方に行けばそうですけど。一台で済むか二台かかるかで料金が倍違いますので、遠距離の場合、馬鹿にならない差になります。
また土地勘もない、英語も不安という状況で、分乗後、見事目的地で合流できるかどうかという点も不安が残ります。例えば「シドニー空港」といっても、国際線と国内線とでは3キロも離れており、大きな荷物を持って歩いて行くのは事実上不可能です。土地勘があれば、「新宿」といっても、新宿の南口なのかアルタの前なのかさらに細かく決めることができますが、土地勘がないと「新宿のどっか」みたいにとんでもなく漠然とした取り決めになってしまいがちです。通例タクシーに乗ってから運転手さんに「新宿のどこ?どこに行きたいの?」と聞かれて目的地が収斂されていくのですが、分乗しちゃえば打ち合わせもできない。手遅れ状態のまま現地で探し回って時間を無駄にするという。
これが5人、6人になってきますと、もう大変。バスに乗るのでも、2〜3人は乗った時点で「はい、ここまで」と言われるかもしれません。6人用のレンタカーともなると値段も高いし、車体もデカい。全員が切符買ってる間に電車が出発しちゃっうかもしれません。いざ出発と言うときに限って一人だけトイレで頑張ってたり、土産物屋で盛り上がってる人がいたり。結局、全員の進行速度は一番ノロい人に合わせざるを得ません。
さらに人数多いほど、気分が悪くなる人、車や船に酔う人、迷子になる人などが出る確率は増え、これもまた進軍速度を鈍らせる原因になったりします。
というわけで、人数多くした方が進行がスムースになる場合など、山で大怪我をした仲間を担架で運ぶような場合以外に思い付きません。あれこれ細かな点をあげつらってるようですが、現場でモノを言うのはこのあたりの些細な事柄だと思います。下手すれば1日が半日になってしまいかねませんし、積もり積もれば「シドニー1週間の旅」が事実上「3日の旅」になってしまいかねないので、すごいロスだと思います。
僕は何も強行軍をせよとか、速いことはいいことだ等と言ってるのではありません。「のんびりした旅」であっても話は同じです。なぜなら、大概、手待ち時間というのは、大して面白くもないような場所で、イライラしながら待ってるわけですから、「のんびりの楽しさ」なんか味わえないでしょ。
★レストラン
レストランに入るならば、2人くらいがベストでしょう。なんてったって2人用のテーブルが一つ空いてさえいればOKなのですから。これは店が混んでるときに威力を発揮します。当然のことながら3人が4人、5人が6人と増えていくにしたがって空席率は減少していきます。一度総勢10名というときがありましたが、30分以上電話かけまくって空いているレストランを探す羽目になりました。美味しいところは地元の人も良く知ってます。美味しくて空いているような穴場は、かなり研究しないと見つかりません。
また人数が多くなれば、好みも分かれます。スパイシーなものが駄目な人、日本料理じゃなきゃ嫌な人、いろいろおられます。この場合、声の大きい順に決まるというか、衰弱著しい人が「何かアッサリしたもなら喉を通るけど」と言われてしまえば、人道上従わなくてはなりません。
ただし、人数減らせばいいといっても、一人旅になりますと、レストラン関係ではちょっと苦しい。というのは、一人でレストラン入ってモソモソ食べてても楽しくないというのと、こちらの料理は総じて量が多いからです。複数で違ったものを頼んでそ、れぞれ味見しあってて丁度いいくらいですね。それに一人だと面倒臭いから、ついテイクアウェイのお持ち帰りの物ばかり食べてしまいがちです。
ベストとしては2〜4人くらいでしょうか。それ以上になると、テーブルくっつけたり、分かれたりしなければなりませんし。もっとも大きな円卓で食べるヤムチャや中華料理に関しては例外ですけど。
★ホテル
ホテルに関しては、2人、それも夫婦や恋人同士のような男女カップル、すなわちダブルベッド一つで間に合う組み合わせがベストでしょう。部屋数が400〜500という5つ星クラスのホテルではさほど問題はありませんが、B&Bやプライベートホテルのような趣向を楽しむ宿の場合、部屋数は多くありません(全部で2〜3室というのも全然珍しくありません)。また、こちらの宿は、ダブルの部屋(ダブルベッドが一つある部屋)が圧倒的に主流ですので、量的にも、そして質的にもダブル部屋が最も取りやすく且つ最もお得になってます。(なお、ダブル部屋に簡易ベッドを用意してさらに泊ることが出来る場合も多いので、小さなお子さん連れに向いてます)。
したがって、人数増やしていって「シングル4部屋」などの条件になると、この条件だけでシドニーの宿のうち殆どは脱落し、5つ星のビジネスクラスしか残らないでしょう(それかダブルのシングル利用)。クリスマス時期、ついこの間のマディグラの時期、丁度今ごろのイースターホリデー、はたまたスクールホリデーなどになると、ホテルはどこもかしこも一杯です。ただでさえ取り難い予約を、ことさらに難しい条件で取ろうというのは、「宿の場所、質、値段は問わない」くらいの覚悟が要ります。
みすみす安くて素晴らしい宿があるのに、料金が倍以上する巨大ホテルに泊るような羽目になりたくなかったら、悪いことはいいません、人数は減らした方がいいです。
いろいろ細かな実務上のダンドリをクドクドと申し上げましたが、いずれも僕に言われなくても、日本における経験でご存知のことと思います。でも分かっていても、「海外」ということでそこまで具体的に現場がイメージできずにツボを踏んでしまったりするわけですね。安い買物ではないのですから、よくお考えになった方がいいと思います。
★外の世界との接触
さて、最後に本質的なことを申し上げます。
人数多いと「海外」に接する機会が減るよ、という話です。
この点で一番いいのは一人旅です。自分以外誰も日本語喋ってくれないし、誰もやってくれないから、旅の全行程での会話や人々との接触を一人占めできます。大変といえば大変ですが、その大変なことのなかに、本当の「異国の空気」が含まれているわけです。バス乗るにしても、食い入るように路線表示を見て、懸命に考えます。電車にのれば行き過ぎないと駅名をチェックします。
これが人数が増えてくるにしたがって、この緊張感は緩んできます。人数が増える分だけ安心感も増します。勇気(というより傍若無人度)=X(一人のときの態度)×人数という関数が成立するとよく言われますが、集団になればなるほど恐いものしらずになります。これは、複数でいたときガースカ騒いでいた酔っ払いが、皆と別れて一人になった途端おとなしくなるのと同じことです。
で、つい安心するから仲間を増やしてしまいがちですが、増えれば増えるほど外界との接触度は減ってきます。例えば、5人で行った場合現地の人と英会話する度数は、全員が均等に喋ったとしても5分の1に減ってしまいます。実際には「一番英語の巧いひと」が人身御供にされ、喋るのはいつもその人だけということにもなりかねません。シドニー一週間旅行で英語喋った(喋れなくともコミュニケーションした)時間はわずか1分にも満たないという情けない話になったりもします。コミュニケーションするのが鬱陶しい方は、個人旅行なんてしないでパックツアーにしておいた方が無難だし、幸福でしょう。
また、日本語ばっかり話していて、いきなり英語の頭に切り替えるのは大変です。もう一点、こちらの人は総じて親切なので困ってる様子だと助けてくれますが、助けて貰える率は人数が少ない方が高いと言えると思います。10人位で困ってても、困ってるように見えないですもんね。
さらに、折角来てるのに、外も見ないで自分達ばかりで話してたら勿体ないじゃないですか。異国の文化を知ろうといっても、よほど注意して見ていないと、見過ごします。通りを歩いていても、「建物に打ってある番号は何だろう?」「首輪のない犬が少ないんじゃないか」「電柱のトランスがないな」「タクシーでも皆助手席に乗っているな」「乳母車ばっかりで赤ん坊をおんぶしている人は殆どいないな」「なぜ夕方6時過ぎると都心に向けての道が混むのだろう?」などなど、文化の違いのヒントとなることは沢山転がっています。通りの不動産屋を見れば賃貸住宅の相場もわかるでしょう。店先で物価相場も分かるでしょう。
一人あるいは小人数で来ていれば、外の世界とダイレクトに接触してますから、どんどん刺激が飛び込んできますが、大人数で内輪で話してるだけなら、そこでの社会は閉ざされたままで、日本にいるのとそんなに変わりません。これでは何の為に海外までやってきたのかという話にもなります。
以上、他にも多々理由はありますが、海外個人旅行に行く場合は極力人数は抑える、同行するとしても出来るだけ気のおけない仲間に限っておくと良いと思われます。パックツアーその他では、大量処理でコスト削減とか、人数=お客さんなので、言いにくいなのかもしれませんが、ガイドブックを見ていても、あまり誰も言ってないような点ですので、敢えてここで力説させて戴きました。なお、「それでも皆でワイワイやってるのが好き!」という方に対してまで「すな」とは言いません。デメリットが分かれば、それを避ける方法もあるでしょうから、よくご検討になったうえでワイワイやってくださいませ。
1997年3月25日
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