INFORMED CONSENT |
「治療に対するコンセント(同意)以上に患者と医療者の関係を同等に反映するものはないだろう」(Bidmeade、1989)。
「インフォームドコンセントは周期的に起こる文明の現れ・・・個々の人間固有の尊厳と価値観、そして自主性の尊重だ」(Kirby、in Bidmeade、1989)
コンセントは1)筆記、2)口答、または3)暗黙の暗示でも効力があるといえる。
筆記コンセントは同意が確かにあったことを証明する価値ある証拠である。重大な処置は筆記コンセントを取るべきことは明らかである。 (数年前、アデレイドのある病院で心臓手術を受ける患者が麻酔で眠ってから医師がコンセントフォームにサインがされてないことに気ずき、患者は起こされサインをしてからまた麻酔をかけられたという話が新聞に載っていた。)
体温をはかったっり与薬をするために口を開けてもらうのにもコンセントは必要であるが、全ての処置に筆記コンセントを取るのは実践的でないため省略される。
例えばKさんが予防接種を受けるため並んでいて、Kさんが自分の番になり、看護婦の前にやってきて腕を出したら、Kさんは暗黙にその処置に同意があると考えられる。
コンセントは強制して得るのではなく、自主的、自発的な行動でなくてはならない。 (事例)患者Bは眠った状態で腰椎麻酔を使うという麻酔医の強いすすめを拒否していたが、最後にとうとう態度を軟化して同意した。その患者は腰椎麻酔を受け半身麻痺となり、病院と麻酔医を訴え勝訴した。そのコンセントが自発的でなかったと見なされた。
ある一つの処置に対するコンセントは、その医療者が行ったその他の処置をカバーしない。医師が誤って反対の足の手術をしたら、その医師が間違いの責任を負うことは明らかである。(去年、アメリカで医師が誤って反対の足を切断した事件が起きている)
体内手術の場合は複雑である。外科医が本来の手術中にその手術野で異常を発見した場合、患者のためになるという医師の判断に任されるべきであるが、法律は必ずしもその医師をカバーしない。
帝王切開中に子宮壁に繊維腫瘍を発見した外科医が、将来この女性が再度妊娠した場合、危険であると判断し、卵管結節を行った。この医師は法廷で敗訴した。
インフォームドコンセントに関する委員会では次のような文が2次的処置をカバーするとしている。
「私は医師Xが説明したように、手術中に必要または好ましいと医師Xの判断で行われた処置に同意します。」
参考文献
Bidmeade, I. Health Law in South Australia,
The South Australian Health Commission, 1989. 2nd ed.
INFECTION CONTROL |
Universal Precautionというのは、全ての患者が感染源を持っている可能性があるとみなして接するという概念で、これは1980年代初めにアメリカのCDC(The Centers for Disease Control)で提唱された。
そのきっかけは,HIV、つまりエイズの蔓延が原因している。医療従事者が患者からエイズ感染を受けた例が発生し始めたからだ。それでCDCでは、HIV また HepB など血液または体液を媒介して感染する疾病から医療従事者を守る事、またその医療従事者から他の患者への感染を防止することを目的に、血液・体液に触れる、または触れる可能性がある処置に携わる時は、必要に応じてグローブ、マスク、ゴーグル、ガウンをつける事を義務ずけた。
アメリカで医療従事者が、患者からHIV感染を受けたのは,0.3%と決して多くはないが、治療法がなく死に至る疾病であることから重要視された。日本ではずいぶん昔に一度新聞で、看護婦がエイズ感染で亡くなったという話を読んだ覚えがあるが、医療従事者の感染状況はエイズにしても肝炎にしても正しく把握されているのだろうか?
オーストラリアでは、アメリカより数年遅れてユニバーサル・プレコーションの概念が、導入された。オーストラリアのいいところは他国が何か新しいことを始めたとき、それがいい考えだと判断したらすぐ自国にも取り入れることだと思う。アメリカ、カナダ、イギリスなどの研究に目を光らせ、すばらしい内容はフォローアップし、取り入れる。それが看護の向上に非常に役立っているようだ。
オーストラリアの病院では、全ての病室に洗面台と石鹸、デイスポのグローブが取り付けられている。初めて病院自習に行ったとき、点滴の抜針を頼まれた。抜針後、グローブをはめずに処置したと注意を受け、目が点になった記憶がある。こんな処置でいちいちデイスポのグローブを使っていたら、お金がいくらあっても足りないと思ったものだ。輸血パック交換もグローブをはめずにしたと注意を受けた。
長期慢性疾患や脳外傷による肢体不自由者施設で働いたとき、看護学生と一緒になった。その子が患者さんの入れ歯を洗うのにもデイスポのグローブをはめるのを見てまたまた目が点になった。日本では物品の無駄使いが多いとしばしば注意を受け、特にグローブやテープを使いすぎるとよく言われた。そしてガーゼ交換後、そのガーゼを洗って何らかの形で再利用していたが、オーストラリアでそんなことは恥ずかしくてとても言えない。
・・・というよりそのような行為を許容しているという事に対し、看護婦として働いている人間の倫理観を問われるだろう。患者の創傷に1度使ったガーゼを再生利用することによって、看護婦または患者が感染を受ける可能性があるからだ。その危険性を知りながら、行動していることに対し、ものすごい批判がでると思う。
でも「郷に入れば郷に従え」で、仮にマティがその危険性と倫理観を日本で訴えても病院側はコストのためには仕方がない、感染するというならその証拠を出せといわれ結局なにも変わらずに終わるだろうと思う。そしてその様なことを言ったために上司からにらまれ、とても働きにくい状況になるのではないかなー。これはマティが日本の状況を悲観しすぎていますか?
オーストラリアの病院では,看護師が HepBの予防接種を受けることを義務ずけており、無料で3回の予防接種後、血液検査でこの効果も調べてくれる。5年に1回再度血液検査を受け、抗体が下がっていればまた接種してくれる。
冬には希望者に無料でインフルエンザの予防接種もしてくれる。注射の大嫌いなマティは、この予防接種は受けていなかったが、毎年ひどい風邪?インフルエンザ?にかかるため、GP(一般医)より病院で働く者はリスクが高いので、受けた方がいいと言われ今年受けた。皮下注射で思ったほど痛くなかった。
日本では肝炎Bの予防接種は各看護師の意志に任されています。3回の予防接種は決して安いものではなく、人によっては追加接種をしなければならない人もいます。
Mattie自身、日本では受けていませんでした。しかしオーストラリアに来て看護師が自分を守ること大切さを学び、今予防接種を受けていないまま働いている方々に少しでも早く受けることをお勧めします。
肝炎Cやエイズの予防接種は残念ながら存在しませんが、予防できるものはすべてしておいて損はありません。医療上の事故はどんなに気をつけていても起こるものです。
そしてその事故のために一生病気を背負って歩く可能性があるのです。看護は自分が健康であってこそ続けられる仕事です。是非考えてみてください。
病院で特に感染予防を目的に働く看護婦をInfection Control Practitionerと呼ぶ。以前は感染予防看護婦 Infection Control Nurseと呼んでいたが、看護士の増加に伴い呼び方が変わってきている。市内のほとんどの病院では、感染予防専門家が常勤または非常勤で勤務している。
マティはフリンダース大学で看護学を勉強中、選択科目で6単位のインフェクション・コントロールをとりました。日本にいる友人たちから、MRSAの蔓延に困っているという話を何度も聞き、興味を持っていたため、単位取得のための2つの論文は「MRSA院内感染予防」を選びました。
そこで学んだことが皆さんにどれだけ役に立つかわかりませんが、「情報はパワーだ」と信じていますので、皆さんがここで得た情報をご自分なりに解釈・判断し利用できるものは利用して下さい。
最も簡単で最も重要な感染予防の手段は「手洗い」です。そんなこと知ってる、当たり前と、皆さんおっしゃるかも知れませんが、皆さん本当に手洗いしてますか?
MRSAは黄色ブドウ球菌の耐性菌で、黄色ブドウ球菌は常在菌です。常在菌という事はどう言うことですか? つまりこの菌は埃としてどこにでもある菌だと言うことです。
マティはまだMRSAを常在菌と呼ぶことに抵抗があります。それはMRSAはあくまでも「病院で獲得される菌」とされているからです。保菌者が莫大に増え、その人たちが退院していくため一般地域に暮らしている人の中にMRSA保菌者が増えていることは認めますが、その始まりはほとんど病院からとみなしていいと考えられます。
アメリカでも地域の中で保菌者が増えていることが指摘されていますが、その人たちから実際にどのくらい感染が広がっているのかという研究は、1996年には発表されていません。(もしマティが見過ごしているようでしたら、教えて下さい)
黄色ブドウ球菌は空気感染すると言われています。埃ですから風が立てば空気中に舞い上がり、そこから感染する可能性があるわけです。しかしMRSA感染は、医療従事者の手から広がる接触感染だと言われているのです。
過去20年間以上の間に、MRSAに関するおびただしい量の研究が続けられてきました。そしてその結果、MRSA感染の最大の感染源は医療従事者の手だという発表が数多く出されているのです。
空気感染と言うことがどう言うことかを知りたい方は、ダステイン・ホフマンのアウトブレークという映画を見て下さい。(日本名で何という映画かは知りませんが、ある病気が空気感染で爆発的に流行するという話です)
バンコマイシン投与上の注意99年10月16日追加更新
バンコマイシンは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌に効く唯一の抗生物質だと知られてからずいぶん経ちました。「投与したことがある、現在投与している…」というナースの方も多いことと思います。ではあなたは、バンコマイシンがどのように細菌に作用し、どのように投与することが望ましく、どんな副作用があるかわかって投与していますか? 実はこの度、Mattieの身近でバンコマイシン投与方法のミスにより患者が重度の副作用を起こしHDU(High Dependency Unit:重症ケアユニット)に担送されるという事故がありました。これはこの事故を反省し、看護婦がもっとバンコマイシンについて知識を得るため、薬剤師を招いて開かれた勉強会の内容を要約したものです。(1999/OCT/14)VANCOMYCIN (バンコマイシン)〔分類〕
復習:薬物相互作用とは薬物をいくつか併用した時、一方の薬物が他方の作用を増強又は減弱させたりすること。(Mattie)
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COMPLEMENTARY THERAPY |
「Complementary」は辞書で引くと「補足的な」とでている。では「補足的療法」とはどういうことかというと、正統派医学(Orthodox Medicine)に対する言葉で 従来の医学は疾病の診断と治療に不可欠であるが、治療法のない慢性疾患やターミナル患者に対しては限界があるという概念の元、非公認ではあるが補足的に代わりの方法を使ってこれらの患者のQOL(Quality Of Life)を高めるための援助を目的に研究されている分野である。
これは昨年マティがフリンダース大学で看護学を勉強しているとき選択した[Palliative Care]と[Therapeutic Massage]を元に、新しく学んだこと、おもしろいと思ったこと、そして日本の看護に取り入れられると思った内容の紹介です。
マティは学生の時の看護体験からターミナルケアに関心を持っていて、オーストラリアで勉強中、選択科目の多くはターミナルケアに関することを選びました。ターミナルケアにおけるコンプリメンタリー・セラピーの活用についても少し紹介します。
約30種類のテクニックがコンプリメンタリー・ケアのカテゴリーに入ると考えられるが、安楽の向上、過激でないこと、そしてほとんど指導なしで、簡単に看護に活用できるという意味から、Simsはリラクセーション・テクニック、タッチとマッサージ、音楽療法をあげている。
マティはマッサージとアローマセラピーを取り上げていきたい。その前にこの30種類のコンプリメンタリー・ケアにどんなものがあるか挙げてみよう。
鍼、合気道、アローマセラピー、カイロプラクッテイック、カラーセラピー、薬草医学、水療法、マッサージ、瞑想、音楽療法、自然療法、整骨療法、リラクセーションテクニック、指圧、音響療法、太極拳、セラピューテイックタッチ、ヨガ,etc・・・・日本の昔から使われてきた療法が西欧でずいぶん注目されていることがわかる。
参考文献
Sims,S.,'Complementary Therapies as Nursing Interventions',
Nursing Issues and Research in Terminal Care, 1989, p163-180.