注:このコーナーの情報はほとんどが1997〜98年にかけて調査したものです。メチャクチャ古いです。その後UPDATEしていません。当然、ツアー内容、料金などは変更しているでしょう。
古すぎるので全面削除しようと思ったのですが、敢えて残しておきます。
というのは、この種の情報の鮮度というのは厳密に言えば1ヶ月くらいのものでしょう。年がら年中変更されてます。ということは幾ら頑張っても、リアルタイムに正確でありつづけることはほぼ不可能であること。一方、シドニーという素材は同じであり、且つ人間の考えることにそんなに大きな違いはないだろうから、10年経とうが20年経過しようが、似たり寄ったりだったりするわけです。実際そうですしね。
ですので、以下に列挙したツアー群が今も尚寸分違わず存在しているという保証は全く出来ませんが、「こんな感じのツアーだったらあるかも」というアタリはつくと思います。それだけでも結構な参考にはなるかなと思い、残しておきます。
詳しくは、各関連団体に直接お問い合わせください。
これまでは、シドニーからの日帰りオプショナルツアーといえば、ブルーマウンテン&ワイルドライフパークかグレッズウッド牧場と相場が決まっていました。確かにブルーマウンテンは雄大だし、グレッズウッド牧場は牛や羊に会えて面白いかもしれない。けど、どこの観光地にも共通することだが、どうも観光地化されたところというのは魅力がないなと私は思っていました。
観光客の皆さんもきっと「なんかイマイチだな」と感じているのでしょう、その証拠に最近人気を集めているのは、同じブルーマウンテンでも自分たちで調達した材料でやるバーベキューを組み入れた4WDツアーとか、ちょっと目先の変わったもの。今までブルーマウンテンツアーと同程度に売れていたグレッズウッド牧場も最近人気が急激に落ちているとか。「観光化されすぎた観光地」よりも、もっと自然に「地元の味」を味わえるツアーに人気が集まるのも当然といえば当然です。
こんな観光客のニーズを以前から嗅ぎ取っていたロイスは、宝石会社を辞職した後、シドニー北部郊外の広大な羊牧場を購入し、「本当のオーストラリアのよさを体験してもらえる牧場」を目指して、この牧場を独自に開発しはじめました。
「僕が目指しているのは、お客さんを巻き込んで、実体験してもらうこと。単なる訪問者、見学者ではなく、何かをする主体になってもらいたい」というロイスにほだされて、私も彼の
羊牧場”トブラック”
を訪問することになりました。
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トプロックめざして一路北へ
シドニー市内からハーバーブリッジを渡り、北上するに従って、都会から田舎の風景へと変わっていきます。車窓を眺めていると「ずいぶん遠くまで来たなあ」という気がするけど、たった1時間半です。茶色い羊のマークが目印。トブラックの敷地の中へ入ると「な〜んにもない」。本当にだだっぴろい牧草地が広がっています。
ビリーティーとダンパーでウェルカム
馬に乗ったカウボーイ(といっても、おっさんだけど)のジョン(***)と、やたら元気に走り回る犬たちに出迎えられてバスを降りると、そこにはキャンプ場の炊飯場みたいなものが。この暑いのに、たき火がパチパチ燃えています。ジョンの奥さんがパンのようなものを配ってくれますが、これがカウボーイの必需品ダンパー。カウボーイは小麦粉と岩塩だけを常に持ち歩き、お腹がすいたら水と捏ねあわせて木の枝に巻き付け、たき火で焼き上げるんだそうです。焼き立てのダンパーにバターとサトウキビから作ったシロップを塗って食べると、これがうまい。お客さんはこのダンパー焼きに挑戦することもできます。たき火のそばで枝を握っていなきゃいけないんで、結構暑いんだけど。
ケルピー犬の活躍ぶりを拝見
ダンパーでお腹をふくらした後は、だだっ広い牧場へと誘導されます。と、あ、いるいる、羊の群れ。そこに先ほど迎えてくれたカウボーイおやじのジョンと、二匹の犬(*)が近づきます。この犬は羊追いに適するようにと、オーストラリアの野生動物ディンゴ(狼みたいな犬)とコリー犬とを掛け合わせたものだそうで、ケルピー犬といいます。と、案内役のクミコおねえさん(**)が説明してくれました。一日じゅう羊を追い回しているのが彼らの仕事で、この仕事が彼らの生きがいなんだって。「仕事が生きがい」なんて羨ましいこってす。馬に乗ったジョンがケルピー犬諸君に司令を発すると、犬たちは司令通りに羊を誘導し、目的地まで運んでくれるというわけ。
2匹のケルピー犬に誘導された羊たちは小さな柵の中に押し込まれます。防虫薬を与えるために羊を一列に整列させなきゃならないのですが、それもケルピー犬の仕事。羊の背中を渡り歩いて羊の列を前に詰めていくケルピー犬の働きぶりは、見ていて微笑ましいものがあります。
(*)二匹だったケルピー犬もその後増えているそうです。
(**)クミコおねえさんはその後ロイスと結婚し、今では一児の母となっています。
(***)ジョンは転職したそうですが、相変わらず楽しくてエキサイティングなカウボーイぶり(?)を見せてくれるそうです。
羊について、しばしお勉強
ここでクミコおねえさんから羊についての説明があります。羊毛用のメリノ羊は4才までしかいい羊毛を作れないので、あとはペットフードにされてしまうこと、雄羊は牝羊の妊娠を防ぐため(妊娠した羊は毛を刈れないから)去勢されてしまうこと、シッポに汚物がついて虫が発生してしまうので、シッポは切られてしまうこと、など、人間の欲望のために羊たちが搾取されている構図がよくわかります。
カウボーイおやじ、ジョンのとりこに・・・
ここで私がもっとも感動したのは、ジョンの催眠術。ものの数秒で羊に催眠術をかけて眠らせてしまうんです。「なんでそんなワザが出来るねん、このおっさん」と思って後からジョンに聞いてみたら、彼は子供の頃からノーザンテリトリーやらクイーンズランドのブッシュを徘徊していたんだそうで、本当の筋金入りのブッシュタッカーマンだったのです。自然のことを知り尽くしているわけだ。この周辺は野生のキツネが出没し、羊を襲うこともあるそうですが、キツネの好物である野ウサギの声に似た笛でキツネをおびき寄せて、キツネ狩りもしちゃうんだそうで、わたしゃいきなりジョンのファンになってしまった。もう、クロコダイル・ダンディの世界。(そんなにカッコよくないか....)
ジョンは日本語なんて一言も出来ませんが、英語なんて一言も知らない日本人のおばあちゃんとも楽しそうにコミュニケートしています。野生動物とコミュニケートできる人だけが持つ特殊能力じゃないかと思うのですが。彼の英語はスラングだらけだし、オーストラリア人特有の訛りもバリバリなので、私には半分くらいしか理解できませんが、放送禁止用語混じりのキッタネー言葉を使っていることは分かります。彼のジョークを眉間にしわよせ、うつむいて聞いているオージーのお客さんも、最後にはお腹の底から笑ってしまいます。下品なんだけど、品のある、不思議な魅力があります。
羊の毛刈りに挑戦!
羊についての説明を受けた後は、お待ちかねの羊毛刈りショーのお時間です。こういう類のショーはオーストラリアの観光地行けばよく見られるのですが、ここトブラックのウリは、「毛刈り体験もできちゃう」ということ。最初にジョンが見事な手さばき(といっても全身労働なのだが)を披露してくれた後、希望者数人に実際に羊の毛を刈ってもらいます。私も挑戦したけど、なんか羊の身まで切ってしまいそうで怖かった。でも、羊の身体ギリギリで刈るのがプロのワザなんだそうで、できるだけ長く刈らなきゃいけないのだそうです。
今でも羊の毛刈りは人手に頼っており(あんなもん、機械で出来るわきゃないわな)、1頭刈ると1.5ドル(120円くらい)。ベテランの職人さんになると1日に300頭も刈れるそうですから、月給にして4〜5千ドル。オーストラリアの平均給料よりはやや高いけど、それでも身体悪くしたらそれでパーですからね、厳しい仕事だと思います。
オージーの典型的ランチ
ここでランチタイム。ブルーマウンテンの景観を眺めながらカントリー調の広々したダイニングでバーベキューランチをいただきます。数種類のサラダに、Tボーンステーキ、デザートはアップルパイ。味は...、まあまあかな。いわゆる「オーストラリアらしい食事」です。
鞭鳴らし(Whip Cracking)に挑戦
食事のあとは、ウィップ・クラッキングという鞭鳴らしに挑戦します。長い鞭を振り上げて、数キロ先まで聞こえるほどの大きな音を出します。これは牛を誘導する際にカウボーイが使うもので、牛をぶったり、地面に打ち付けたりすることなしに音を鳴らすわけです。一体どうしてこんなデカイ音が出るの?と聞いてみたら、「SOUND BARRIERってわかる? つまり、音の速度よりも速くムチを動かすんだ」と説明されましたが、科学にうとい私には原理がいまだ理解できません。初心者でもビギナーズラックで音が出ることがありますが、結構コツつかむの大変です。私も数十回トライして、ようやく情けないながらも音が出たけど、翌日は「変なところ」が筋肉痛になりました。
ついでに、ブーメラン投げにも挑戦
お次は、ブーメラン投げ。アボリジニ(原住民)の人々が鳥など狩猟に使うワザです。これは鞭鳴らしに比べれば、ずっと簡単。ブーメランの箸を鉛筆を握る要領でにぎって、野球のピッチングの要領で思い切り投げれば、ほぼ成功します。で、うまくいったら、ちゃんと戻ってきます。ベテランになると、戻ってきたブーメランを手でキャッチできるという。もちろん、ジョンはできます。
おみやげ屋さんも一応おさえて・・・
さて、余興はこれくらいで、お客さんは牧場内にある御土産屋さんに立ち寄って、「ここでしか買えないもの」をショッピングしていました。カウボーイハットとか、先ほど投げたブーメランとか、羊のオイルで出来た化粧品(ラノリンオイルという)とか、羊のマットとか。。。トブラックオリジナルのポロシャツもありますが、ロイスは「なんでか知らないけど、これ売れないんだよ」とこぼしてました。「うむ、たしかに質もいいし、デザインもプレーンでいいけど、今んとこお客さんの層が中高年の方中心だからねえ、こういうスポーティーなものは欲しがらないんちゃうかな」というと、「そうか、若いお客さんを連れてくればいいんだ!」と嬉しそうに叫んでました。若いお客さん、トブラックに行ってこのオリジナル・ポロシャツについてコメントしてあげてください。
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以上が私が体験したトブラック牧場です。ロイスはもっと牧場を魅力的にするために、いろいろ考えているようです。が、トブラックの魅力は広すぎるほどにだだっ広い牧草地と、本物のアウトバックに生きているジョン、元気に働くケルビー犬たち、たくさんの羊と馬、そして何と言っても、観光地化されていない「自然の牧場の姿」でしょう。今はまだ観光客もそう多くは訪れていませんので、「自然の姿」が感じ取れますが、お客さんが増えてきた時にトブラックはどうやって運営していくのか、興味のあるところです。
費用:大人 110ドル/子供 90ドル(シティからの送迎付き)
* 別料金10ドルでラクダにも乗れます。
営業時間:毎日10:30〜14:30
シティからのツアー所要時間:8:30〜16:00頃