今週の1枚(07.06)
パディントン/Paddingtonの町並み
パディントンはシティから東に伸びる Oxford Street沿いにある繁華街。アーティストの街、ゲイの街として知られ、おしゃれなイメージがあります。実際、日本の観光ガイドブックにはそうなっていますし、日本人観光客対応の店があったりします(例えば、さりげなく日本語の表示があったり、JCBカードが使えたり=普通は使えないです)。
まあ、日本の「おしゃれ感覚」からすると「そぉかぁ?」という気もしなくもないですが。
写真は、パディントンといえば必ず名物のように紹介される「テラスハウス」。こちらでいう「テラスハウス」とは、日本における「テラス」のイメージ(ハッキリとは分かりませんが、庭に面した大きなバルコニーというか、自然光の降り注ぐ、半分屋外の空間で、昼下がりに紅茶を飲みながら読書をするなど、どことなく瀟洒でリッチな雰囲気)とはかなり違います。こちらのテラスハウスとは、連棟式建物のことであって、要するに長屋というかニコイチ文化住宅のようなものです。
どうしてこんなもんがオシャレと言われているのか理解に苦しむところもあったのですが、もともとはオシャレを目的に建てられたものではなく、日本の文化住宅と同じく、安価で大量の住宅供給を目的にしたものでしょう。開拓民都市であるシドニーとしては、古来開拓民用の住宅供給問題があったと思われます。ですので、テラスハウスは別にパディントンに限ったことではなく、シドニー都心周辺部=即ち開拓当初のアーリータイムズに人々が居住していたエリア=ならどこでもあります。別にパディントンの専売特許ではありません。
で、パディントンの場合、その安い住宅エリアに、移民系の芸術家の卵達が多く住むようになり(言うまでもなく売れない段階の彼らは極貧生活を送るのが通例)、彼らが醸し出した独自のカルチャーや雰囲気がパディントンエリアを彩り、かくして「お洒落なパディントン」と言われるようになったのでしょう。で、それが昂じて「お洒落なテラスハウス」と言われるようにもなったのでしょう。
現在のパディントンは、巨大都市に成長したシドニーにおいては、都心至近距離の一等地としてバカ高い住宅地エリアになってます。リッチな人々が結構やってきて、インテリアにもバンバン凝ったりしますから、それはそれでまたお洒落な雰囲気になったりするわけです。ですので、パディントン=オシャレといっても、結構複雑だったりするように思います。
なお、成功してリッチになった芸術家達はどうするかというと、シドニーから車で1時間ほど北にいったパームビーチ(先日特集しました)に豪邸を構えたりしているそうです。
とはいうものの、パディントンには、比較的センスのよさげなカフェやブティックが並んでいることは確かです。それを制作している芸術家がどこに住んでるかはともかく、その作品はよく並んでいます。売れない前のアーティストはまだパディントンに住んでるのでしょうか。しかし高いからなあ、ここらは。もっと安いサリーヒルズやらニュータウンあたりに移ってきているのではないでしょうか。パディントンはゲイの町としても有名で、マディグラも、パディントン付近で行われるのですが、そのゲイの人々もニュータウンに移ってきてるといいますし(より安く、より自由な雰囲気があるからでしょう)。
というわけで、そのいわゆる「おしゃれな街」の様子を、前篇「町並み」・後篇「ショッピング」に分けてご紹介しましょう。
テラスハウスの風景です。
テラスハウスというのは、間口は狭いくせにかなり奥行きがある「鰻の寝床」タイプでして、結構なかには空間があります。写真中央はとあるテラスハウスの1階の様子。写真右はおなじ建物の地下室。一見二階屋ですけど、実はワインセラー用の地下室があったりします。
さて、観光ガイドのようになりますが、主な建物をいってみましょう。
写真左は、パディントンの目印、タウンホール Town Hallの時計台。
写真中央・右は、ビクトリアンバラック Victoria Barracks。もともとはイギリス植民地軍の兵舎として建てられ、今ではオーストラリア陸軍が使用しているそうです。中には軍事博物館(Army Museum)があって見学できます。
ジュニパーホール Juniper Hallはその昔、酒造家が建築したジョージア式のお屋敷。ジンの醸造に使われる植物の実(ジュニパー)からその名が付いたらしいです。現在はNational Trustに指定されており、一般には公開されていません。
パディントンの入り口付近にあるダーリングハースト裁判所を北(キングスクロス方面)に向って5分ほど歩くと、ユダヤ人博物館 Sydney Jewish Museum(148 Darlinghurst Road)があります。ホロコーストの写真や資料が豊富に展示してあり、一見の価値ありです。
パディントンのフリーマーケット。
左の教会の隣の広場で毎週土曜に行われます。マーケットの性格としては、パディスマーケットほど広くないけど、観光対応もしてないし、ジャンクが多いわけでもない。グリーブやロックスよりはちょっと大きくて、ロックスのような趣味系クラフトのようなものが多いがロックスほど高級ではなく、もっとカジュアル。しかしグリーブほど、センス的に「イッちゃてる」わけでもなく、そこそこ常識的な範囲に収まってるという感じでしょうか。
パディントンの目抜き通りオックスフォードストリートを歩き、シティとの接点付近の光景です。写真左は、歩道上でゲイの人々がエイズ救済募金を求める活動をしている風景=肝心のやってる人を撮るのを失敗してそれを見物している人々が映ってます。
写真右は、店先までハデハデしくセールをしていた古本屋さん。
今回の写真は全て福島が撮影しました。
文章:福島/田村
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